タイトル | 深層学習による粘着板に捕獲したイネウンカ類の自動認識 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 | 2018~2020 |
研究担当者 |
高山智光 矢代敏久 真田幸代 桂樹哲雄 竹谷勝 杉浦綾 |
発行年度 | 2021 |
要約 | イネウンカ類の発生量調査に用いる粘着板上に捕獲した虫体を、深層学習を利用し自動認識を行う。圃場で発生したイネウンカ類を粘着板で捕獲し、その画像を物体検出アルゴリズムYOLOに学習させると、イネウンカ3種の雌雄、成虫の翅型、幼虫の生育ステージをそれぞれ検出できる。 |
キーワード | イネウンカ類、物体検出、深層学習、YOLO |
背景・ねらい | イネウンカ類の国内における水田内の発生量調査は、イネウンカ3種の雌雄、成虫の翅型、幼虫の生育ステージでの分類が必要であるが、都道府県の病害虫防除所や公立試の熟練の調査員による人力と目視に頼っている。株元に置いた粘着板に払い落としたイネウンカ類の分類、計数には30分以上の時間がかかることもまれではなく,多数の粘着板についての分類と計数には多大な労力を伴う。そこで本研究では粘着板上のイネウンカ類をAI技術を用いることで自動分類・計数を行うシステムの構築をするために、イネウンカ類を捕らえた粘着板を画像化し、深層学習の物体検出アルゴリズム(YOLOv3)を用いて画像を学習することで、画像中のイネウンカ類の自動認識を行う学習済みモデルを得る。この学習済みモデルを用いることにより、画像中のイネウンカ類の高精度な自動認識を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1. このYOLOv3の学習済みモデルは、イネウンカ類の発生量調査に用いる粘着板に捕虫した全18クラス(表1)を、その画像から自動的に検出できる。高速なGPU搭載パソコンでは、検出時のモデルの動作時間は粘着板1枚あたり約10秒である。 2. 学習用画像作成には、ウンカ発生圃場でイネからイネウンカ類を払い落とした粘着板45枚をフラットベッドスキャナで1200dpiの解像度で撮影する。この画像をさらに学習に適した大きさに分割し、その分割画像中のイネウンカ類の位置とクラスをすべて記述したアノテーションファイルも作成する(図1)。この撮影画像とアノテーションファイルのセット(データセット)に含まれるイネウンカ類の各クラスごとの数を示したものが表2である。 3. このデータセットを学習用と検証用に分割し、YOLOv3での学習と検証を繰り返して学習済みモデルを得る。最良の結果の学習条件と最良の平均適合率を示したモデルを保存し、別に用意したテストデータで推論を行う。学習結果と推論結果について、各クラスごとの適合率(誤検知を評価するが見逃しは評価できない)と再現率(見逃しを評価するが誤検知は評価できない)、F値(再現率と適合率の調和平均)等について示したものが表3である。学習データ数もテストデータ数も比較的少ないヒメトビウンカ以外は、学習結果と推論結果の適合率の差は少なく、十分なデータが確保されることで良好なモデルが得られている。特に被害が甚大なため最優先で判別すべきトビイロウンカ全体の適合率は、学習結果で0.949、推論結果でも0.943であり、人間による一般物体認識のエラー率5.1%を考慮すると十分高い。一方、圃場での出現頻度の極めて低いヒメトビウンカ短翅オスの適合率は低い。 |
成果の活用面・留意点 | 1. この学習済みモデルは分類とカウントを自動で行う基盤となる。このモデルとPCとスキャナを組み合わせ、計数を行うアプリケーションを開発することにより、病害虫防除所や公立試で行われているイネウンカ類の分類計数を自動化できる。 2. 今後、学習データを追加しモデルを再学習させることで、さらに適合率を向上できる。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/karc/2021/karc21_s06.html |
カテゴリ | 水田 ヒメトビウンカ 病害虫防除 |