林業の現場への外国人労働力受入れにあたっての課題

タイトル 林業の現場への外国人労働力受入れにあたっての課題
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 田中 亘
発行年度 2021
要約 林業の現場では外国人労働力の受入れがほとんど見られません。これは農業などで活用されている外国人技能実習制度が本格的に導入されていないことが大きな理由です。この制度を他産業と同様に活用するには技能検定制度の整備が必要であり、その実現に向けて林業技能向上センターが設立されました。ただし、技能実習制度の本格的な導入には5年程度かかることが分かりました。技能実習制度を前提とした外国人労働力の受入れへの課題として、林業技能向上センターや監理団体等の関係組織の整備拡充と情報発信強化の必要性が挙げられます。また、技能実習制度と国内の林業労働力の確保育成施策との連携も効率的に図る必要があると考えられます。
成果の内容・特徴 ■林業では実績の少ない外国人材の受入れ 
日本国内の生産年齢人口は、少子化により減少し続けており、労働力不足が深刻化しています。それに対して、外国人労働力を導入して不足を補おうとする動きが活発化しています。第一次産業において、農業や漁業では技能実習制度を導入して、多くの外国人労働力が受入れられています。しかし、林業は技能実習制度の1号区分にとどまり、2号への移行対象職種に指定されていません。そのため現行では、林業における技能実習期間は1年間であり、他産業(技能実習2号への移行対象職種)の最長5年間とは大きな開きがあります(表1)。
■技能実習制度を設けるには 
他産業と同様な技能実習制度を導入するためには、実習生の技能習得度を計る技能検定制度の整備が不可欠となっていますが、林業では未整備の状況です。その実現に向けて、全国森林組合連合会を中心とする林業関係諸団体によって林業技能向上センターが2019年に設立されました。今後の技能検定制度の実施に向けて、厚生労働省との事前協議、試行試験の実施といった準備に5年程度かかることが見込まれます。
■先行モデル事業から分かったこと 
愛媛県で実施された外国人技能実習生受入れモデル事業(2017 ~ 2019年度)を調査したところ、受入れ企業では、言葉の面も含めて技術指導面の負担が想定より小さく感じる一方、経済面の負担が大きいことが分かりました(表2)。また、実習期間が短期間(1年間)であるため、技能習得に一定の効果があるものの、出身国の林業への技能移転に至るまで十分な技術を取得している状況ではありませんでした。技能実習生個人の視点からは、日本での生活に一定程度満足していること、実習期間を通じて得られる所得に大きく期待していることがうかがえました(表3)。
■本格的な受入れまでに整えること 
林業における外国人労働力受入れの実績は少ないため、現状で関連情報を入手することは簡単でありません。この問題を解決するために林業技能向上センターが情報を集約し、積極的に発信していくことが求められます。また農業や漁業にならって、実習が適正に行われるように受入れ企業と実習生の指導・監督などを行う監理団体組織を林業関係団体内に設ける是非など、幅広い議論と準備が必要と考えられます。さらに、技能実習制度と、「緑の雇用」を中心とする国内の林業労働力の確保育成施策が連携して、例えば安全衛生講習など基礎的な研修の一部を共同で実施することなどによって、林業現場技能者の育成をより効率的に運用できることが期待されます(図1)。
■研究資金と課題 
本研究は、実施課題*「持続可能な林業経営と木材安定供給体制構築のための対策の提示」による成果です。
■文献
田中亘(2020)林業における外国人労働力の受入れ過程─愛媛県を事例に─.森林総合研究所研究報告.19(4),331-340.
■専門用語
外国人技能実習制度:技能移転を目的として、国内の受入れ企業において外国人が報酬を伴った実習を行う制度。技能実習1号(1年期限)は全職種が対象となるが、同2号(2年期限)と同3号は(2年期限)は技能検定制度を有する一部の職種に限定される。「団体監理型」と「企業単独型」の2タイプがあり、前者が97%(2020年)を占める。「緑の雇用」:2003年度に始まった日本国内における林業労働力の確保育成施策。フォレストワーカー研修では職場における
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図表2 249185-2.png
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研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p24-25.pdf
カテゴリ 経営管理

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