課題名 | 土着天敵等を利用した難防除害虫の安定制御技術の構築 |
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課題番号 | 2013023057 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
後藤千枝 井原史雄 武田光能 佐藤安志 |
協力分担関係 |
生物研 山口大 広島大 茨城農総セ 道総研・十勝農試 千葉農総セ 静岡農林技研 共和テクノ 総研大(葉山) 京都農林水技セ |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2013 |
摘要 | 農業に有用な生物多様性指標の評価に基づいた環境保全型農業の評価・管理技術の開発に関しては、a) 果樹園において地上徘徊性の天敵類を捕獲するピットフォールトラップの容器サイズが捕獲数に及ぼす影響を解析し、一般的な市販のプラスチックコップの範囲であれば容器サイズの差は問題にならないことを明らかにした。また、茶園における指標生物としてのカブリダニ類の生息密度を適切に把握するためのファイトトラップの使用法を確立した。b) リビングマルチを全面に施したキャベツ圃場で選択性殺虫剤の散布によるチョウ目害虫の除 去が土着天敵に与える影響を調査し、春作ではオオアトボシアオゴミムシとセアカヒラタゴミムシが殺虫剤散布圃場に比べ無散布圃場で多いこと、秋作では殺虫剤散布の有無による差が認められないことを明らかにした。c) ヘイオーツのリビングマルチがあるバレイショ圃場 と慣行圃場とで天敵の発生を3年間比較し、リビングマルチのある圃場では慣行圃場よりゴミムシ数種の個体数が多いこと、また、寄生蜂 とアブラムシ捕食者については種数及び個体数に差は認められないことを明らかにした。d) フェロモントラップ調査の結果、カメムシタ マゴトビコバチ雌成虫の空間分布は季節的な変化が小さく、年間を通じて多くの個体が林縁環境にとどまり、一部の個体だけがダイズ圃場に移動することを明らかにした。e) ムギ、マリーゴールド等を圃場周辺やうね間に栽培する植生管理や農薬による防除の強度を変えたネ ギ圃場を設定して、土着天敵を調査した結果、オオハサミムシは慣行防除区で減農薬区より多かったが、クモ類では区間に差がないことを認めた。ゴミムシ類はムギ間作区で減農薬区より多いことを明らかにした。f) 有機農法を模したリンゴ圃場では、キンモンホソガに寄生 するキンモンホソガトビコバチの寄生率が慣行防除区に比べて非常に高く90%を超えることを明らかにした。g) Tetranychus属ハダニの天敵である樹上に生息するジェネラリスト系カブリダニ類は合成ピレスロイド剤に弱いこと、下草がスペシャリスト系カブリダニを供給するリザーバーとして機能しうることを圃場実験により明らかにした。h) 果樹園周辺に土着天敵を定着させるための植栽として有望なキンモ クセイでは、9月上旬にモクセイマルハダニ寄生葉率が最大になり、その時期に優占的な天敵であるダニヒメテントウがクサカゲロウ類と ともにハダニ密度を急減させることを明らかにした。 天敵類の保護増強に有効な総合的害虫管理体系の確立に関しては、a) 飛ばないナミテントウ及びタイリクヒメハナカメムシにおいて、地 域集中探索時間(餌1個体を捕食後その地点を離れて探索行動を開始するまでの時間)が長い個体は圃場での定着期間が長いことを明らか にした。また、これを指標に定着性の高い天敵系統を育成するための人為選抜法を開発し、特許を出願した。b) 日本に分布するチャトゲ コナジラミの有力天敵シルベストリコバチには、導入系統のほかに侵入系統があることを遺伝子診断法によって確認し、両系統を簡易に識別できる手法を開発した。また、野菜害虫のコナガとハダニの優良天敵であるコナガコマユバチやカブリダニ等を対象に、平成24年度に開発したトラップを用いた天敵採集法やDNAマーカー等を用いた遺伝子診断法を精査し改善を加えた。c) 野菜害虫コナガの優良天敵コナガコマユバチ等を対象に、天敵の寄生能力を高める蜜源として市販されているマルハナバチ用液糖を選定した。d) 土着カブリダニ類に対する 代替餌として、チャ花粉は多くのカブリダニ種にとって発育が良好で産卵数も多く有用な代替餌であること、イヌマキ花粉は少数のカブリダニ種にのみ有用であるが、長期間(2週間)餌として利用可能であることを明らかにした。e) 天敵昆虫タイリクヒメハナカメムシとギフアブラバチの成虫延命に有効な天敵温存植物としてソバ、スイートアリッサム、コリアンダー等の効果を明らかにした。f) ピーマンに農 薬登録のある殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤43種類について、ギフアブラバチの成虫とマミーに対する影響を明らかにした。また、鹿児島県の施設促成栽培ピーマンの産地圃場でギフアブラバチバンカー法の実証試験を行い、バンカーの設置とギフアブラバチの導入は、害虫のジャガイモヒゲナガアブラムシが発生する前の11~12月に行うと効果的であること、施設の谷部に設置したバンカー植物には結露落下による腐敗を防止する対策が必要であることを明らかにした。g) 有機栽培ハウスのエンサイ栽培で問題となるアブラムシ類に対するバンカー法適 用試験から、栽培初期の急激なアブラムシ密度の増加と夏季の二次寄生蜂による天敵アブラバチの低下等の問題点を見出した。前作のバンカーからアブラバチを大量に持ち込むことによって栽培初期のアブラムシを抑え込むとともに、バンカー法を継続して多様な土着天敵を活用することにより、作期を通じてアブラムシ類を低密度に抑えられることを実証した。 このほか、a) 人為選抜によって遺伝的に飛翔能力を欠いた「飛ばないナミテントウ」が野菜類(施設栽培)アブラムシ類防除用のナミテ ントウ剤(第23357号)として農薬登録された。 |
カテゴリ | 病害虫 有機栽培 エンサイ 害虫 カメムシ 管理技術 キャベツ コリアンダー 雑草 施設栽培 植生管理 大豆 茶 DNAマーカー 土着天敵 ねぎ 農薬 春作 ばれいしょ ピーマン フェロモン 防除 マリーゴールド マルハナバチ りんご |