スギの実生コンテナ苗を1年で生産するための施肥技術の開発

タイトル スギの実生コンテナ苗を1年で生産するための施肥技術の開発
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 大平 峰子
松下 通也
発行年度 2020
要約 優良な苗木を早期に普及するためには、その育成期間を短縮することが重要です。それは、育林コストの低減にもつながります。スギの実生コンテナ苗を生産するためには従来2年から3年かかっていましたが、今回、育苗期間の最初に与える肥料(元肥)と後半に与える肥料(追肥)の条件を検討して1成長期で出荷規格まで育成させる試験を行いました。その結果、約7割がコンテナ苗として出荷できるサイズにまで達し、適切な施肥により実生コンテナ苗の育苗期間を1年に短縮できる技術を開発しました。
背景・ねらい  日本の主要な造林樹種であるスギは、九州や本州の一部の地域を除き、実生苗で造林されています。一方、近年、コンテナ苗は、植栽後の活着率や成長が裸苗と同程度であり、育苗期間が短縮できること、加えて植栽時に、裸苗のように大きな植え穴をつくる必要がないことなどから、植栽数量が増えてきています。一般に、スギの実生コンテナ苗は、春に苗畑に播種して1年育成し、翌年にできた苗をコンテナに移植し、そこから更に1年から2年育成し、苗木の出荷まで全体で2年から3年の期間を要していました。育苗期間を短縮することで、そのコストを大幅に削減できるとともに、早期に優良な苗木を山に送り出すことができます。
成果の内容・特徴 ■元肥の種類と施肥量の最適条件 
発芽して子葉が展開した芽生えを引き抜き、ココピート100%を培地としたスリット無しの150ccのマルチキャビティコンテナに移植しました。元肥に相対的に窒素が多い複数種の緩効性肥料(表1)を複数の濃度で施肥して(表1)育成し、元肥の溶出が終わる100日後のコンテナ苗の苗高を調べたところ、N-P-Kが12-8-10の比率で肥効期間が100日タイプの緩効性肥料A、これに苦土石灰と腐葉土の2種類を配合した「腐葉土混合」の肥料で成長が良くなることが分かりました。また施肥量が多くなるほど苗長が増加するものの、施肥量がある一定量以上になると、それ以上の成長の改善はみられなくなりました(図1)。このようなことから、元肥の施肥量としては2~4倍量が適量であり、培地1?あたりのNは1.40~2.80g、P2O5 は 0.82~1.64g、K2O は 1.02~2.04g、CaOは0.80~1.60g、MgOは0.50~1.00gが適当であると考えられました。
■追肥の種類と施肥量の最適条件 
相対的にカリウムが多い複数種の肥料(表2)を、育苗期間の後半の8月下旬から追肥し、11月中旬までの苗高と地際直径の成長率を比較しました。N-P-Kが10-18- 15の比率で肥効期間が100日タイプの緩効性肥料Bと苦土石灰のシンプルな組合せで施用すると(表2)、苗高と地際直径の成長が促進されることが明らかとなりました(図2)。このようなことから、追肥の施肥量としては3倍量が適量であり、培地1?あたりのNは3.0g、P2O5は5.4g、K2Oは4.5g、CaOは2.1g、MgOは0.9gが適当であると考えられました。
■最適な施肥条件で育成した実生コンテナ苗の成長 元肥と追肥のそれぞれの試験で最も良かった施肥条件で、スギ実生苗を、ココピート100%を培地としたスリット無しの150ccのマルチキャビティコンテナで1成長期育成すると、約7割の個体が林野庁の示すコンテナ苗の出荷規格(5号苗で苗高30cm、地際直径3.5mm)を満たすサイズに達しました。これらの詳細については、大平・松下(2019)を参照してください。
■文献
大平峰子・松下通也(2019)施肥量がスギ実生コンテナ苗の成長に及ぼす影響.日林誌,101,109-114.
■専門用語
マルチキャビティコンテナ:苗木を育てるための多数のキャビティ(孔)でできた容器。コンテナ苗:根鉢が成形された鉢付き苗で、マルチキャビティコンテナによって育成された苗木。緩効性肥料:肥料の効き方がゆっくりで、一定期間効果が持続する肥料。子葉:種子が発芽した後、最初にでる葉。スギの場合、3枚の子葉がでる。元肥:苗木を植え付けるときに事前に培土に与える肥料。追肥:苗木の成長に応じて必要な養分を追加して与える肥料。
図表1 244853-1.png
図表2 244853-2.png
図表3 244853-3.png
図表4 244853-4.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p44-45.pdf
カテゴリ 肥料 育苗 くり コスト 出荷調整 施肥 播種

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