タイトル | 小型トラクタに後付け可能な危険挙動再現のための実験用無線遠隔操作システム |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 農業機械研究部門 |
研究期間 | 2018~2021 |
研究担当者 |
滝元弘樹 井上秀彦 下元耕太 原田泰弘 原田一郎 塚本茂善 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 電動シリンダとステッピングモータを利用した乗用トラクタを無線遠隔操作するためのシステムである。本システムにより、傾斜地等の走行実験のような運転者に被害が及ぶ可能性のある条件でも安全に実験が実施でき、車両運動モデルの検証や安全啓発資料の制作での活用が期待できる。 |
キーワード | 農作業安全、転落・転倒事故、トラクタ、無線遠隔操作、危険挙動再現 |
背景・ねらい | 乗用トラクタ(以下、トラクタ)は、他の車両と大きく異なる特徴を持ち、傾斜地や荒れた狭い農道等の環境要因も重なり、トラクタ特有の事故が多数発生している。これまでトラクタの危険挙動を力学的に解明する研究が進められてきたが、結果の妥当性の検証にトラクタ実機を用いることは運転者の危険を伴うため困難である。また、農業者への安全教育の教材として危険挙動の再現映像が有効であると考えられるが、運転者の安全確保が課題である。運転者が乗車することなく実機により危険挙動を再現できれば、車両運動モデルの検証や安全啓発資料への活用が期待できる。 このため、本研究では、広く利用されているマイクロコンピュータ(以下、マイコン)技術や無線通信技術を用いて、ロボット化又は自動化されていない市販小型トラクタに後付け可能な無線遠隔操作システムを開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 本システムは、左右のブレーキペダル及びクラッチペダルをそれぞれ操作するための電動シリンダ(以下、シリンダ)、操舵装置を操作するためのステッピングモータ(以下、モータ)、前記シリンダ及びモータを制御するためのコントロールボックス及び手元で操作するためのコントローラによって構成される(図1)。コントロールボックスにはモータドライバ、制御用マイコン及び無線用マイコンが格納されている。モータはステアリングコラム、シリンダ本体は座席取付け部にそれぞれ金具を介し、シリンダの先端はブレーキペダル及びクラッチペダルに金具及びボールジョイントを介して固定されており、市販機への後付けが可能である。 2. トラクタ機体には破損防止フレームや金網等が取り付けられており、機器の破損や燃料漏れ等を生じることなく繰り返し安全に試験が実施できる(図1)。 3. トラクタの操作はコントローラに配置したスイッチにより行う(図2)。トラクタの発進と停止は、それぞれのスイッチを操作することで行われ、一度の操作でブレーキペダルとクラッチペダルに取り付けられたシリンダが伸縮する。旋回は、操舵用スイッチを操作することで行われ、操作している間ステアリング部に取り付けられたモータが回転する。また、不測の事態に備えて手動又は無線の断絶による緊急停止機能も有する(表1)。 4. モータトルクは220 Nm(100 r/min時)、モータ軸とステアリング軸の減速比は6、シリンダ推力及び保持力は200 N、シリンダの最大ストローク量は100 mmである。また、無線は中距離ナローバンド無線IEEE802.15.4(2.4 GHz)を利用している(表2)。 5. 利用した制御用マイコン及び無線用マイコンは、一般に普及しており安価に入手可能である。制御用マイコンに書き込んだプログラムによって制御を行っているため、システムを装着するトラクタに合わせてモータ回転速度、シリンダ伸縮速度及び伸縮量を容易に変更可能である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 発進、停止及び操舵を無線遠隔操作化することにより、転落・転倒や激しい振動等の運転者に危険を及ぼす可能性のある条件でも運転者が乗車することなく実機での走行実験が実施できる。 2. ロボット化又は自動化されていない市販機でも無線遠隔操作が可能となる。 3. トラクタの変速レバーとスロットルレバーはトラクタ停止中に手動で操作する必要がある。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/iam/2021/iam21_s05.html |
カテゴリ | 遠隔操作 傾斜地 ロボット |