大断面集成材の低コスト化技術の開発 ─川上から川下まで─

タイトル 大断面集成材の低コスト化技術の開発 ─川上から川下まで─
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 宮武 敦
発行年度 2021
要約 「川上」で伐採・搬出された原木丸太を「川中」で製材・乾燥し、得られた厚さ数センチのひき板(ラ ミナ)を重ねて接着した木質材料に構造用集成材があります。このうち大断面集成材は、「川下」で 推進されている中大規模建築物の木造化においてその柱や梁としての利用拡大が期待されています。 充実期を迎えた国産材の需要拡大に向け、構造用集成材の利用を促進するためには、伐採搬出、製材・ 乾燥、集成材製造にわたるコスト削減と製品の安定供給が求められます。本研究では、原木の低コス ト伐出技術や一般的に流通する間柱サイズのラミナの使用、弱減圧乾燥法による乾燥、接着剤の変更 等による生産コスト削減に資する技術を開発しました。
成果の内容・特徴 ■原木とラミナを安定供給するには?
ラミナの原料となる原木を安定的かつ大量に製材工場へ供給することを目的に、枝葉がついた原木(全木材)を一度に大量に掴んで集材する車両系林業機械(ゴムクローラ式クラムバンクスキッダ)を開発しました。そして、この機械を用いた作業方法や土場開設条件を明らかにし、従来方式より生産コストを7%削減できる全木集材システムを構築しました(図1)。大断面集成材に使われるラミナは産地や製品の寸法に合わせて注文生産されることが多く、安定供給に課題があります。そこで、市場で一般に流通している間柱を大断面集成材用ラミナに転用することを検討しました。スギの間柱を効率的に生産するための原木の径級別の木取りや歩止りを明らかにし、集成材の生産規模に応じた必要原木量を試算しました(図2左)。そして、秋田県を対象に開発した原木供給シミュレーションプログラムを用いて、スキッダによる伐出作業可能な林分の抽出と間柱生産適木の供給可能量やその期間を計算したところ、県内のモデル地域において、例えば、構造用集成材を年間1万2千m3供給しようとする場合に必要となる年間約6万m3の原木を30年以上継続して安定供給できることがわかりました。(図2右)。
■間柱の乾燥と接着を効率化するには? 
通常、間柱は蒸気を熱源とした蒸気加熱式乾燥装置を用いて乾燥されています。本研究では、蒸気加熱式乾燥装置に減圧機能を付加した弱減圧乾燥装置(図3)を用いて、スギの間柱を短時間で乾燥する技術を開発し、乾燥コストを3 ~ 4割削減できました。 間柱の接着に従来の接着剤より短時間で硬化する水性高分子イソシアネート系樹脂(以下API)を用いることで接着剤コストを約7割削減し、大断面集成材の生産性を向上させることができました。このAPIと間柱を用いて製造した大断面集成材(図4)について、曲げ、圧縮、引張、せん断の強度試験と接合部の強度試験を行った結果、構造材として十分な性能があることが確認できました。
■新技術はトータルで生産コストをどれだけ削減できるか? 
新技術導入による生産コスト削減効果を図5に示します。間柱の流通価格は通常のラミナより高く、生産コストは約3%上昇します。しかし、スキッダによる全木集材と間柱の弱減圧乾燥法の導入で約5%削減でき、加えてAPIへの接着剤変更によりトータルで現状から約11%削減できました。 本稿で紹介した成果の一部は、森林総合研究所のホームページで公開されています(https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/4th-chuukiseika39.html)。
■研究資金と課題 
本研究は、農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」における「原材料の安定供給による構造用集成材の低コスト化事業の開発」の成果です。
図表1 249188-1.png
図表2 249188-2.png
図表3 249188-3.png
図表4 249188-4.png
図表5 249188-5.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p30-31.pdf
カテゴリ 乾燥 経営管理 コスト 需要拡大 新技術導入 低コスト

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