シカからスギを一本ずつ守る「単木保護資材」

タイトル シカからスギを一本ずつ守る「単木保護資材」
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 野宮 治人
発行年度 2021
要約 シカ被害対策は防鹿柵が一般的ですが、植栽木を1本ずつ筒状の単木保護資材(以下、資材)で守る 方法もあります。そこで、植栽したスギ苗に資材を取り付けた施工地を九州と四国で調査して、その 特徴と効果を明らかにしました。スギが小さく資材の中にある間は、シカによる被害は少数でした。 資材はスギの樹高成長を促進し、植栽後3年ほどで高さ140cmの資材から抜け出す施工地が多くなり ました。しかし、資材から抜け出した枝葉は無防備になり、シカの食害で樹形異常を起こすスギが発 生しました。シカの生息密度によってその被害率は大きく異なるため、対象林分でのシカの影響度を 事前に検討しておくことが重要です。
成果の内容・特徴 ■単木保護資材とは 
防鹿柵が造林地全体を守ってシカの侵入を防ぐのに対して、筒内に苗木を1本ずつ入れて保護する、単木保護資材(以下、資材)を利用する方法があります。日本では1990年代にシカ被害対策としてこの資材が使われ始め、10年くらい前からプラスチックシートを筒状に組み立てる資材(図1:資材高140cm)の使用事例が増えてきました。本研究では、植栽スギに対するこのプラスチックシートタイプ資材の特徴や効果を明らかにするため、九州と四国の43施工地(2~7年生)の現状を調査しました。
■単木保護資材の中では 
スギが資材の中にある間は、比較的シカの被害を受けませんでした。資材を施工したスギは植栽後3年ほどで平均樹高が資材の高さを超え、資材を使わない場合に比べて樹高成長が大変良好でした(図1)。一方、植栽して初期に枯れたと考えられるスギや、資材が斜めに傾いたり落石などで破損したりして成長を阻害されたスギも確認されました。こうした被害の程度に応じて、枯れたスギの植え直しや、破損した資材の補修などのメンテナンスが必要になります。
■単木保護資材の高さを超えると 
スギが成長した場合、資材高を超えた枝葉は無防備になるので、シカ被害を受けることが分かりました。資材から出た枝葉が少し食害される程度(微害)(図2)であれば、全く被害がなかったスギ(図1)と同様に健全な成長が期待できました。一方、資材高を超えた主軸が資材の外に引き出されたスギ(図3)は、主軸が資材の噛み合わせ部分に挟まれたまま成長すると樹形異常(図4)になる可能性が高くなります。さらに、スギの樹高に関係なくシカが資材を壊して食害する被害(図5)では、多くのスギが枯れていました。
■単木保護資材の施工地の現状 
本研究ではスギがシカの食害で枯れたり(図5)、正常な成長が期待できなくなる被害(図3、4)を、シカによる「激害」と定義しました。調査した43施工地のスギと資材の状態を整理すると、ほとんど激害の発生しなかった施工地から全滅に近い施工地まで被害の発生率は施工地間で大きく異なりました(図6)。激害の発生率は、施工地の傾斜や標高よりも、施工地周辺に残るシカの痕跡量と関係しました。そのため、植栽前に対象林分周辺のシカ生息数を予測し、資材でスギがどの程度守れるかを検討しておくことが重要です。
■研究資金と課題 
本研究は、交付金プロジェクト*「九州・四国地域の若齢造林地におけるシカ被害対策の高度化」による成果の一部です。
■文献および参照サイト
森林総合研究所(2021)第4期 中長期計画成果40(持続的林業-7)「西日本の若齢造林地におけるシカ被害対策選択のポイント~防鹿柵・単木保護・大苗植栽~」https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/4th-chuukiseika40.html
図表1 249183-1.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p20-21.pdf
カテゴリ シカ

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