冬期播種による小麦の高品質・持続的安定生産技術の確立

課題名 冬期播種による小麦の高品質・持続的安定生産技術の確立
研究機関名 岩手県農業研究センター
研究分担 野菜畑作
研究期間 継H16~18
年度 2004
摘要 目的:麦の本作化に伴い、小麦の作付け面積が増加する中、今後も生産拡大を図るためには実需者ニーズを意識した品質の向上、安定的な生産がますます必要となっている。実需者からは、「ナンブコムギ」を中心に子実蛋白含量の高位安定化が求められているが、実際には実需者の要望する値より低いものが多く、産地や年次によるバラツキが大きいのが現状である。一方、消費者からは、国産麦は農薬をあまり使用していないイメージから、安心できるとの声が聞かれるが、積極的・計画的に減農薬(無農薬)栽培を実施している例は少ない。また、生産現場では、萎縮病・縞萎縮病等の土壌伝染性ウイルス病害の汚染圃場が県北部のみならず、県南部でも増加しており、生産が不安定になっている地域が多い。当研究センターでは、秋播性小麦の冬期播種栽培技術を開発し、小麦の播種と水稲等の収穫作業との競合回避や作期分散、管理・防除作業の省略、子実の高蛋白化を可能にした。また、単年度ではあるが、土壌伝染性ウイルス病害である萎縮病・縞萎縮病の多発圃場における発病回避が確認されており、雑草発生についても初発の遅延や発生量の抑制も示唆されている。そこで、冬期播種栽培の利用により、土壌条件によらない高蛋白子実の生産や用途別に蛋白含量を制御できる技術の確立を図る。また、高品質・安定生産を前提とした農薬の散布回数削減技術について検討するとともに、土壌伝染性ウイルス病害である萎縮病・縞萎縮病の汚染圃場における発生軽減効果について検討し、高品質で持続的に安定生産が可能な技術を確立する。
到達目標:ア 用途に応じた子実蛋白含量の制御ができるようになる。
イ 最低限必要な農薬散布回数が明らかとなり、安定生産可能な農薬散布回数削減技術が確立される。
ウ 萎縮病・縞萎縮病等、土壌伝染性ウイルス病害の発生軽減効果が明らかになり、汚染地域における安定生産の一助となる。
予定成果(初年目):・冬期播種による子実蛋白含量の土壌条件別傾向の把握。
・雑草や病害の農薬散布回数別の被害状況の把握。
・土壌伝染性ウイルス病害圃場汚染程度別の病害発生程度の把握。
期待効果:冬期播種利用により高品質小麦を持続的に安定生産することが可能となり、小麦の需要拡大が図られる。
成果:(1)冬期播種した「ナンブコムギ」の子実原粒の蛋白含量は、秋播き慣行のものと比較して同等~2%程度高い傾向があり、穂数が少ないほど蛋白含量が高くなる傾向がみられた。子実収量は、播種量約17kg/10aで秋播き慣行の9割、種量約19kg/10aで秋播き慣行を上回った。(岩手県農業研究センター;2001、2002年度東北農業試験研究成績(冬作物))
(2)冬期播種をした場合の加工特性を秋播き慣行と比較すると、「ナンブコムギ」では製めん性・製パン性とも秋播き慣行とほぼ同等であり、「ゆきちから」では製パン性が向上した。原粒の子実蛋白含量は、「ナンブコムギ」で0.7%、「ゆきちから」で1.1%慣行秋播きよりも高かった。(岩手県農業研究センター;2002年度試験成績書)
(3)冬期播種では根雪終了後の出芽となるため、越冬前の雪腐病防除が不要である。(岩手県農業研究センター;2001年度試験研究成果)
(4)越冬後の小麦に「土入れ」することにより、紅色雪腐病の被害茎葉や黄化下位葉のうどんこ病斑が被覆され、伝染源が遮断されることから、赤かび病やうどんこ病の発生が抑制される。(東北農業試験場;1995年度試験研究成果情報)
(5)コムギ縞萎縮病では、日平均気温が5~15℃の期間に感染が起こると考えられる(大藤ら、1997年)。オオムギ縞萎縮病では10~15℃が病徴発現に最適で、5℃以下及び20℃以上では発病しない。播種後の温度低下が遅れると、感染期が長くなり感染の機会が増え、宿主の生育量が増すことから翌春の発病が激しくなる(鋳方ら、1940年;草場ら、1971年;祝迫ら、1985年;大藤ら、1997年)。耕種的防除法としては晩播が有効である(上原ら、1960年;鋳方、1940年)。
(6)小麦ウイルス病の感染の適温は10~16℃で、20℃以上及び5℃以下では感染しない。春先に病徴が現れるのは10~15℃で、5℃でもわずかに発病する。20℃以上になると病徴はマスクされる。平均気温が13℃を越えると新葉での症状は認められなくなるが、茎立ちの遅れ、茎数の減少となって障害が残る。また、播種後40日間が高温で雨の多い場合は多発する。発病が認められ減収が予想される場合は、減数分裂期~出穂期の後期追肥を実施する。(岩手農試県北分場・環境部・技術部;1991年度指導上の参考事項)
研究対象 小麦
戦略 土地利用型農業
専門 栽培生理
部門
カテゴリ 病害虫 萎縮病 うどんこ病 加工特性 小麦 栽培技術 雑草 需要拡大 生産拡大 農薬 播種 防除

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