タイトル | GC-MS/MSによるペルフルオロアルキル化合物(PFAS)とその類縁化合物の高感度一斉分析法 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 基盤技術研究本部 |
研究期間 | 2019~2021 |
研究担当者 |
殷熙洙 山﨑絵理子 谷保佐知 山下信義 Rongben Wu Huiju Lin |
発行年度 | 2021 |
要約 | 分析需要が高いFTOHsやFOSAs/FOSEsと、PFAS類縁化合物(ヨウ素・臭素体置換体)の総合的評価のためのGC-MS/MSによる一斉分析法である。複数化合物の濃度を一回の測定で効率よく高感度に計測でき、環境中の微量有害PFASとその類縁化合物の定性・定量に有効である。 |
キーワード | GC-MS/MS、POPs、PFAS、PFAS類縁化合物、高感度一斉分析法 |
背景・ねらい | 残留性有機汚染物質(POPs)の一種である工業製品由来のペルフルオロアルキル化合物(PFAS)は、微量に存在する有害な有機化学物質である。PFASは揮発性を有し、大気を介して環境中に拡散・長距離移動する特性があり、地球全体における汚染が明らかになっている。このため、現在、世界152ヶ国が生産や濃度を規制している。その中で、フルオロテロマーアルコール類(FTOHs)やペルフルオロアルキルスルホン酸アミド/アミドエタノール(FOSAs/FOSEs)は生物体内・環境中で代謝・分解され、毒性が高いペルフルオロオクタン酸(PFOA)やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)に変換される。また、PFASの製造中間化合物であるヨウ素・臭素置換されたPFAS類縁化合物の生産量は近年増加傾向にあるが、その影響は未知数である。このため、FTOHs、FOSAs/FOSEsおよびPFAS類縁化合物の環境での動態と生物への影響の評価は喫緊の課題となっている。しかしながら、これまでに開発されたLC-MS/MS を用いたPFAS分析法ではFTOHs、FOSAs/FOSEsの分析は極めて不安定で再現性に乏しかった。また、PFAS類縁化合物を含む一斉分析は未着手であった。 そこで、高感度一斉分析法が確立されていないFTOHsやFOSAs/FOSEsとPFAS類縁化合物の計21の成分に特化し、GC-MS/MSを用いた高感度一斉定性・定量分析法を開発する。これにより、環境中のこれらの化合物の実態解明の基盤になる高度な分析技術を提供する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 本一斉分析法は、2本のカラムを直列に用いたガスクロマトグラフ(GC)と、トリプル四重極タイプの質量分析装置(MS/MS)によって構成される。PFASおよびその類縁化合物のうち分析法未設定の21成分の分離に最適化したGC条件を表1に示す。 2. 21種のターゲット化合物に対して定量イオンと定性イオンを選定し、それぞれにプリカーサーイオンとプロダクトイオンを設定する(表2)。これにより、類似構造の夾雑物が多い試料であってもターゲット化合物の正確な同定・定量が可能となり、測定精度の向上と高感度分析が可能になる(図1)。 3. フッ素がヨウ素や臭素に置換されたPFAS類縁化合物を含む高感度一斉分析の実現は世界初である(図2)。本分析法は、従来は分析困難だったPFASと、完全に未知であった上記PFAS類縁化合物の環境動態解明を可能にする。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本分析法の現時点の適用範囲は、大気試料に関する21種のPFAS化合物の定性・定量分析である。土壌、水、農作物等、その他の形態の試料に関しては試料中の分析妨害マトリックスが異なるため、抽出・精製・濃縮を含む分析工程の開発段階である。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/kiban/2021/naac21_s03.html |
カテゴリ | 分析技術 |