タイトル | 化粧品などの素材として活用できる改質リグニン微粒子を開発 |
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担当機関 | (国)森林総合研究所 |
研究期間 | ---- |
研究担当者 |
山田 竜彦 髙田 依里 髙橋 史帆 大橋 康典 宮内 謙一 二村 晴美 三村 大輔 焼田 悠介 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 改質リグニンはスギ由来の新素材で、熱に強く、加工しやすく、環境にやさしいという特徴を持ち、 様々な材料への展開が期待されています。森林総研では改質リグニンを中山間地域で製造するシステ ムの開発に成功し、普及のための検討を進めています。その中で、改質リグニンの互いに集まって塊 になりやすいという性質(凝集性)をコントロールすることに成功し、粒子径が小さく真球に近い改 質リグニン微粒子の製造法を開発しました。製造した改質リグニン微粒子は、環境中で分解されて蓄 積しないので、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題を生じない環境適合型のバイオ微粒子とし て利用できる可能性が高く、化粧品などでの活用が期待されています。 |
成果の内容・特徴 | ■スギ由来の環境にやさしい素材「改質リグニン」 改質リグニンはスギ木材中に約3割含まれるスギリグニンを原料とした、熱に強く、加工しやすい天然系バイオ素材で、廃棄されたとしても環境中に蓄積されることもないため、海洋プラスチック汚染問題などを生じない素材としての可能性が注目されています。海洋プラスチック汚染は、マイクロプラスチックと呼ばれるプラスチックが微細化したものが海洋中にとどまることによる海洋汚染です。私達が普段使っている化粧品などに含まれるスクラブ剤などの微細なプラスチックも汚染の原因物質として問題視されており、天然素材への転換が求められています。化粧品においては、均一な粒径の微粒子の利用価値が高く、改質リグニンの微粒子が製造できれば理想的と考えられていました。しかし、改質リグニンは互いに集まって大きな塊を形成しやすい特徴を持つため、機械的に粉砕しても均一な微粒子を製造することはできません。そこで改質リグニンの製造プロセスの改良を行いました。 ■改質リグニンの微粒子化に成功 通常の改質リグニンの製造プロセスでは、ポリエチレングリコール(PEG)という薬液の中でスギ木材を酸で分解して、スギ中のリグニンという成分を取り出すと同時にPEGを結合させる処理を行います。分解して生じた混合物は、薄いアルカリ性水溶液を加えて希釈し、濾過により固形分をパルプとして取りのぞいた後、液体部分に酸を加えることで沈殿を生成させます。その沈殿を集めたのが改質リグニンです。改質リグニンは凝集しやすく、これまで小さな粒子を作るのがとても困難でしたが、沈殿生成工程に強制薄膜式マイクロリアクターを利用するのが有効であることを見出しました。強制薄膜式マイクロリアクターは、回転するディスク間で2液を混合して強制的に薄膜を形成し、2成分を分子レベルで混合する装置です。粒子生成の場所がディスク内であり、塩などが発生しても目詰まりしにくいという特徴が改質リグニン微粒子の製造に適していました。改質リグニンの酸沈殿工程にこの装置を使用し、得られた粒子を洗浄および加熱攪拌することで、図3に示すように、粒子径が小さく、真球に近い改質リグニン微粒子の製造を連続的に行うことができました。 開発された改質リグニン微粒子を化粧品として利用する場合、スクラブ剤、紫外線吸収剤、顔料、光拡散剤などとしての活用が期待されています。また、電子部材などハイテク分野での活用も期待されています。 ■研究資金と課題 本研究は、実施課題*「リグニン利用のための木質バイオマスの分離・分析・高付加価値化技術の開発」による成果です。 ■文献 山田竜彦(他)グリコールリグニン微粒子およびその製造方法.特願2020-166996 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p34-35.pdf |
カテゴリ | 加工 高付加価値 中山間地域 |