課題名 | (1)農業生物遺伝資源の充実と活用の強化 |
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課題番号 | 2012020452 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
友岡 憲彦 奥泉 久人 江花 薫子 内藤 健 土門 英司 西川 智太郎 青木 孝之 佐藤 豊三 澤田 宏之 永井 利郎 一木 珠樹 竹谷 勝 新野 孝男 小瀬川 英一 廣川 昌彦 福井 邦明 山本 伸一 土師 岳 山ノ内 宏昭 武弓 利雄 清水 明美 西村 宜之 |
協力分担関係 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 (独)種苗管理センター (独)家畜改良センター (社)農林水産・食品産業技術振興協会 (独)農業環境技術研究所 (独)国際農林水産研究センター 熊本県農業研究センター 長崎県果樹試験場 国立大学法人島根大学 タイ・カセサート大学 |
研究期間 | -4 |
年度 | 2012 |
摘要 | 1.植物遺伝資源、動物遺伝資源、微生物遺伝資源およびDNAバンクの各分野で、遺伝資源の探索、収集、分類、同定、特性評価、保存、増殖及び遺伝資源とその情報の提供を実施し、我が国の農業研究や育種に必要なアグリバイオ研究基盤の整備を進めた。 2.ジーンバンク保存のイネ遺伝資源を高度化するために、ゲノムワイドに分布するDNA情報として768座のSNP解析を継続した。24年度は中国、ネパール、インド、スリランカを中心に配布可能な2,500系統を解析し、SNPデータを付与するとともに系統関係を明らかにした。 3.ジーンバンク保存のダイズ遺伝資源を高度化するために、1粒由来栽培ダイズ約1,300系統、野生ダイズ約300系統を作成し、ゲノムワイドDNA情報として191座のSNP多型情報を付与した。さらに、栽培に基づく特性情報を加味して、日本のダイズコアコレクション96系統、世界のダイズコアコレクション96系統を選抜し、種子増殖量が十分な系統を2012年版セットとして配布開始した。 4.アマランサス遺伝資源の高度化を目的として、デンプン合成酵素遺伝子の発現解析を行った。各遺伝子は種子発達過程において、(1)中期および中後期に発現(GBSSI)、(2)継続的に発現(SSSI,SSSII,SBE)、の2通りの発現様式を示した。また貯蔵器官および非貯蔵器官において共に発現し、デンプン合成は貯蔵器官と非貯蔵器官で同じメカニズムを共有していることを明らかにした。 5.微生物遺伝資源の分類同定に関するバーコードDNA塩基配列情報の網羅的整備として、糸状菌についてはrDNA ITS領域を、細菌については16S rDNA等を計4,418点について解析し、決定した配列をジーンバンクのデータベースに格納・公開準備中である。また、Myrothecium属菌等の菌群について分子系統解析を行い、菌種学名の点検・補正を行った。 6.これまで整備を進めたFusarium属菌推奨菌株セットに加え、植物炭疽病菌、Agrobacterium属細菌の推奨菌株セットを整備するために、これらの登録株について複数遺伝子領域のDNA塩基配列解析を進めた。植物炭疽病菌ではrDNA-ITS、β-tubulin-2 、Actin 、CHS-1 、GPDH 、histone3を、Agrobacterium属細菌については、16S rDNA、atpD、glnA、recAの配列を決定した。 7.マメ類における有用特性の評価と育種利用に向けた実験リソースの整備として、限界環境適応遺伝子解明の次世代モデル植物と考えているVigna(ササゲ)属の代表作物であるアズキのゲノム解析を進めた。24年度は、その第一段階として、アズキの葉緑体およびミトコンドリアゲノムの全塩基配列を解読した。また、限界環境に適応したVigna野生種を新規栽培化するための遺伝子素材として単離を目指していた、ケツルアズキ(Vigna mungo)多器官大型化変異体の原因遺伝子は、シロイヌナズナのTIF4遺伝子のオルソログであるVmTF4であると結論付け、育種学会において学会発表および記者発表を行った。 8.放射線育種場と民間種苗会社との共同研究で、ノアサガオ(Ipomoea indica)品種「ケープタウンブルー」にガンマ線の生体緩照射を行った結果、原品種より花弁の色が薄い特性を安定して発現し、実用性も兼ね備えた系統を獲得したため、平成24年5月16日に品種登録出願を行い、同年9月12日に「IRBIiライトブルー」として出願公表された。本品種は、福花園種苗株式会社から、販売品種名「ケープタウンスカイ」として販売され、平成23年に600鉢、平成24年に7,400鉢の販売実績を上げた。平成25年には、15,000鉢を販売する計画である。 9.種子等での長期保存が困難な栄養体植物遺伝資源を効率的に長期保存する技術として、23年度に開発したアルミニウム製クライオプレートを用いた超低温保存法(クライオプレート法)の適用対象作物を拡大するために、バレイショの保存方法を検討した。諸条件を検討した結果、茎頂サイズは1.5㎜、脱水耐性付与処理は0.8Mショ糖のLS溶液で30分、脱水処理時間は30分を最適条件とした。決定した最適条件下でバレイショ12品種の再生育率を調査したところ、93.3%から100%と非常に高く、本方法によってバレイショ遺伝資源の長期保存事業を可能にした。 10.蓄積した遺伝資源と情報を利用者に提供する体制の強化として、世界イネ在来種SNPタイピングデータのうち、301系統・768SNPマーカーを遺伝資源データベースに登録した。植物遺伝資源web検索システムにおいてSNPデータをXML形式のスプレッドシートとして検索結果一覧及び各JP番号の詳細情報からダウンロードできる。対象系統と「日本晴」及び「Kasalath」を比較したグラフィカルジェノタイプによる表示機能を設けた。 11.日本のコムギ、日本のダイズ、及び世界のダイズの3種類のNIASコアコレクションを公開し配布を開始した。各コレクションは96系統で構成され、ダイズについては種子増殖が完了した日本79系統・世界80系統を2012年度版配布セットとした。また、1粒由来ダイズのうち、1,250点を遺伝資源データベースに登録し植物遺伝資源web検索システムから公開した。 12.植物画像データベースについて、各植物の画像表示画面に、配布可能かつ登録の新しい遺伝資源10画像を追加するとともに、画像から遺伝資源詳細情報を表示する機能を作成した。また、web検索システムの検索結果一覧に含まれる系統の画像はPDFとして一括ダウンロードでき、画像PDFのサムネイルをクリックすると遺伝資源の詳細情報を表示する機能を作成した。これらの開発・改修により、画像から遺伝資源を探すという方法も可能になった。 13.日本植物病名目録第2版の出版に伴い、植物病名データベースと微生物データベースとのリンク2,300組以上を再点検し、病名から微生物株へのリンクを約1,700件再構築し、そのうち約960組では微生物株から病名へのリンクも張った。また、国内・国外発生の区別および遺伝資源とのリンク有無を絞り込むための検索オプションを追加した。さらに、新たに道府県の7サイトの病害診断・防除情報ページ約1,700件と病名の詳細ページとをリンクし公開した。日本植物病名データベースのアクセス数は約216万に達し、我が国の植物病理学研究者など多数の人に利用されている。 14.諸外国との共同現地調査としては、昨年に引き続きカンボジア農業開発研究所と共同でVigna(ササゲ)属を中心としたマメ科植物遺伝資源の共同現地調査(カンボジア南東部および北部)を実施した。収集した材料は現地ジーンバンクに保存するとともに、FAOが設定した標準材料移転契約(SMTA)に基づいて生物研ジーンバンクに導入した。 15.諸外国との共同研究としては、共同研究協定を締結しているインド・タミルナドゥ農業大学および共同研究協定を延長に同意したラオス・イネおよび換金作物研究所においてソルガムコアコレクションの共同特性調査を開始した。また、イネコアコレクションを用いた共同特性調査を25年度から開始するために、新たにベトナム・遺伝資源研究所と共同研究協定を締結した。また、インドネシアとの共同研究開始の可能性を探るため、現地を訪問し協議を実施した。このほか筑波大学を中核機関とするメキシコとのSATREPSのための共同研究契約を締結した。 |
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