Xylella属細菌の感染植物を早期発見するためのPCR検定法

タイトル Xylella属細菌の感染植物を早期発見するためのPCR検定法
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 植物防疫研究部門
研究期間 2019~2021
研究担当者 伊藤隆男
千秋祐也
発行年度 2021
要約 Xylella属細菌は、世界的に分布が拡大している重要病原体であり、日本への侵入も警戒される。果樹類を中心に葉焼けや枝枯れなどの症状を引き起こすが、他要因による類似症との区別が必要であり、感染植物を早期発見するための初動対応に検出漏れの無いPCRを利用できる。
キーワード Xylella fastidiosa、X. taiwanensis、エンドポイントPCR、リアルタイムPCR、葉焼け
背景・ねらい Xylella属細菌は木部局在する接ぎ木伝染性細菌であり、ヨコバイ類などにより虫媒伝搬する。Xylella fastidiosaは様々な植物に感染することが知られ、ブドウ、カンキツ、モモ、オリーブなどの果樹類を中心に葉焼けや枝枯れ、果実の異常や収量低下あるいは枯死などの大きな被害を与える。別種のX.taiwanensisは、台湾のナシでのみ発生が確認され、葉焼けや枝枯れを引き起こす。これまでにXylella属菌として見いだされているのは上記2種のみである。植物検疫上の重要病原細菌であるが、宿主範囲の異なるいくつかの亜種も存在し、多様な植物への潜在感染もあることから、見過ごされて侵入した感染植物が見つかる事例が諸外国において近年相次いで報告されており、世界的に分布が拡大している。万が一、国内で発生した場合に迅速かつ的確な防除を行う必要があるが、葉焼けや枝枯れの症状は水分ストレスなどの他要因による類似症状との区別が困難である。そのため、本細菌の感染植物を早期に発見するためには、都道府県の病害虫防除所や公設試験場等、植物防疫所支所等の各機関において容易に実施可能な検定手法を用意しておく必要がある。その場合、本細菌の培養は容易ではなく、血清診断には専用の血清をあらかじめ購入し備えておかなくてはならない。一方で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法であれば、本法に用いるプライマーを数日で安価に手に入れることができ、検査機関に常備されている試薬等を活用すればすぐにも実施が可能である。各機関が行う初動対応の検定に最も適していると想定しており、その手法を確立する。
成果の内容・特徴 1. X. fastidiosaの検出に用いる既報のプライマーの中から選抜を行ったところ、X0838S/X1439A(Rodriques et al. 2003)(表1)はX. taiwanensisも検出可能であり、亜種や変異株も含めて検出漏れは認められない。一方で、カンキツかいよう病細菌などの近縁細菌とも非特異的に反応して偽陽性が認められる例がある(図1)。
2. 新たに設計したプライマーX67S1/XL2r(表1)は、X0838S/X1439Aよりも近縁細菌との非特異反応は少なく、検出漏れは無く100細胞までの検出が可能である。PCR試薬の種類によっては、変異株の一部で検出感度の低下が見られるが、血清診断と同程度(105細胞)まで検出可能である。
3. Xylella属細菌に感染の疑われる植物を検定する場合、X67S1/XL2rあるいはX0838S/X1439Aを用いたPCRを利用することができる。PCRの試料に用いるDNAの精製度が低いと反応阻害物質の影響により偽陰性の結果を生じる場合があるが、多種の植物DNAを標的としたプライマーE1141r2/C18Sr8(表1)を用いたPCRを別途行うことで反応阻害の有無は確認できる。これらのプライマーを用いたPCR反応はそれぞれ別のマイクロチューブ内で行う必要はあるが、同じPCR機器にセットして同条件で同時に行うことが可能である(図1)。
4. リアルタイムPCR機器が利用できる場合、プライマーXrDf1/XLr4とプローブXrD-Pf(表1)を用いたTaqManリアルタイムPCR法でも検定可能である。本法は、近縁細菌との非特異反応は認められず、検出漏れは無く10細胞までの検出が可能である(結果省略)。
成果の活用面・留意点 1. 検出漏れが無いとは、標的の遺伝子変異が原因による偽陰性が認められないという意味であり、検出限界以下の濃度で存在する細菌を検出することはできない。
2. PCRの試料に用いるDNAは、キット等を用いて検定対象の植物から抽出する。E1141r2/C18Sr8を用いたPCRで植物DNAが検出されない場合は抽出方法を見直すか、Ampdirect plus酵素セット(島津製作所)等のような反応阻害物質に耐性のあるPCR試薬を用いる。
3. X67S1/XL2rを用いたPCRを行う場合、X0838S/X1439Aを用いたPCRは必ずしも行う必要はない。
4. 本検査で陽性の場合は、偽陽性の可能性もあることから、植物防疫所本所等に確定診断を依頼する。
図表1 249124-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nipp/2021/nipp21_s07.html
カテゴリ オリーブ 植物検疫 接ぎ木 病害虫防除 ぶどう 防除 もも その他のかんきつ

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