土を使わずスギを発根させる「エアざし」技術を開発

タイトル 土を使わずスギを発根させる「エアざし」技術を開発
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 栗田 学
久保田 正裕
大塚 次郎
倉本 哲嗣
福山 友博
渡辺 敦史
発行年度 2021
要約 これまでのスギさし木コンテナ苗生産では、さし木に用いる枝(さし穂)を土にさしつけて、発根後 にコンテナへ移植して生産するという手法が一般的でしたが、さしつけ用の土の準備や発根した穂の 掘取り作業などは重労働なことや、土があるために発根状況が確認できず、移植適期の判断が難しい などの課題がありました。そこで、より簡単なスギさし木コンテナ苗生産手法の確立を目指し、さし 穂全体を空気中に露出したまま立て、一定の条件で定期的に霧状にした水をかけることにより、安定 して発根させることができる技術を開発しました。この技術の活用により、さしつけ準備や掘り取り の軽作業化など、さし木コンテナ苗生産の効率化が期待できます。
成果の内容・特徴 ■スギさし木コンテナ苗生産の課題 
一般的なスギさし木コンテナ苗生産は、さし穂を苗畑あるいは土を入れた育苗箱にさしつけて一定期間管理し、十分に発根した頃を見計らって、さし穂を掘り取りコンテナへ移植するという工程で行われます。このため、除草や燻蒸等の苗畑の維持管理や、育苗箱への土の入れ替えや土が入った育苗箱の移動等、土を扱うことによる重労働が必要でした。また、発根までに要する期間や発根する穂の割合などはスギの品種によって異なるとともに、さしつけ後の環境条件によっても発根状況が変化することが知られています。そのため、土があるために発根が確認できない通常のさし木では、さし穂のコンテナへの移植の適期(確実に発根し、かつコンテナへの移植時に根の切り戻し作業が必要とならない適度な発根状態となった時期)を判断するのが難しいといった課題がありました。このようなことから、スギさし木コンテナ苗生産を加速するためには、品種特性の違いに影響されず、かつ労働生産性の向上を図れる、新たなさし木発根技術が求められていました。
■「エアざし」の開発 
近年、農作物の生産において、植物工場を利用した生産技術の実用化が進められています。このような植物工場的な生産技術を活用した、スギさし木コンテナ苗の安定的かつ効率的な生産技術の開発に向けた研究に取り組み、スギのさし穂を土にさしつけずに空気中に露出したまま静置した状態で発根する現象を確認しました(図1)。その後、空気中での安定的な発根を実現するための環境条件の探索を進めました。様々な環境条件下で試験を行ったところ、さし穂全体に霧状の水をかけるミスト散水を定期的に行うこと等の一定の条件を整えることにより、スギのさし穂から安定的に発根させることができるようになりました(図2)。本手法を通称「エアざし」と呼んでおり、令和2年5月27日付けで特許を取得しました(特許番号:第6709449号)。エアざしでは土が不要なため、さしつけ用の土の準備等が不要となり、重労働の軽減につながります。また、品種や環境条件の違いによる発根時期の違いについても、目視で発根の状況をリアルタイムで確認できるため、発根した根の状態をみて適期に移植することが可能になりました。この技術を活用することで、さし木コンテナ苗生産の効率化が期待できます。
■研究資金と課題 
本研究は、交付金プロジェクト*「適正かつ早期の普及に必要な技術の開発」による成果です。また本研究の一部は、農研機構生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」の支援を受けて行いました。
■文献
栗田学(他)(2020) 用土を用いない新たなスギ挿し木発根手法の検討 ―スギ挿し木苗の植物工場的生産技術の開発に向けて―. 九州森林研究, 73, 57-61
図表1 249195-1.png
図表2 249195-2.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p44-45.pdf
カテゴリ 育苗 挿し木 除草 品種

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