割れの発生の原因となる木材内部の力を測ることで より良い乾燥方法を探る

タイトル 割れの発生の原因となる木材内部の力を測ることで より良い乾燥方法を探る
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 村野 朋哉
藤本 登留
発行年度 2021
要約 大径材の利用拡大に向けて、大径材から得られる大断面材の適切な乾燥方法を確立することが求めら れます。乾燥中の木材は外側と内側で水分の抜ける速度が異なるため、木材に割れの原因となる力が 発生します。本研究では、乾燥中に木材に生じた力をスキャナーと画像解析法を用いて簡便に測定す る手法を開発しました。大径材から採取した心去り柱材を乾燥し、開発した手法で木材に生じた力を 測定したところ、乾燥温度が高いほど木材に大きな力が発生することが分かりました。この方法を用 いれば、乾燥時に木材内部に発生する力の分布が把握でき、乾燥条件による割れの危険性の違いを簡 便に評価できるので、より適切な乾燥条件を効率的に探索できます。
成果の内容・特徴 ■大径材の利用に向けた乾燥の課題 
大径材からは断面の大きさや木取り方法(心持ち柱材か心去り柱材かなど)が異なる様々な材を採取することができますが、それらを構造用材として利用するためには適切に乾燥する必要があります。例えば、大径材から採取される大断面の心去り柱材について、中径材から採取される心持ち柱材と同じ条件で乾燥すると内部に大きな割れが発生することがわかっています(図1)。大径材の利用を拡大するには、断面の大きさや木取り方法などに合わせて適切な乾燥方法を確立する必要があります。
■乾燥中に木材に生じる力 
木材は果物などと同じように、乾燥して水分が抜けていくにつれて縮んでいきます。しかし、大断面の木材は全体の水分が抜けるのに多くの時間がかかり、内層に比べて外層は水分が速く抜けていくため、乾燥中の木材は水分のバランスが大きく崩れてしまいます。そのため、木材全体が均一に縮むことができず、割れの原因となる力が発生します。
■簡便に木材に生じた力を測る手法の開発 
乾燥中に木材にどのような力が生じたかを測ることで、割れの危険性を知ることができます。木材に生じた力は、木材を分割した際の、分割前後の伸び縮み(解放ひずみ)の大きさから推定することが可能です(図2)。分割後の木材は、圧縮の力から解放されれば伸び、引張の力から解放されれば縮みます。この伸び縮みの測定は、従来の方法では特殊な機器と技術が必要でしたが、一般的なスキャナーと画像解析技術を用いて従来法と同等以上の測定精度を実現する簡便な方法を新たに開発しました。
■乾燥温度が高いほど割れの危険性が高まる 
新たに開発した手法を用いて、異なる温度条件で乾燥させたスギ心去り柱材の乾燥終了時の解放ひずみ分布を測定しました(図3)。その結果、乾燥中の最高温度が高いほど外層と内層の解放ひずみの値の差が大きく、木材に大きな力が生じて割れやすい状態にあることが分かりました。この方法を用いれば、乾燥時に木材内部に発生する力の分布を把握でき、乾燥条件による割れの危険性の違いを簡便に評価できるので、割れが発生しにくい乾燥条件を効率的に探索できます。
■研究資金と課題 
本研究は、実施課題*「大径材及び早生樹を対象とした木材加工技術の開発と高度化」による成果です。
■文献
村野朋哉(他)(2021) 乾燥スケジュールがスギ心去り正角の内部応力に与える影響. 木材学会誌, 67(2), 86-92.
■専門用語
大径材、中径材:大径材は直径が30㎝以上の丸太、中径材は直径が14cm以上、30cm未満の丸太。
心去り柱材、心持ち柱材:柱材のうち、図1のように樹心(髄)が含まれていないものが心去り柱材、含まれているものが心持ち柱材。
図表1 249187-1.png
図表2 249187-2.png
図表3 249187-3.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p28-29.pdf
カテゴリ 加工 乾燥

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