課題名 | 有機農産物生産技術の確立(ふくしま型有機栽培技術開発事業) |
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研究機関名 |
福島県農業総合センター |
研究分担 |
生産環境部 作物園芸部 企画経営部 会津地域研究所 浜地域研究所 |
研究期間 | 継H17-20 |
年度 | 2007 |
摘要 | 目的:水稲および野菜の有機農作物等の生産技術を新たに確立し、「ふくしま型有機農産物」の生振興を図る。、結果:(1)(1)畑条件下における自家製ぼかし肥料の窒素無機化率は、米ぬか+屑大豆、米ぬか+ナタネ粕+屑大豆、米ぬか+ナタネ粕+ソバふすまでは50~60%程度、米ぬか+ソバふすまでは35%程度であった。米ぬか+ナタネ粕+魚粕の自家製ぼかし肥料を利用して、窒素3g/箱施肥、乾籾60g/箱播種、42日間育苗で市販有機培土と同等の4葉苗を得ることができた。(2)ナタネ粕液肥は、パイプハウスで栽培したトマトとキュウリに対する追肥に有効であった。カボチャ、キュウリ、トマト、イネの苗に対してナタネ粕液肥の20倍液を頭上灌水により追肥したところ、キュウリとイネの苗に対して統計的に有意な効果が認められた。、(2)(1)水稲有機栽培術の検証では、ナタネ粕及びぼかし肥料を利用した自作培土の苗は本田の生育、収量が市販の有機JAS培土の苗並であった。また、有機物資材の雑草防除効果は屑大豆100kg/10a+ナタネ油かす100kg/10aが最も高かったが、玄米タンパク質含量が高く、食味値が低下した。(2)水稲の育苗技術では、自作培土により4葉苗の育苗ができた。自作培土は白カビが発生し、床土の吸水が不良になることがあるが、播種当日の土入れで吸水不良を回避できた。育苗時の追肥は有機アグレット666やナタネ粕ぼかしが利用可能であった。(3)雑草の制御技術では、米糠散布後の水田土壌Ehの低下速度と水温との関係について検討し、作物園芸部の水田水温条件下では、土壌Ehの低下速度は年次監査が小さいことを明らかにした。また、雑草防除に有効なナタネ粕の散布形態は、粉状、ペレット、混濁液であった。(4)冬期湛水を3年継続した結果、コナギ、クログワイ等特定の雑草のみが増加する傾向がみられた。(5)レンゲを利用した水稲栽培技術では、レンゲを過剰に鋤込んだ場合には、中干し期間を長くすることで、収量、品質が安定した。(6)主要病害虫防除技術の開発では、あぜ波シートを畦畔際に設置することで、イネミズゾウムシ成虫の水田内への進入を抑制できた。(7)水稲の現地事例の技術解析では、有機栽培ほ場の雑草の埋土種子量を調査した結果、埋土種子量が多いほ場では、総じて残草も多かった。(8)水稲有機栽培のプール育苗では、育苗期間中に生育停滞をおこすことがあるため、追肥に油かすぼかし(自作肥料)1~2g/箱と有機アグレット特号(市販肥料)1.5g/箱を施用し効果を検討した。試験の結果、両肥料とも追肥12日後には草丈15cm、移植時(19日後)には4葉以上になり、目標草丈・葉齢に達した。追肥後の肥効は、苗の窒素濃度推移から両肥料とも追肥6日後には吸収されており、自作肥料は市販肥料に比べて即効的に効くことがわかった。(9)ばか苗病防除に、温湯浸漬処理と生物農薬を併用することで、防除効果が向上した。(10)いもち病対策のため、疎植栽培をした場合、初期の伝染源量を下げる効果は認められるが、7月下旬以降になるとイネの感受性が高く維持され、葉いもちが急激に進展した。(11)あぜ波シートを水田内の畦畔際に設置することにより、イネミズゾウムシ成虫の水田内部への侵入を抑制することが可能であった。あぜ波シートの水面からの高さが高いほど、イネミズゾウムシ成虫の水田内侵入抑制効果が高くなった。、(3)(1)アブラムシの防除法として防虫ネット被覆とバンカー法を組み合わせた夏秋キュウリの有機栽培において、7月まではアブラムシの発生は抑制したが、アブラムシの発生後はバンカー法でのアブラムシ防除は困難であった。(2)防虫ネット被覆下での有機栽培条件において、褐斑病に耐病性の品種として「Vサマー」「ステータスIII」を選定した。両品種ともうどんこ病にも耐病性を有し、標準品種の「金星114」との収量差は少なかった。(3)現地のキュウリ有機栽培において、昨年同様、耐病性品種の利用や作型分散の有効性がみられた。土着天敵の発生は、年次やほ場の移動、近隣の作付状況など周辺環境の影響を受けるものと考えられた。各生産者とも輪作を行っており、施肥の合理化を考慮して作付していた。(4)トマト有機栽培では、ハウスの開口部を防虫ネット等で覆うため、通風が悪くなり灰色かび病等の病害が発生しやすくなる。そこで、平成18年度には、小型送風機利用による株間送風法による病害抑制技術の開発に取り組み、19年度は送風機の設置場所(ハウス内、外)及び現地の有機栽培モデル事業実証圃におけるミニトマトの斑点病に対する効果を検討した。送風機の設置場所は、ハウス内またはハウス外でもトマト灰色かび病の抑制効果が見られた。また、ミニトマトの斑点病に対しては、ダフトチューブの設置付近は抑制効果が見られるが上位葉では判然としなかった。(5)有機トマトの4年目圃場で、発酵鶏糞利用による穴肥および溝肥の効果的な追肥法を検討した。これら追肥法では、慣行の液肥追肥と同レベルの収量が得られるものの、無追肥においても収量レベルが高かったためその効果は判然としなかった。(6)自作育苗床土の作成では、発酵熱を利用して高温処理する方法を検討した。培土の配合では、有機栽培畑土100L、堆肥60L、米糠21kg、バイオ1kgを使用し、それを無加温パイプハウス内に山積みにし稲わら等で囲い保温した。発熱温度は、上部や中央部では50℃以上になるので2~3日おきに切り返しを行うことにより培土全体を高温にさらすことができた。(7)相双地方の秋冬ダイコンは8月下旬~9月1半旬に播種されているが、無防除ではキスジノミハムシやタネバエによる根部被害が問題となるため、遅まきマルチ栽培による虫害軽減効果を検討した。マルチ栽培では9月中旬播種が可能となり、害虫による根部被害を軽減することができた。また、秋冬キャベツ栽培、では、不織布のべたがけによりアオムシの被害を大幅に軽減することができた。(8)有機春まきキャベツ栽培では、黒腐病や縁腐病等の病害発生が問題となるため、播種時期や品種による軽減効果を検討した。病害発生は、4月中旬以降の播種では多発し、3月下旬頃の播種では少なかった。また、品種では、YR天空およびエコーは彩里よりも病害発生が少なかった。、(4)有機農産物の実需者、市場関係者の調査を実施した。業務用をターゲットとした場合、生産者と実需者の直接取引きは課題が多く、流通業者(市場や仲卸)なしでの取引きは困難であるとの指摘がなされた。その原因は、実需者が求める(有機栽培)青果物がない場合の代替案が提案ができないことによる。 |
カテゴリ | 有機農産物 病害虫 肥料 有機栽培 育苗 いもち病 うどんこ病 害虫 かぼちゃ きゅうり 栽培技術 栽培条件 雑草 水田 水稲 施肥 そば だいこん 大豆 耐病性品種 土着天敵 トマト 鶏 なたね 農薬 播種 病害虫防除 品種 防除 ミニトマト 良食味 輪作 れんげ |