融和方策による放流魚生産システムを含む新たなサケ資源管理手法の提案

タイトル 融和方策による放流魚生産システムを含む新たなサケ資源管理手法の提案
担当機関 (国研) 水産研究・教育機構 水産資源研究所 さけます部門
研究期間 2016~2020
研究担当者 森田健太郎
発行年度 2021
要約 ふ化放流によるサケ放流魚の家魚化が指摘されていることから、融和方策に基づく新たなサケ資源管理手法を検討した。現在の日本のサケ資源はPNI=0.1と家魚化リスクが高い状態にあることを示し、その改善策として不用親魚の自然産卵の促進、放流魚・野生魚別の沿岸漁獲圧抑制、上流域における自然産卵環境整備をサケ資源管理に組み込むことを提案し、その実施によりPNIが0.5に改善されることを示した。
背景・ねらい 日本のサケ資源管理は「産卵親魚量一定方策」を基本とし、ふ化放流事業が重視されている。一方、ふ化放流により放流魚に「家魚化」が生じ、野外での適応度低下や生残率減少等が起こることで、結果として資源減少が生じているとの懸念が指摘されている(図1)。そこで、融和方策に基づき、放流魚と野生魚双方を利用した新たなサケ資源管理手法について検討した。
成果の内容・特徴 現在の日本のサケ資源管理における家魚化リスクを評価するため、北海道を例に、融和方策でその指標となるPNIを計算した(計算方法等は図2を参照)。現在の資源管理では、年間10億尾のサケ稚魚を春に河川へ放流し、秋には沿岸に回帰したサケ親魚(放流魚・野生魚)の約9割を漁獲している。また河川遡上した放流魚・野生魚の親魚もそれぞれ約9割が捕獲され、その約4割をふ化放流に利用し、残りは不用親魚として売却されている。そのため、上流域まで遡上し自然産卵できるのは放流魚・野生魚ともに遡上親魚の1割程度である。ここからPNIを計算すると0.1となり、現状では家魚化リスクが非常に高いと評価された(図3左)。次に日本のサケ資源管理においてPNIを改善するために必要な事項を検討し、1)河川での親魚捕獲は必要数に留め残りは上流域で自然産卵させる、2)沿岸漁獲率を放流魚で高め野生魚で下げる、3)上流域の未利用産卵場を整備し自然産卵できる環境を整備する、の3つを組み込むことを提案した。このうち2)ではサケ稚魚を海中放流することで、回帰した放流魚の沿岸滞泳期間が長くなり、その結果定置網で放流魚が漁獲されやすくなることを想定している。また沿岸漁獲率を全体的に下げることで、放流魚と比べ野生魚が河川遡上しやすくなり、その結果野生魚の沿岸漁獲率は低下すると考えられる。最後にこの提案内容を実施することで、実際にPNIが改善されるのかを検討した。新たなサケ資源管理手法では、稚魚放流数は10億尾で同じだがその全てを海中放流すること、放流魚の沿岸漁獲率を95%まで高め野生魚のそれを67%まで下げること、河川遡上親魚の捕獲数を種卵確保に必要な数に留め(ここでは捕獲率65%)、不用親魚は売却せずに上流域で自然産卵させること等が示されている。ここからPNIを計算すると0.5となり、現状(0.1)から大きく改善することが分かった(図3右)。
成果の活用面・留意点 今回提案した新たなサケ資源管理手法の実践により、日本のサケ放流魚の家魚化リスクが軽減されるとともに、野外における適応度や生残率の改善が見込まれ、将来的なサケ回帰資源の回復に資することが期待される。
図表1 249202-1.png
図表2 249202-2.png
図表3 249202-3.png
研究内容 https://fra-seika.fra.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=11071&YEAR=2021
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