植物の低温馴化・脱馴化を考慮したチャ萌芽率推定モデル

タイトル 植物の低温馴化・脱馴化を考慮したチャ萌芽率推定モデル
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門
研究期間 2020~2021
研究担当者 木村建介
丸山篤志
工藤健
発行年度 2021
要約 植物の秋から冬にかけての低温馴化、春先の脱馴化、その後の萌芽のプロセスに基づいて、チャの萌芽率を推定するモデル。気候変動下の不安定な温度環境においても萌芽率を精度よく推定でき、整枝時期の決定や凍霜害リスクの評価に応用可能である。
キーワード 温暖化、生物季節(フェノロジー)、植物のストレス記憶、プロセスモデル、積算気温
背景・ねらい 作物の環境に対する馴化とそれに伴う休眠打破や萌芽といった生物季節現象を把握することは、適切な栽培管理や農業気象災害の予測に重要である。生物季節の予測には、積算気温を用いたモデルが用いられる事が多いが、気候変動下の不安定な温度環境においては、既存のモデルによる予測が困難となっている。そこで本研究では、チャを対象とし、秋から冬にかけての低温馴化、春先の脱馴化、その後の萌芽のプロセスを考慮することにより、気候変動下でも適用可能な萌芽率推定モデルを構築する。
成果の内容・特徴 1. 本モデルでは、気温および日長の2つのデータから萌芽率が計算される。既存のモデルでは気温の1時間平均値を用いるものも多いが、本モデルではより取得が容易な日平均値を用いる。
2. 本モデルは、秋から冬にかけての低温馴化、春先の脱馴化、その後の萌芽率の変化を表す3つのサブモデルによって構成される(図1)。低温馴化に関するサブモデルは、積算低温を忘却曲線で重み付けすることで、植物の低温ストレスの記憶を模擬することが可能である(図1a)。脱馴化に関するサブモデルにおいては、低温ストレスの記憶と高温による反応が競合するプロセスが反映される(図1c)。萌芽率の変化のサブモデルは、温度に対する萌芽率の増加が非線形関数で表現される(図1e)。
3. 低温馴化から脱馴化への移行は、ある一定の(十分な)低温ストレスを記憶した際に起こるものとする(図1b)。極端な暖冬により低温ストレスの記憶が不十分な際は、その後の生育を担保するために、限界日長を超えた際に強制的に移行する(図1b)。脱馴化から萌芽への移行は、高温による反応が低温ストレスの記憶を大きく超えた際に起こる(図1d)。
4. モデルの精度を過去15年のデータで検証した際、二乗平均平方根誤差(RMSE)は、8パーセントポイント程度であり、様々な環境を経験したチャの萌芽率を精度よく推定できる(図2)。
5. 本モデルを用いて、過去40年の温暖化によって萌芽日がどの程度前進したかを地域スケールで評価した際、その前進速度は空間的に大きく異なる(図3)。
成果の活用面・留意点 1. 農研機構メッシュ農業気象データの日平均気温および日長を利用することで、日本全国の任意の点のチャ萌芽率を容易に推定することが可能である。
2. モデルの妥当性は、埼玉県の過去15年の萌芽率の実測データで検証されているが、環境条件が大きく異なる地点に本モデルを適用する際は、モデルの精度が低下する可能性がある。
3. 本モデルは、一番茶収穫前の最適な整枝日の決定や、温暖化で大きく変動する凍霜害リスクの評価への活用が期待される。
図表1 249092-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/niaes/2021/niaes21_s09.html
カテゴリ 栽培技術

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