課題名 | ① 農業生物のゲノム解読の推進とゲノムリソースの拡充・高度化 |
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課題番号 | 2013023124 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
長村 吉晃 アントニオ バルタザール 宮尾 安藝雄 佐藤 豊 半田 裕一 菊池 尚志 小松田 隆夫 川東 広幸 水野 浩志 大野 陽子 小林 史典 山本 公子 安河内 祐二 末次 克行 木原 眞実 上樂 明也 土岐 精一 岸本 直己 土生 芳樹 宮原 研三 |
協力分担関係 |
クミアイ化学 筑波大学 京都大学 (独)産業技術総合研究所 西南大学(中国) 東京大学 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2013 |
摘要 | 1.コムギ6B染色体の約700個のBACコンティグ(6Bの91%をカバー)を染色体上に整列させるために、アンカーマーカーを用いて連鎖解 析及びRadiation Hybrid(RH)マッピングを行った結果、約200マーカーからなる連鎖地図及び約500マーカーからなるRHマップが構築され、全体の81%をカバーするBACコンティグを整列化することができた。また、8,544個のMTPクローンについての超高速シーケンサーによる 塩基配列解読を終了し、現在、配列アセンブルを行っている。 2.コムギ6B染色体について、染色体特異的なショットガンシークエンスにより概要塩基配列を決定した。アセンブルの結果、短腕(6BS )と長腕(6BL)のそれぞれ 56%及び55%をカバーする235 Mb及び273 Mbの塩基配列が得られた。配列のそれぞれ77%及び86%は反復配列 で占められていた。また、コムギの遺伝子発現データを基に、4,798の遺伝子座を予測し、他のイネ科植物遺伝子との比較解析を行った。 配列データは、プロジェクトウェブサイトKomugiGSP (http:// komugigsp.dna.affrc.go.jp/index.html)から公開した。この概要配列情報は、6B染色体特異的マーカーの作成や6B染色体座乗の遺伝子単離に利用できる。 3.イネ遺伝子の機能解析やゲノム育種のために、多様性情報の獲得は重要である。NGSによるアウス品種カサラス全ゲノムの塩基配列解 読を実施し、de novoアセンブリにより、pseudomolecule配列を構築した。また、RNA-Seq解析により、35,139個の遺伝子を予測した。特に、日本晴のリファレンス配列にマッピングできないカサラスの塩基配列が延べ48 Mb見つかり、品種特異的なゲノム領域の存在とその組成 に関して詳細な情報(発現遺伝子や反復塩基配列等)を明らかにした。この配列情報は、多様なイネ品種の参照配列として利用価値が高い。 4.コムギの有用形質遺伝子の単離や解析に有効な基盤として、突然変異系統群の作出と、変異体のハイスループットな検出手法の確立に関する研究に着手した。「きたほなみ」を原品種としてγ線により突然変異を誘発したM2集団(2,542系統)を栽培し、各系統よりのDNAを抽出するとともに、M3種子を採種した。また、2,542系統中176系統で表現型変異が観察された。 5.イネにおける新たな高密度変異体リソースを開発する目的で、メチルニトロソウレア(MNU)処理で作成したコシヒカリ変異体M1約4,000個体の育成、サンプリング及びM2種子の確保を行った。また、MNU処理で生じたSNPを検出するシステム(プロトタイプ)を開発した。 6.ソルガムのモチ形質について、NIASソルガムコアコレクションを用い、モチ性の原因遺伝子であるwaxy遺伝子の解析を行った。その結果、遺伝子のスプライシング異常が原因とみられる新規アリルを見出し、waxy cと名付けた。このアリルは台湾と沖縄、長崎の在来品種で見出されており、日本へのソルガムの伝播経路の特定に有用な情報となった。 7.オオムギ六条性遺伝子Vrs4を単離した。Vrs4は3小穂、1小花の両方の数が増えないように制御する遺伝子である。Vrs4はLOBドメイ ン及びRA2ドメインを持つ転写因子をコードし、幼穂発達の最初のステージで明瞭な発現が観察された。これらの結果から、Vrs4が生物研 で以前単離された遺伝子Vrs1を制御する遺伝子であることが証明された。 8.イネにおいて人工ヌクレアーゼTALENを恒常的に発現させるベクターをアグロバクテリウムを介してカルスに導入し、カルスにおいて 標的遺伝子に変異が生じたことを確認し、さらに変異の入った再分化植物体を得た。変異は、次世代に安定に伝達された。また、非相同末端結合に関与するLig4遺伝子の変異体イネカルスにおいてTALENを発現させると、変異導入効率が高くなることが明らかになった。 9.イネの標的組換えにおける、昆虫のトランスポゾンpiggyBacの有効性を検証した。具体的には、イネにおいてポジティブ・ネガティブ選抜を利用した標的組換え実験を行い、PCR法により標的組換え細胞を同定し、続いてポジティブ選抜マーカー遺伝子をpiggyBacの転移に よって除去することにより、必要な変異のみをイネに残すことに成功した。したがって、piggyBacは標的組換え後に、マーカー遺伝子を跡形なく除去する上で有効であることが明らかとなった。 10.形質転換効率の低い植物においても標的組換えを可能にするため、標的組換えに用いる鋳型を細胞外から供給するのではなく、誘導的に染色体から切り出す実験法を考案した。この実験系が成立するかを検証するためモデル標的組換え系をシロイヌナズナで構築し、検証実験を実施した。その結果、鋳型をメガヌクレアーゼI-SceIで切りだし、標的遺伝子もI-SceI で切断することにより、芽生えにおいて標 的組換えを示すルシフェラーゼの発現が観察された。 11.トビイロウンカ殺虫剤抵抗性関連遺伝子の探索のため遺伝解析を進めた。異なる抵抗性様式を持つと考えられる日産系統及びベトナム系統について各々感受性の出雲系統と交配したF2集団を構築した。今年度はより強い抵抗性を示すベトナム系統についてF2各個体の抵抗性を評価し、抵抗性個体を解析対象として、SSR及びSNPによる連鎖解析を進めている。 12.アワノメイガ属での食性進化と性フェロモン受容機構との関連性の解明を目指し、超高速シーケンサーを用いてアワノメイガのゲノム塩基配列を決定し、アセンブルの結果、約511Mbのcontig又はscaffoldを得た。また、ヨーロッパアワノメイガ、アワノメイガ及びウス ジロキノメイガのフェロモン受容体とフェロモン結合タンパク質遺伝子領域全体のゲノム塩基配列を正確に決定し、フェロモン受容体遺伝子クラスターでは3種間で遺伝子構成に違いがあり、重複により生じた遺伝子がその後の欠失や不活化によりさらに多様化を進めていることが示唆された。 13.ゲノムリソースの収集・保存・管理・提供体制の維持・運営については今年度もイネ、ブタ、カイコ等の研究リソースの適切な保存・管理・提供を実施した。本年度の配布実績としては、イネ完全長cDNAを142点(依頼件数:40)、Tos17突然変異体系統を419点(依頼件 数:73)、遺伝解析材料 42集団(依頼件数:19)の分譲依頼に対応し、適切に配布した。 14.他の農業関係研究開発独立行政法人、府県の農業試験場等との共同研究によって、イネ、トウモロコシ、リンゴ、ニホングリ、スギ、水田雑草コナギ、食用きのこ、ウシ病原細菌、ウシセルロース分解細菌、乳酸菌、イネいもち病菌、キク、カーネーション等について研究支援を行い、農業生物のゲノム解析の推進を図っている。 |
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