多収性品種「オオナリ」の疎植栽培による飼料用米の省力多収生産体系

タイトル 多収性品種「オオナリ」の疎植栽培による飼料用米の省力多収生産体系
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中日本農業研究センター
研究期間 2017~2018
研究担当者 山口弘道
草佳那子
木村俊之
発行年度 2021
要約 牛ふん堆肥を施用した水田で、多収性品種「オオナリ」を用いて肥効調節型肥料を活用した50株/坪(約15株/m2)の疎植栽培を行うことにより、リン酸・カリの化学肥料施用量を大幅に削減しながらトコトリエノール含量の高い飼料用米を省力的に多収生産することができる。
キーワード 飼料用米、多収、ビタミンE、トコトリエノール、疎植栽培、牛ふん堆肥
背景・ねらい 近年、飼料用米の作付面積が増加する一方で、その平均収量は必ずしも高くない。多収品種の導入が十分に進んでいないことも一因と考えられ、温暖地向けに育成された多収性品種「オオナリ」の導入により大幅な収量向上が期待できる。飼料用米生産には省力化や低コスト化が求められるとともに、多収のためには多肥が必要となる。従って、疎植栽培や肥効調節型肥料による省力化、家畜ふん堆肥の活用による化学肥料の削減が求められる。さらに、「オオナリ」は多収であるのみならず、米ぬかに含まれるビタミンE、とりわけ、強い抗酸化性を有するトコトリエノール含量が高く、飼料中への合成ビタミンE添加量低減や畜産物の付加価値向上も期待できる。
本研究では、「オオナリ」を用いて、疎植栽培や肥効調節型肥料等の導入、地域で生産された家畜ふん堆肥の活用により、高トコトリエノールの飼料用米を省力的に多収生産するための体系を現地実証試験により確立する。
成果の内容・特徴 1. 「オオナリ」は疎植条件(50株/坪、約15株/m2)において一穂籾数が増加し、それに伴うシンク充填率(登熟良否の指標)の低下も少ないため、慣行(70株/坪、約21株/m2)と同等以上、900kg/10a前後の高い粗玄米収量が安定的に得られる(表1)。疎植により育苗箱数は2~3割削減できる。
2. 「オオナリ」米ぬか中のビタミンE含量、トコトリエノール含量は、地域で飼料用米として主に栽培されている「月の光」と比べて高く、現地水田で栽培した場合においても、年次や栽植密度によらず安定的に高い値を示す(図1、表2)。
3. 2~2.5t/10aの牛ふん堆肥を施用することで、イネが吸収するリン酸・カリの大部分を供給できるため、化学肥料の使用量を大幅に削減できる(図2)。堆肥施用だけでは不足する窒素について、速効性成分6kg/10aと緩効性成分(シグモイド型110日タイプ)6kg/10aを組み合わせた窒素肥料を施用することで、追肥を省略して高い粗玄米収量が得られる(図2、表1)。
成果の活用面・留意点 1. 「オオナリ」の栽培適地(関東以西)の北限に位置する栃木県那須地域(大田原市)の黒ボク土水田で実施した2017~2018年の2年間の現地実証試験において得られた成果である。
2. 「オオナリ」の多収性を発揮するためには、那須地域で5月上旬から中旬までの移植が有効である。
3. 牛ふん堆肥と化学肥料については、適宜土壌診断を実施し、圃場の地力や養分バランス、堆肥成分等に応じた適正量を施用することが望ましい。
図表1 249002-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/carc/2021/carc21_s06.html
カテゴリ 肥料 育苗 収量向上 省力化 飼料用米 水田 多収性 低コスト 土壌診断 品種

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