課題名 | 家畜の放牧を利用した緩衝地帯などの整備と獣害(イノシシ、シカ)防止技術の確立 |
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研究機関名 |
京都府畜産技術センター |
研究分担 |
碇牧・管理部 |
研究期間 | 新H18~20 |
年度 | 2005 |
摘要 | 1.背景・目的:中山間地域では、高齢化や労働力不足により耕作や森林管理作業等が放棄され、山や竹林の荒廃が進んでいる。また、竹林は隣接地へ年々拡大し、山林の竹林化が問題となっている。それに加え、イノシシ等による農林産物の食害が人の作業意欲を低下させ、荒廃農林地の増加に拍車をかけている。一方、肉用繁殖牛は放牧での低コスト化が見直され、近年増加している。その中で、放牧地周辺にイノシシ等が寄りつかなくなり、獣害が減った事例がみられる。また、荒廃した竹林も年々拡大し森林を駆逐しており、多面的機能を持つことで見直されている里山の維持の観点からも、荒廃竹林の解消と獣害対策は緊急に対策を講じる必要がある。しかし、放牧の有効利用の観点での試験は、遊休農地や広葉樹林帯及びスキー場やゴルフ場等の廃レジャー施設用地等における放牧の例は各地で報告されているが、竹林拡大防止を目的とした荒廃竹林を含むエリア内での放牧利用技術及び緩衝地帯の条件を検討した鳥獣害対策の研究報告は見あたらない。また、タケノコ及び野草は牛の嗜好性がよいが、伐採竹林及び周辺の野草が生えている農林地における適切な放牧方法は確立されておらず、牛の栄養管理や放牧期間の決定方法等、集落での牛の活用を目標とした放牧マニュアルの作成が必要である。そこで、京都府内における野生獣による被害の発生が顕著な地域において、放牧牛を活用した野生獣害防止効果及び竹林の拡大防止効果について、農業・林業の面から調査検討する。 2.既往の関連成果: (1) 荒廃農地などに放牧した場合、周辺農地での獣害が減少したと感想を述べる事例が見受けられる。(京都畜技セ碇牧 未発表 2002~2005) (2) 株元から切り取った生タケノコを畜舎内で黒毛和種繁殖雌牛に給与したところ、200cm程度の高さに育ったタケノコでも、食べにくくなったタケ部分を割るなどの補助を加えれば10kgを約1時間半で食べ尽くした。(京都畜技セ碇牧 2005) (3) 30~150cmのタケノコを輪切りにし30kg給与したところ、約2時間で食べ尽くした。(京都畜技セ碇牧 2005) (4) 株元から切り取った生タケノコを再度土中に埋めて疑似竹林(に生えているタケノコ)を作り、黒毛和種繁殖雌牛を放したところ、牛は丈の低いタケではなく、1m程度の高さのものから食べかけた。(京都畜技セ碇牧 2005) (5) タケノコの水分は90%程度であり、長さ100~150cmのタケノコでは中部、下部の方が上部よりも水分が高い傾向にあった。(京都畜技セ碇牧 2005) (6) タケを超微粉末にするタケ粉砕機が開発され、成竹の飼料化が研究されている。(静岡畜試 2004) (7) チップ化したモウソウダケは193℃、20分蒸煮後解繊処理したものを肥育牛に給与したところ、増体肉質への影響はなかった。(熊本畜試阿蘇支場 1987) 3.期待される成果: (1) 荒廃竹林及びその周辺を含めた農林地での放牧により、山裾に連なる荒廃農地・不耕作水田・竹林をつないだ放牧帯を形成できる。 (2) これらは、里山と農地の中間地帯として野生獣との緩衝帯となり、野生獣害防止の新たな展開が期待できる。 (3) この放牧技術は自己所有地が前提でないので、新たに肉用牛経営を開始する個人やグループの出現と省力飼養面から肉用牛農家の規模拡大を行う契機となる。 (4) タケノコ等が飼料として利用できる荒廃竹林及びその周辺地域への放牧が可能になり、経営内の飼料自給率向上が期待できる。 (5) 竹林の拡大防止や、境界農地を優良に保全することにより、荒廃竹林や荒廃農地・不耕作水田を餌場とするイノシシ等を里山地域から排除することが期待できる。 |
研究対象 | 肉用牛 |
専門 | 飼養管理 |
部門 | 牛 |
カテゴリ | 規模拡大 経営管理 飼育技術 シカ 水田 たけのこ 中山間地域 鳥獣害 低コスト 肉牛 繁殖性改善 放牧技術 |