遺伝的に多様で優良形質の無花粉スギ品種の開発に役立つリソースを構築

タイトル 遺伝的に多様で優良形質の無花粉スギ品種の開発に役立つリソースを構築
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 三嶋 賢太郎
平尾 知士
坪村 美代子
発行年度 2020
要約 スギ花粉症は、国民の約3割が罹患していると言われている国民病です。そのため、各地域において無花粉スギ品種の開発が進められていますが、それには長い時間かかるため、無花粉遺伝子をヘテロで保有する個体(ヘテロ個体)を活用することで交配の回数を減し、期間短縮された効率的な開発を行うことが必要になります。そこでヘテロ個体を検出できるDNAマーカーを開発し、全国の成長の優れた精英樹を対象に、ヘテロ個体を探索しました。その結果、21のヘテロ個体を発見しました。今後、これらのリソース(育種素材)を活用することで、全国において遺伝的に多様で、なおかつ優良な無花粉スギ品種の開発が可能になります。
背景・ねらい  林木育種センターでは、林業分野におけるスギ花粉症対策として、「爽春」をはじめとする無花粉スギ品種を開発しています。また、早期かつ効率的に無花粉スギ品種を開発するために、「爽春」を用いて、無花粉遺伝子を高い精度で検出できるDNAマーカーを開発しました。このDNAマーカーは無花粉スギであることを識別できるだけではなく、無花粉遺伝子をヘテロで保有する個体も識別できます。
成果の内容・特徴 ■無花粉遺伝子をヘテロで保有する個体の利用で無花粉スギ品種を効率的に開発 
「爽春」に代表される無花粉スギは、無花粉遺伝子座を潜性ホモ接合(aa)の状態で保有しています(花粉をつける個体では、この遺伝子がAA又はAaとなっています。)。この無花粉スギを利用した交配によって新たな無花粉個体を得るためには、2回の交配を行う必要があるため、無花粉スギの開発には長い年月がかかっていました。しかし、無花粉遺伝子座をヘテロ接合(Aa)で保有する個体(ヘテロ個体)同士の交配を行えば、1回の交配によって一定の割合で無花粉個体を得ることができます。このように、無花粉遺伝子をヘテロで持つ個体を活用した品種開発は、交配にかかる期間を短縮することができます(図)。今後、無花粉スギ品種の開発を効率的に推進するために、無花粉遺伝子をヘテロで保有しているスギのリソース(育種素材)の拡充が重要となります。
■無花粉遺伝子をヘテロで保有するスギ21個体を解明 
無花粉遺伝子をヘテロで保有しているスギのリソースの拡充に向け、全国にある4,241のスギ精英樹及び育種素材(東北・関東・関西・九州育種基本区)について遺伝子座を解析し、21の精英樹がヘテロ個体であることを明らかにしました(表)。精英樹は、優良な形質を有しているため、精英樹同士によって得られる個体は、優良な形質を有する可能性が高くなります。今回の研究で明らかになったヘテロ精英樹を今後活用することで、全国で短期間に遺伝的に多様かつ優良な林業形質を持つ無花粉スギ品種を開発することが可能になります。
■研究資金と課題 
本研究は、農林水産技術会議委託プロジェクト研究「気候変動に適応した花粉発生源対策スギの作出技術開発」の成果です。
■文献
?Mishima et al. (2018) Identification of novel putative causative genes and genetic marker for male sterility in Japanese cedar (Cryptomeria japonica). BMC genomics,19, 277.?坪村美代子(他)(2019)雄性不稔スギ「爽春」の雄性不稔原因遺伝子を持つ個体を検出する簡易DNAマーカーの開発. 日林誌, 101, 155-162.
■専門用語
DNAマーカー:生物が持つ遺伝情報を規定している膨大な量のDNA(デオキシリボ核酸)のうち、特定の部位のDNAで、特定の形質に関与する遺伝子の存在を示唆するものとして使われるもの。精英樹:成長の早いこと、幹が通直であること、病気や虫の害がないこと等を基準に全国の森林から選抜した個体。ホモ接合体:AA、aaのように遺伝子座が同じ対立遺伝子からなるもの。ヘテロ接合体:Aaのように遺伝子座が異なる対立遺伝子からなるもの。
図表1 244852-1.png
図表2 244852-2.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p42-43.pdf
カテゴリ 育種 DNAマーカー 品種 品種開発

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