寒冷地に適応したパン・中華めん用小麦及び菓子用薄力小麦品種の育成

課題名 寒冷地に適応したパン・中華めん用小麦及び菓子用薄力小麦品種の育成
課題番号 2012021172
研究機関名 農研機構・東北農業研究センター
研究期間 2010-2014
年度 2012
摘要 「銀河のちから」を栽培した花巻市轟木は扇状地の上流側にあって根雪日数が長く、雪腐病が毎年「少」程度発生したが、3年間平均で岩手県の平均収量並の308kg/10aの収穫が得られた。原粒蛋白質含量は品質基準の上限14%を越えた年もあったが3年平均では基準内で、原粒灰分含量も上限1.75%を越えた年もあったが3年平均では基準内であった。平成23年度の「ゆきちから」との比較試験は出芽不良のため、データが得られなかったが、平成21~ 22年度平均では成熟期、稈長、穂数、収量は「ゆきちから」と同程度で容積重が大きく、原粒蛋白はやや多かった。実需によるパン類の評価では作業性等でやや不良の評価もあったが、膨らみ・外観、味・かおりで高評価が多く、総合評価は比較に用いた小麦粉と同等かやや良好であった。また、麺類は「銀河のちから」の小麦粉がストレート粉であったこともあり、色で評価が低かったが、食感で評価が良好であった。以上から「銀河のちから」の収量性は既存品種並みか、少雪地帯では多収が望め、品質、加工適性が良好であることが実証できた。「銀河のちから」は岩手県で奨励品種採用が予定され、宮城県と秋田県でも普及が見込まれる。
「ゆきはるか」は3年とも病害の発生はほとんどなく、452kg/10aの収穫を得た。品質評価の菓子用区分が無く原粒の評価はできないが、小麦粉の蛋白質含量8.0%と灰分含量0.36%は市販薄力粉に近い値であった。「ネバリゴシ」と比較して蛋白質含量は同程度で、収量比は108と多収であった。実需評価のアンケート回収率が低かったが、事前の聞き取りでは「生地に粘りが出る。膨らみが悪い」というマイナス評価の業者と「膨らみがよい。軽い歯触り」というプラス評価の業者が相半ばしていた。以上「ゆきはるか」は多収品種で蛋白質含量、灰分含量とも低く優れていたが、加工適性は業者により評価が分かれた。産地、年度、施肥時期を異にする89サンプルの分析から、「ゆきはるか」は粉蛋白含量が1%増加するとスポンジケーキの比容積が0.056低下することが明らかとなった。次に追肥で蛋白含量を調整するための指標として葉色に注目し、蛋白含量や収量との関係を調べたところ、減数分裂期追肥では追肥時の葉色が濃いほど、蛋白含量と収量が高かった。しかし、増加量には相関が見られなかった。菓子用小麦として粉蛋白8%以下を目指す場合、追肥を行う葉色の限界は、SPAD値42で、この時の収量は56kg/aであった。
寒冷地に適応した菓子用薄力小麦品種の育成では、「群馬W-26号」を母本とする「盛系D-B045」は「ゆきはるか」と同程度またはそれ以下のスポンジケーキ適性であったが、品質ランク区分で重要な容積重が大きいため、系統適応性検定試験2年目に供試した。「Rely」を母本とする系統は供試24系統中、昨年度の品質成績及び立毛調査により6系統を選抜し、品質を調査した。この内、「厨系D-B356-3-2」、「厨系D-B356-4-7」、「厨系D-B356-5-2」は蛋白質含量が少なく、スポンジケーキの比容積は「ゆきはるか」と同程度であったが、官能評価点が高く、「ゆきはるか」の短所である容積重と製粉歩留も改良されており有望と思われた。ただし、スポンジケーキ適性は目標とする「Rely」の水準には達しなかった。
カテゴリ 加工適性 小麦 出芽不良 施肥 品種

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