タイトル | 有害赤潮のモニタリング、予察手法及び防除技術の高度化 |
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担当機関 | (国研) 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 |
研究期間 | ---- |
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発行年度 | 2020 |
要約 | 八代海において、県や漁協などと連携して、栄養塩などの水質の自動観測およびSNSによる情報共有を行うことでシャットネラ赤潮の発生を直前に予測して餌止めなどの対策を講じた結果、漁業被害を抑止することに成功した。また、シャットネラの鉛直移動特性等を踏まえて生簀を沈下させることや網丈を伸ばすことが大きな被害軽減効果を有することを示した。 |
背景・ねらい | 大規模に発生した赤潮を駆除する技術は無く、養殖業者は発生直前に餌止めなどの被害軽減対策(事前策)を行って凌いでいる。そのため、事前策をより確実に効率よく実施する方策が現場から求められている。八代海では、2009年及び2010年に赤潮原因プランクトンであるシャットネラの赤潮による養殖ブリの大量死が発生したことから、水産研究・教育機構は県や漁業協同組合などと共同で赤潮発生機構の解明、気象データによる数週間?数ヵ月前からの発生予察手法の確立、自動観測ブイによる水温や塩分などの監視、webサイトによる情報共有など、様々な取り組みを進めてきた。さらに、2018年度から、被害軽減に直結する「赤潮発生を直前(約1週間前)に予察する手法の確立及び事前策の科学的検証」に取り組み始めた。 |
成果の内容・特徴 | 2019年夏、硝酸塩センサーや採水試料の即日分析により栄養塩濃度を準リアルタイムで監視した。その結果、多数の監視地点でシャットネラが検出され、さらにまとまった栄養塩濃度の上昇が認められた約1週間後、大規模な赤潮が確認された(図1)。これにより、栄養塩濃度を指標としてシャットネラ赤潮の発生を直前に予察可能であることが分かった。 船上からでも簡単にアクセスや投稿が可能なSNSを通じて、シャットネラの分布や栄養塩分析結果などを前述の関係機関を中心とするメンバーで共有する体制を作った。2019年に、養殖の現場では共有した情報を参考にして赤潮発生のタイミングを予察し、発生より前から餌止めを継続した。加えて一部の漁場では、赤潮発生に備えて足し網(網を継ぎ足して生簀網を拡張し、魚の逃げ場を作る)や生簀沈下(赤潮が薄くなる深さまで網蓋をして生簀を沈める)の準備を進めた。その結果、シャットネラの最高細胞密度は2009年及び2010年以上だったが、被害額は10分の1未満に留めることができた(図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 栄養塩濃度を監視することで、赤潮発生の直前予察が可能であることが分かった。国内の多くの養殖現場でも栄養塩濃度が赤潮の発生に関与する可能性が高く、他海域にも適用可能である。足し網や生簀沈下は、的確な条件で行えば大きな被害軽減効果があることが示された(図3)。これらの対策方法が広く普及することで、被害の減少が期待される。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=10076&YEAR=2020 |
カテゴリ | 防除 モニタリング |