福島の森で放射性セシウムはどう動いてきたのか?

タイトル 福島の森で放射性セシウムはどう動いてきたのか?
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 橋本 昌司
今村 直広
小松 雅史
大橋 伸太
加藤 弘亮
仁科 一哉
田上 恵子
発行年度 2021
要約 福島原発事故で影響を受けた地域の約7割の面積が森林です。事故後の研究から、森林内の放射性セ シウムの分布は時間とともに変化してきたことがわかっています。私たちは、事故後に様々な形で発 表された研究データを集約し、樹木から土壌への移動、樹木内部への取り込み、土壌内の分布、きの こや山菜、野生動物への取り込み(移行係数)、濃度低下速度などのデータセットを作成しました。 このデータセットにより福島原発事故による森林内での放射性セシウムの動態の全体像が明らかにな り、その結果は国際原子力機関(IAEA)から全世界に広く発信されました。今後は世界中の研究者 や行政担当者に活用されて、原発事故の影響を受けた森林の管理に貢献することが期待されます。
成果の内容・特徴 ■大面積を占める森林 
東京電力福島第一原子力発電所事故で影響を受けた地域の約7割が森林に覆われています。森林に降った放射性セシウムは、まず樹木の枝葉に付着し、それが地表へと移動し、表層の落葉層を通過して、その下の鉱質土壌へと移動していきます。さらに、土壌中の放射性セシウムの一部は樹体に取り込まれて、木材中に蓄積されていきます。 森林は、木材としてだけでなく、野生のキノコや山菜を採取したり、生息している大型動物を捕獲して食肉(ジビエ)としたり、様々な形で利用されます。そのため、福島原発事故で影響を受けた森林の今後の利用を考えるには放射性セシウムの実態を把握することが不可欠です。
■たくさんのデータが取られたが 
事故直後から、森林内の放射性セシウムの移動がどのような速さで起こっているのか、森林の中のどのあたりに放射性セシウムが蓄積し、どのように変化しているのかについて、多くの研究結果が発表されてきました。また食用のキノコや山菜、食肉などのモニタリング結果も公開されてきました。これらの膨大な調査結果は、研究者、行政機関によって様々な形で発表されてきたため、全体像が非常に見えにくい状態でした。
■取りまとめて、全体像を提示する 
]私たちは、2016年から始まった国際原子力機関(IAEA)のプロジェクトに加わって、国内にとどまらず、欧州の研究者とも力を合わせ、これまでに報告された調査結果を集約して、福島の森における放射性セシウムの動態の全体像をつかむ研究に取り組んできました。具体的には樹木から土壌への移動、樹木内部への取り込み、土壌内の分布、きのこや山菜、野生動物への取り込み、濃度低下速度などのデータを整理し、データセットを作成しました。 これは福島の森林での放射性セシウムの動態を網羅的に集約し、その全体像がわかる唯一のデータセットです。福島原発事故で影響を受けた森林再生のための基礎データとしてだけでなく、国際原子力機関のプロジェクトという国際的枠組を通じて全世界に広く発信されることで、全世界の研究者や行政担当者に活用されることが期待されます。
■研究資金と課題
本研究の一部はJSPS科研費(JP16H04945)「森林放射性セシウム動態データベースの構築とマルチモデルによる将来予測」および交付金プロジェクト*「森林の放射性セシウム動態解明による将来予測マップの提示」による成果です。
■文献
Hashimoto, S. et al. (2020) Forest ecosystems, in: Environmental Transfer of Radionuclides in Japan Followingthe Accident at the Fukushima Daiichi Nuclear PowerPlant. IAEA-TECDOC-1927 IAEA, Vienna, pp. 129‒178.Hashimoto, S. et al. (2020) A dataset of 137Cs activityconcentration and inventory in forests contaminated bythe Fukushima accident. Scientific Data, 7: articlenumber 431
図表1 249178-1.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p10-11.pdf
カテゴリ データベース モニタリング

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