ヤナギ超短伐期栽培の年収量に対する収穫と気象の影響を解明

タイトル ヤナギ超短伐期栽培の年収量に対する収穫と気象の影響を解明
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 原山 尚徳
上村 章
韓 慶民
宇都木 玄
北尾 光俊
佐々木 尚三
丸山 温
発行年度 2021
要約 冷温な地域のバイオマス生産技術として有望視されているヤナギの超短伐期栽培において、収穫回数 の増加や気象条件が木質バイオマス収量に及ぼす影響を明らかにするため、10年にわたる収穫試験 を行いました。統計モデルで解析したところ、1年あたりの収量(年収量)は成長期間中の日照時間 が長い年や、7月の降水量が多い年で高くなることが分かりました。また、毎年収穫をくり返すと10 年間で年収量が半減する一方で、隔年で収穫すると年収量の低下が生じないことが分かりました。本 研究の成果は、ヤナギによる木質バイオマス生産の実用化に向けて、事業性を評価する際の重要な知 見となります。
成果の内容・特徴 ■ヤナギの超短伐期栽培による木質バイオマス生産 
脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの利用拡大が求められるなか、木質バイオマスのエネルギー利用が急速に進んでおり、未利用材、廃材、輸入パーム椰子殻などの木質原料の不足が懸念されています。この解消法の一つとして、木質資源作物の栽培が注目されていますが、日本では実用化されていません。欧米の冷温な地域では、高密度で植栽したヤナギの地上部を2~5年の非常に短い周期で収穫し、再植栽せずに萌芽更新による再生をくり返す、超短伐期栽培による木質バイオマス生産が行われています。この手法では、一般に20~25年の間に6~8回の収穫を行うことができると考えられていますが、海外を含めほとんどの収穫試験は多くても4回程度の収穫を行っただけであり、くり返し収穫する事のストレスが収量に与える影響はよくわかっていませんでした。ヤナギ栽培の日本での実用化に向けて事業性を評価するためには、収量に及ぼす収穫回数の影響を定量的に明らかにする必要があります。そこで、本研究では、北海道下川町で実際にヤナギを栽培し、10年にわたる収穫試験を行いました。
■10年にわたる収穫試験とモデル解析 
ヤナギ収穫試験地にエゾノキヌヤナギとオノエヤナギの計18クローンを植栽し、10年にわたり、毎年または隔年で収穫して収量を計測しました。1年あたりの収量(年収量)はクローン間でばらつきが大きく、年によっても大きく変動しましたが、両樹種ともに毎年収穫をくり返すと年収量が低下する傾向が認められました(図1)。年ごとの年収量の違いを統計モデルで解析したところ、年収量はくり返しの収穫回数だけでなく気象条件の影響も受けており、成長期間中の日照時間が長く、7月の降水量が多い年で年収量が高くなることが分かりました。また、収穫回数が増加すると年収量は減少しますが、隔年収穫では毎年収穫よりも年収量が高くなり、くり返しの収穫による負の影響が軽減されることが分かりました(図2)。このモデルでは、毎年収穫をくり返すと、10回目の収穫時には年収量が初回の半分程度まで減少し(図3A)、10年間の総収量は隔年収穫の4割程度まで減少すると試算されました(図3B)。隔年収穫に比べて毎年収穫で年収量が大きく減少する理由として、短期間で収穫がくり返されるためヤナギの林冠閉鎖が不十分で雑草が繁茂したり、根の成長が制限されたりすることが考えられます。
■ヤナギ栽培の実用化に向けて 
これまでの研究から、冷涼な北海道においても、優良なヤナギクローンを用い適切な施業・管理を行えば、実用化が進んでいる欧米と同等の10乾燥トン/ha・年の収量を得られることがわかっています。本研究によって、毎年収穫によって収量が大幅に低下する恐れがある一方で、隔年に収穫間隔を伸ばせば、高収量が長期間にわたり維持されることが明らかになりました。本研究の成果は、ヤナギ栽培の実用化に向けた事業性の評価に役立つ知見となります。
■研究資金と課題 
本研究は、実施課題*「効率的な木質バイオマスエネルギー利用システムの提示」による成果です。
■文献
Harayama, H. et al. (2020) The effects of weather, harvest frequency, and rotation number on yield of shortrotation coppice willow over 10 years in northern Japan.Biomass and Bioenergy, 142, 105797
図表1 249186-1.png
図表2 249186-2.png
図表3 249186-3.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p26-27.pdf
カテゴリ 乾燥 くり 再生可能エネルギー 雑草 バイオマスエネルギー

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