樹体を「センサー」とした風荷重計測手法を開発

タイトル 樹体を「センサー」とした風荷重計測手法を開発
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 宮下 彩奈
鈴木 覚
発行年度 2021
要約 野外の樹木は常に風による力を受けています。しかし、それを直接計測できる手法はありませんでし た。本研究では、幹の変形を計測できる小型のセンサーを複数用いることで、樹木に作用する荷重の 大きさ・重心位置・方向を精度よく計測することに成功しました。この手法では、幹の材質の不均一 さやセンサー取り付け精度を気にすることなく高精度の計測が可能です。スギ稚樹を用いた荷重試験 では、荷重の大きさと重心位置は2%程度、荷重の方向は2度未満の誤差で測定することができまし た。本手法は、森林の樹木にかかる風荷重の実態を明らかにし、風害が発生しやすい条件やリスクの 評価を行う上で重要な技術となります。
成果の内容・特徴 ■樹木に作用する風の力と風害 
風によって樹木の幹にかかる力(風荷重、図1)は、高さ方向に一様でなく、風向や風速によって瞬間的に大きく変化します。風荷重が樹木の耐えられる限界を超えると、根返りや幹折れなどの風害が発生します。温暖化による台風の大型化が予測されており、今後の森林管理を考えるうえで風害リスクの予測と評価は重要な課題となっています。風害は林業への被害だけでなく、道路や電線などのインフラ設備への被害の原因にもなります。また、人工林では間伐後に風害が発生しやすいことが指摘されていますが、健全な森林の育成のために、風害リスクを低減する施業方法を明らかにしなければなりません。しかし、実際に森林内の樹木で風荷重を計測した例はほとんどなく、その実態はよくわかっていません。
■幹の変形を利用した荷重計測 
]今回、私たちは樹体を「センサー」として風荷重の計測を行う手法の開発に取り組みました。計測に用いたのは、ひずみゲージ(図2)という変形量を高速で精度よく検出することができる小型のセンサーです。これを木の幹に複数枚貼ることで、樹木に力がかかったときに生じる場所ごとの変形量の違いを計測し、荷重の大きさの合計や重心位置、そして荷重の方向を求めます。手法開発において工夫したことは、実際の樹木を扱うときに直面する問題に対処できるようにしたことです。例えば、樹木の幹の材質は場所によって異なるため、同じ力がかかった場合でも場所ごとに変形の仕方が異なります。また、幹の表面の狙った場所に正確にひずみゲージを貼り付けるのは困難です。私たちは、これらの問題を克服する補正技術を考案し、実験室での荷重試験において、スギの稚樹(図2)では、荷重の大きさと重心位置は2%程度の誤差、荷重の方向は2度未満の誤差で測定できました(図3)。
■風荷重計測手法の発展性 
本手法は、樹木そのものを風荷重の「センサー」とする初の技術であり、強風が樹木におよぼす影響や森林内の風の流れを解明するために活用できます。また、森林内の多数の樹木で測定を行い、間伐の前後で風荷重を比較することで、間伐による風害リスクを評価できます。
■研究資金と課題 
本研究は交付金プロジェクト*「林木に作用する風荷重の動的測定法の開発:間伐による風害リスク評価のために」による成果です。
■文献
Miyashita A. et al. (2021) A method for measuring theforces acting on a tree trunk using strain gauges. PLoSONE https://doi.org/10.1371/journal.pone.0245631
■専門用語
ひずみゲージ:薄いシート状をしており、センサー表面の金属が伸縮したときに電気抵抗が変化することを利用して細かな変形量を計測することができます
図表1 249177-1.png
図表2 249177-2.png
図表3 249177-3.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p8-9.pdf
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