課題名 | 高濃度汚染土壌等の除染技術の開発と農地土壌からの放射性物質の流出実態の解明 |
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課題番号 | 2014025624 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
石田聡 |
協力分担関係 |
(株)DOWAエコシステム (株)クボタ農機 (株)ヤンマー (株)井関農機 (株)ササキコーポレーション (株)三菱農機 飯舘村 福島県 信州大学 |
研究期間 | 2012-2015 |
年度 | 2014 |
摘要 | 除染技術の開発と体系化に関しては、 a) 開発した高精度表土はぎ取り機((株)ササキコーポレーション:作業幅2,200mm、最大削り取り深さ80mm)による作業時の粉じん濃度は、キャビン外で3.2mg/m3の時、標準型キャビン内では0.25mg/m3となり、除染電離則の高濃度粉じん状態10mg/m3を大きく下回るることを確認した。 b) 雑草処理作業時の標準型キャビン内においてオペレータ近傍の粉じん濃度は、キャビン外では10mg/m3を超える条件下で1.090~1.491mg/m3と除染電離則の高濃度粉じん状態10mg/m3を下回ることを確認した。 c) 熱中症に関わるキャビン内のWBGT(暑さ指数)の値は、雑草処理作業時にキャビン外では警戒値(25~28℃未満)や厳重警戒値(28~31℃未満)を上回る条件下でも、エアコンを入れた標準型キャビン内ではそれぞれ19.8℃と21.9~21.5℃と低いことを確認した。 d) 農地除染に関する作業安全対策の目安については、平成24年度に作成された「農地等の除染に使用した農業機械洗浄マニュアル」をベースに関連する基準、ガイドライン、通達等や除染事業現場での実態確認を行い、相対粉じん量から粉じん濃度を換算する係数を推定するとともに、除染関連作業時の粉じん発生状況とキャビンによる粉じんの低減効果を明らかにした。 e) 平成25年度に開発した空間ガンマ線測定装置について、異なる放射性セシウム濃度を示す圃場でガンマ線スペクトル測定,深度別土壌サンプリングを行い,積算カウント値と土壌中の放射性セシウム分布との関係式を得た。 f) 平成25年度に改良(軽量化)を行った空間ガンマ線測定装置について特許を出願するとともに、NaI(TI)シンチレータの設定を現在除染事業が行われている地域の線量率に最適化すると同時に、GPS信号の取り扱いを簡略化した。 g) 平成25年度の水による土壌攪拌・除去の実証試験において課題となった、バキューマ内(上流部の着泥槽)に砂質土や植物残渣が堆積する問題を解決するため、吸引ホースの流入部にメッシュスクリーン等を設置して砂質分と植物残渣等の雑物の混入を防止し、泥水のみをバキューマ本体に輸送する可動式の泥水集水樋を作製した。 汚染された土壌や植物残さ、堆肥等の減容・処理技術に関しては、 a) 稲わら及び雑草等をφ4mm以下に粉砕し、それぞれについて成型特性について試験を行い、材料水分等の最適条件を明らかにした。また、成型材料及びペレットの発熱量、灰分、溶融温度等を測定し、雑草は1,100℃で溶融することを確認した。 b) 牧草を用いて、小型堆肥化装置及び1m3規模での発酵乾燥試験を行い、発酵熱による乾燥で水分30%程度まで発酵熱による乾燥が可能であり、発酵乾燥は乾燥に要するエネルギーの削減及び乾燥効率向上に利用できることを明らかにした。また、戻し堆肥は、発酵初期の温度上昇に有効であったが、試験終了時の水分や有機物分解率に差は認められなかった。 c) ロールベールラップサイレージに穴を開ける簡易な方式の堆肥化過程において、ロールベールに梱包した牧草中の放射性セシウムはほとんどが堆肥化後に堆肥中にとどまっていることと、堆肥化による有機物分解に見合って、堆肥乾物あたりの放射性セシウム濃度は上昇することを明らかにした。発生した昆虫による外部への放射性セシウムの持ち出しを確認したが、その量は大きくはないと判断した。 農地周辺施設の効率的除染技術に関しては、 a) 水路除染が実施された余水吐掘込部において、水路堆積物中に含まれる放射性セシウム濃度を調べ、前年度の結果と比較した結果、主要構成部及び副構成部の堆積物中に含まれる放射性セシウム濃度は、それぞれ53%、38%まで低下したことを確認した。 b) 谷型ため池において、流入水、流出水とも放射性セシウム濃度は、夏場に高く、10月以降低下することを確認し、流入水、流出水及び貯留水で浮遊物質と放射性セシウム濃度に正の相関があることを明らかにした。また溶存態セシウムの全放射性セシウムに対する割合は、流入水で1~5%程度、流出水で1~3%程度と限定的であることを明らかにした。 c) ため池水域の底質におけるセシウムの分布状況を簡易に計測する装置を開発し、特許を出願するとともに、GNSS(汎地球航法衛星システム)による位置情報と、ガンマ線の計測データをリアルタイムで表示するソフトを製作した。 d) 分布型水循環モデルに浮遊物質及び放射性物質の移動モデルを組み込むことにより、放射性物質の移動予測モデルを開発した。 農地土壌からの放射性物質の地下浸透や農地外への流出等の実態解明に関しては、 a) NaI(Tl)検出器を用いた濁水の放射能測定装置について、福島市及び郡山市の圃場において実施した代かき試験や水槽を用いた実験結果から、濁水中の放射性セシウム濃度と測定装置のカウント値との関係を明らかにした。 b) これまでの実証試験結果を取りまとめ、土壌攪拌(代かき)による放射性物質低減技術の実施作業の手引き(案)を作成した。 c) 表土剥ぎ取りによる除染後圃場の省力的管理手法の検討では、単播条件でのカバークロップの草種、播種時期ごとに地表面被覆率の季節推移を明らかにした。イヌビエ雑草埋土種子数の除染後2年目の増加と、客土材の種類及び除染時の耕起時期には明瞭な関係は認められなかった。 d) 福島研究拠点黒ボク傾斜畑において土壌侵食モニタリングした結果、流出した放射性セシウム量を裸地区と比較するとカバークロップ区では2割、ダイズ区では5割程度と植生によって抑制できることを明らかにした。 e) シバ草地に放牧した牛の肉への放射性セシウムの移行係数は約2×10-2と推定され、参照とされるIAEAが取りまとめたテクニカルレポートシリーズ(TRS)No. 472に示された平均値とほぼ同じであることを明らかにした。斜面の上部、中腹、下部の土壌、牧草中の放射性セシウム濃度は上部で低いことが2か所の放牧地で認められ、集水の影響を確認した。 f) イノシシの出現が多く農業被害リスクの高い地点は避難指示区域内に限られないものの、区域内では活動時間帯が昼間方向に変化する傾向にあることを明らかにした。また、電気柵の効果的運用に必要な普及指導内容を提示した。 |
カテゴリ | 病害虫 乾燥 雑草 GPS 除染技術 播種 モニタリング 輸送 |