タイトル | 水をはじく紙の簡単な作り方:薬品の蒸気を用いてコーティング |
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担当機関 | (国)森林総合研究所 |
研究期間 | ---- |
研究担当者 |
戸川 英二 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 紙はリサイクルされ、最後は自然環境で分解されるため地球に優しい材料です。この紙は、木材の主 成分であるセルロースと呼ばれる繊維状の多糖がからみ合い、こう着してできています。そのため、 紙は水を吸収しやすく、また吸水後は繊維がほぐれ破れてしまいます。この水に弱いという性質を改 良できれば、紙の用途は大きく広がります。今回、特殊な薬品を加熱して蒸気にし、その蒸気でコー ティングすることによって紙に水をはじく性能を付与する方法を開発しました。この方法なら、水を はじく紙をごく少量の薬品で簡単に作れるので、今後、さらなる応用開発が期待されます。 |
成果の内容・特徴 | ■紙は自然循環する木材セルロースからできている 新聞や本・包装紙・トイレットペーパーなど、紙は身近に利用されている素材です。また、紙はリサイクルされ、最後は自然環境で生分解されるため地球にとても優しい素材です。この紙は、木材の主成分であるセルロースと呼ばれる繊維状の高分子多糖をからみ合わせ、こう着させて作られます。したがって、多糖からできている紙はとても水を吸収しやすく、また吸水するとからみ合っている繊維がほぐれて破れやすくなります。この欠点のために、多くの製品は紙からプラスチックへと変わっていきました。ところが、ほとんどのプラスチックは自然界で生分解されないため、今日のマイクロプラスチック問題を引き起こしました。紙の水に弱い性質を改良することができたら、これまでとは逆にプラスチックが紙に回帰して、地球環境への負担を減らすことができます。 ■紙を薬品の蒸気でコーティングして撥水性に これまで、紙に水をはじく性質、つまり撥水性を持たせるために利用されてきたおもな方法は、紙にプラスチックフィルムを貼り合わせることでした。しかし、この方法ではプラスチック使用量を減らすことはできません。そこで、今回検討したのが水をはじく構造を持つ特殊な薬品の蒸気で紙をコーティングする方法です。この処理では、ごく少量の薬品でも紙にある小さな穴の奥まで効率よく浸透していきます。このコーティング方法は非常に簡便で、紙と薬品を密閉容器内に入れて、所定の温度(120℃)に加熱し、一定時間置くだけです。しかもこのプロセスは、水も触媒も必要なく、廃液を出さないクリーンな方法です。コーティングの前後で、紙の質感や強度はほとんど変化せず、また、コーティングされた紙は市販の酵素(セルラーゼ)で分解されます。これまでのところ、紙と同じくセルロースからできている綿織物やセロハンにもこの方法が適用できることを確認しています。 ■今後の展望 水をはじくようになった紙やセルロース製品が、プラスチック製品に取って代われるようになれば、地球環境の保全に役立つとともに、資源の循環利用による持続可能な社会の構築に寄与することでしょう。さらには、この方法を次世代素材といわれるセルロースナノファイバーへ適用できれば、いろいろな材料に混ぜ合わせて、その材料の性能を改善することも可能になります。 ■研究資金と課題 本研究成果の一部は、JSPS科研費 (JP17K07883)「ゾル-ゲル反応を利用したシリカコーティングによるセルロースのガラス化」 の助成を受けたものです。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p32-33.pdf |
カテゴリ | くり |