タイトル | 水中グライダーによる日本海の海洋構造の解明 |
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担当機関 | (国研) 水産研究・教育機構 水産資源研究所 水産資源研究センター |
研究期間 | 2016~2020 |
研究担当者 |
和川 拓 川口悠介 井桁庸介 本多直人 奥西武 矢部いつか |
発行年度 | 2020 |
要約 | 海況が悪い季節においても高頻度観測が可能な水中グライダーの優位性を活用した海洋観測により、日本海の前線および冷・暖水域の水温・塩分の時空間特性を把握し、対馬暖流・極前線の流量を見積もることに成功した。今後、流動・水塊構造の把握が進むことで、スルメイカ、ブリ等の有用資源の分布域の解明、回遊経路の予測等が期待できる。 |
背景・ねらい | 水中グライダーは、調査船では難しい、海が荒れる季節でも広範囲を高頻度でモニタリングすることができます。水中グライダー観測網を構築・展開し、海の流れや水温・塩分などの海洋環境を常時モニタリングできる体制が整えば、有用水産資源の漁場形成や来遊に関するより精度の高い予測を提供できるようになると期待されます。本研究では、日本海で初の水中グライダーを用いたモニタリングを実施し、対馬暖流や渦の構造、水塊分布を解明することを目的としました。 |
成果の内容・特徴 | 2016年の4月から6月に佐渡島沖合の観測定線であるSI-lineにおいて、調査船を用いた投入・回収により、水中グライダーによる海洋モニタリングを成功させました(図1)。日本海中部海域における春季の対馬暖流沖合分枝と極前線(水温・塩分の前線)に沿う海流の流量を初めて明らかにしました。また、その構造が1ヶ月以内で大きく変動する様子を捉えました。これらの海洋構造は水産資源の分布や回遊に大きく影響すると考えられるため、その変動を継続的にモニタリングすることは重要です。佐渡島の遥か沖合域に、陸からの河川水が由来と考えられる、100 m以上の厚みを持つ低塩水を発見しました(図2)。グライダーの効率的な運用実現のため、2020年1月に漁業者の協力を得て現地実証試験を実施し、漁船によるグライダーの投入・回収が可能であることを示しました(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 水中グライダーの海洋環境モニタリングへの有効性と、運用に関する信頼性を構築することができました。今後、調査船による観測結果と組み合わせた効果的な海洋モニタリング体制の整備が期待されます。栄養塩類が豊富な河川水は、沿岸域や浅海域の生物生産に大きな影響を与えていることが知られています。今後、日本海の海洋生態系にとって重要な春季の生物生産に沿岸水が影響するメカニズムを明らかにすることにより、温暖化等の環境変動の水産資源への影響の解明が進むことが期待されます。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=10028&YEAR=2020 |
カテゴリ | かぶ モニタリング |