細菌・寄生虫感染症成立の分子基盤の解明と診断・防除のための基盤技術の開発

課題名 細菌・寄生虫感染症成立の分子基盤の解明と診断・防除のための基盤技術の開発
課題番号 2013023069
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 森康行
協力分担関係 東京医科歯科大
JRA 競走馬総合研究所
結核予防会 結核研究所
(独)家畜改良センター
(株)ニッポンジーン
日生研
大阪府立大学
USDA
産総研四国センター
帯広畜産大
研究期間 2011-2015
年度 2013
摘要 より特異性が高く現場で簡便に診断できる手法の開発と侵入防止対策に関しては、a) ヨーネ菌遺伝子組換え抗原Map-echAを用いるMap-echA ELISAは、3種の市販ELISAと比較して、感度、特異性ともに高い検査法であることを確認した。b) ウシRegIIIγ遺伝子は、ヨーネ菌感 染の初期から末期までウシ回腸末端部の陰窩粘膜上皮及び杯細胞で高発現することを認めた。また、ウシRegIIIγ遺伝子組換えタンパク質は、ヨーネ菌だけでなく、多くの抗酸菌の増殖を促進するが、一般細菌に対しては増殖促進作用を示さないことを明らかにした。c) ヨー ネ菌感染マクロファージの作出方法及び細胞内ヨーネ菌の回収方法を確立した。さらに、ウシ由来マクロファージにウシ型及びヒツジ型ヨーネ菌を感染させたときに発現するタンパク質を解析し、細胞への感染によって発現が変動するタンパク質群を同定した。d) 液体培地中 で増殖したヨーネ菌の検出方法として、加熱法により培養液からDNAを抽出し、リアルタイムPCRでヨーネ菌の同定と定量を同時に実施して菌の増殖を確認する方法を確立した。液体培養法と本法を組み合わせることにより、従来の寒天培地によるヨーネ菌分離培養法と比べ、培養期間が2か月以上短縮され、分離率も向上した。e) ヨーネ菌IS900をターゲットとする新たなリアルタイムPCRの系を構築し、現行の遺伝子検査法と同等の特異性と感度を有することを確認した。f) と畜場出荷豚や4か月齢以上の病性鑑定殺豚において、Mycoplasma hyopneumoniaeによって引き起こされる豚マイコプラズマ性肺炎の病変の約半数にMycoplasma hyorhinisが混合感染していることを明らかにし、フルオロキノロン系抗菌剤ERFXの耐性株が約20%(3株/16株)存在することを確認した。g) 市販豚肉から分離された腸内細菌科の菌株につい て薬剤感受性状況を調べたところ、セフェム系抗菌薬に耐性を示す菌株を多く検出した。h) 牛由来Candida属真菌3菌種、鶏由来接合菌種5株について、菌種同定の為の遺伝子検査法を比較し、遺伝子間スペーサー領域(IGS)よりも内部転写スペーサー領域(ITS)の塩基配列解析の方が有用であることを明らかにした。i) 大型ピロプラズマ病原虫であるバベシアBabesia ovataの試験管連続維持培養系とフタトゲチマダニ成ダニの人工吸血実験法を組合せることにより、原虫感染牛宿主を介さずに原虫感染マダニを作出する実験系を確立し、さらにマダニ体内における原虫DNAの定量的検出法を開発した。j) 組換えタンパク質ワクチンによる吸血防除効果が明らかになっているオウシマダニ中腸の消化管細胞表面に局在する分子量86kDaの糖タンパク質(Bm86)のフタトゲチマダニにおけるBm86タンパク群を解析し、Bm86の類似 タンパクであるHl86、ATAQの類似タンパクであるHlATAQ1及びHlATAQ2のcDNAクローニングに成功した。k) 鶏コクシジウム原虫の外界発育 期のトランスクリプトーム解析により、エネルギー代謝の中心となる解糖系関連酵素の遺伝子配列を決定するとともに、リアルタイムPCR による測定系を構築した。また、小腸に寄生するコクシジウムEimeria acervulinaの抗原に対する鶏型モノクローナル抗体は、コクシジウムCryptosporidiumの細胞骨格に関連する膜貫通タンパク質を認識すること、及び本抗原が宿主細胞への侵入に関わることを明らかにした 。このほかに、鶏コクシジウム原虫E. tenellaの強毒株と弱毒株スポロゾイトの網羅的発現遺伝子解析を行い、株間で特異的な発現パターンを見出し、両株の分子レベルでの性状の差異を明らかにした。l) 未吸血状態のマダニにおいて、飢餓耐性に関わるとされるオートファ ジー関連遺伝子が機能していること、臓器によってオートファジーの発現挙動が異なることを明らかにした。また、マダニの吸血行動において、血液凝固を阻害するロンギスタチンは、宿主の炎症の中心的役割を果たしている終末糖化物質受容体(RAGE)に対して抑制的に機能していることを明らかにした。このほか、マダニ中腸上皮細胞に構築されたヘモグロビン分解経路を発見し、ヘモグロビンがアミノ酸へと分解されマダニの栄養源となる代謝経路を抗マダニ薬の標的候補として認めた。m) 牛バベシア病の病原体Babesia bigeminaとB. bovisと の鑑別が必要となるB. ovataについて、種固有のβ-チューブリン遺伝子の違いをPCRで検出することにより国内分離のB. ovata 4株をいずれも検出でき、B. bigeminaとの鑑別を可能とした。
効果的なワクチンや薬剤の開発に関しては、a) 豚レンサ球菌Streptococcus suis及び他のレンサ球菌属菌の多株比較ゲノム解析により、S. suis種特異的遺伝子及び髄膜炎発症に寄与する新規病原因子候補を同定した。b) 豚レンサ球菌の全35血清型を規定する莢膜多糖合成関 連遺伝子群(cps遺伝子クラスター)の構成遺伝子を同定した。いくつかの血清型では、血清型に特異的な遺伝子の存在を認め、PCRによる血清型別を可能とした。c) ミツバチの伝染病であるヨーロッパ腐蛆病の原因菌Melissococcus plutoniusに効率よくプラスミドDNAを導入 する為のコンピテント細胞の調製法とエレクトロポレーションの条件を最適化し、本菌の形質転換法を確立した。d) M. plutoniusの病原 性遺伝子を同定するため、日本で分離されたM. plutonius株(非典型株)で発現が高い又は非典型株のみが保有する遺伝子の中から14遺伝子を選択し、これらの遺伝子を導入した典型株を用いてミツバチ幼虫の感染実験を行い、非典型株が持つ4つの遺伝子の病原性への関与を 明らかにした。e) M. plutoniusの典型株と非典型株を組織学的に検出するための抗血清を作製した。f) 牛病原細菌Histophilus somniの 肺炎由来2336株と健康牛由来のH. somniのゲノム構造には明瞭な違いを認めた。g) H. somni 129Pt株の主要外膜タンパク質(MOMP)に対 する血清の反応性には、MOMPのL7単独又はL4~L7の複数のループ構造が関与すること、補体の活性調節因子であるFactor H(FH)は129Pt 株MOMPに結合しないことを明らかにした。h) Actinobacillus pleuropneumoniae(App)の血清型1、2、5、7及び15の莢膜合成遺伝子及びApp種特異的遺伝子omlAを標的にしたmultiplex PCR法を開発した。
カテゴリ 出荷調整 肉牛 防除 ミツバチ 薬剤

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