大都市で発生した大気汚染物質はどこまで、どれだけ 森林に届くのか?

タイトル 大都市で発生した大気汚染物質はどこまで、どれだけ 森林に届くのか?
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 今村 直広
 Delphis F. Levia
南光 一樹
田中 延亮
大手 信人
発行年度 2021
要約 大都市で発生する大気汚染物質が周辺の森林に及ぼす影響を考える上で、森林への流入量と分布の解 明が重要です。この研究では、首都圏周辺の7箇所のスギ林で、大気から流入する硫酸、硝酸態窒素 及びアンモニア態窒素の量を乾性沈着と湿性沈着に分けて測定しました。その結果、乾性沈着量は都 心から遠く、標高の高い森林ほど少なくなりましたが、湿性沈着量ではこの傾向は見られませんでし た。これは、乾性沈着と湿性沈着では大気汚染物質が森林まで移動するプロセスが異なり、その違い が沈着量の分布に影響することを示しています。この成果は、大都市で発生する大気汚染物質が周辺 の森林に与える影響を予測する上で重要な知見となります。
成果の内容・特徴 ■大都市と森林 
大都市で発生した大気汚染物質は、大気中を移動しながら拡散し、周辺の森林に流入します。大都市周辺の森林では、それ以外の地域の森林に比べ、より多くの大気汚染物質が流入すると考えられるため、その量と原因を調べ、森林への影響を明らかにすることが重要です。
■乾性沈着と湿性沈着 
首都圏周辺の7箇所のスギ林で、林外雨、樹冠通過雨、樹幹流に含まれる硫酸、硝酸態窒素、アンモニア態窒素の量を測定し、森林への大気汚染物質の流入量を乾性沈着と湿性沈着とに分けて把握しました(図1)。その結果、乾性沈着量は都心から遠く、標高の高い森林ほど少ない傾向が認められました。一方、湿性沈着量にはこのような傾向は認められませんでした(図2)。この原因として、乾性沈着では、ガスや粒子の形で大気中を拡散した汚染物質が森林に沈着するため、発生源の都心に近く、標高の低い森林で沈着量が多くなるのに対して、湿性沈着では、大気中の汚染物質が雲粒に取り込まれたり、雨滴に洗い流されたりするなど、雨雲や降雨の分布にも影響を受けるため、沈着量の空間的分布が不均一になることが考えられました。
■大気汚染物質の拡散範囲と量を予測 
本研究の成果は、乾性沈着と湿性沈着では大気汚染物質の輸送から沈着に至るプロセスが異なり、その違いによって、大気汚染物質が森林にとどく距離や量が変わることを示しています。この知見は、大都市周辺の森林への流入量の予測や影響の評価に役立てられます。
■研究資金と課題 
本研究は、JSPS科研費 (JP22780139)「山地林生態系における湿性・乾性沈着量の定量化と樹冠収支モデルの適用」およびJSPS科研費 (JP24658133)「安定同位体比情報を用いた森林土壌中の総硝化量の原位置推定」による成果です。
■文献
Imamura, N. et al. (2020) Geographic Factors Explain theVariability of Atmospheric Deposition of Sulfur and Nitrogen onto Coniferous Forests Within and Beyond theTokyo Metropolis. Water, Air, & Soil Pollution, 231, 105.
■専門用語
林外雨:林外の裸地や樹冠上で観測される雨
樹冠通過雨:林内で観測される雨で、樹冠を通過する雨と、樹冠に付着した後に滴下する雨をあわせたもの
樹幹流:樹冠に付着した後に幹の表面を流下する
雨乾性沈着:大気中のガスや粒子の形で物質が地上に落ちてくること湿性沈着:雨に溶けた形で物質が地上に落ちてくること
図表1 249176-1.png
図表2 249176-2.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p6-7.pdf
カテゴリ 輸送

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