③ 作物ゲノム育種研究基盤の高度化

課題名 ③ 作物ゲノム育種研究基盤の高度化
課題番号 2014025633
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 山本 敏央
杉本 和彦
福岡 修一
米丸 淳一
福田 篤徳
溝淵 律子
山内 歌子
宇賀 優作
堀 清純
上田 忠正
石本 政男
田口 文緒
加賀 秋人
佐山 貴司
協力分担関係 理化学研究所
農業・食品産業技術総合研究機構
北海道大学
香川大学
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要 1. 日本で育成された多収の飼料イネ品種のゲノム構造を識別するSNPセット(1,152 SNPs)を作成してゲノム構造を調査した結果、同品種群は温帯日本型、インド型、中間型に分類された。中間型品種群における温帯日本型及びインド型の各優占アリルの頻度は、ゲノム全体ではそれぞれ中間の値を示していたがその分布は偏っていた。このため、日本の多収イネの収量性向上に貢献したインド型ゲノム領域が検出可能と考え、インド型品種に由来する優占アリルの頻度が高いゲノム領域に限定したゲノムワイド連関解析を実施した。その結果、出穂期と連動しながら玄米面積や千粒重を増加させる領域を第7染色体に見いだすと同時に、いもち病抵抗性などの他形質においても有意な関連がみられる領域が第12染色体などに見いだし、これらが日本における多収イネ品種の育成過程で選抜されたゲノム領域である可能性を示した。
2. イネ品種「北海188号」に存在し、重要病害いもち病に対して量的であるが持続性の高い抵抗性を付与するPi35遺伝子をマップベースクローニングにより特定し、その機能を調べた。その結果、Pi35はNBS-LRRタンパク質をコードしており、いもち病菌のレースに特異的なPish遺伝子の対立遺伝子であった。Pishが一部の菌株にのみ抵抗性を示すのに対し、Pi35は、供試した我が国のいもち病菌のすべてに対して抵抗性を示した。この違いは両遺伝子間の6個のアミノ酸変異のいずれかが原因と考えられた。そこで、Pish-Pi35キメラ遺伝子の解析を行いて原因となる変異を調査した結果、LRR領域の変異だけでも抵抗性は向上するが、不十分であり、複数のアミノ酸変異が組み合わさることで、Pi35の実用的な抵抗性が生み出されていることがわかった。
3. 日本で最も高い収量性を示すインド型イネ品種「タカナリ」と日本で最も広く栽培されている良食味イネ品種「コシヒカリ」の交配後代から正逆CSSLs(染色体断片置換系統群)を作出し、2か年にわたる生産力検定試験によって子実収量及び収量構成要素を網羅的に調査した。その結果、コシヒカリ遺伝背景で48か所、タカナリ遺伝背景で47か所の収量関連QTLが見いだされ、それらの多くはシンクサイズ(穂数や籾数)とソース能(稔実率や千粒重)の間に顕著なトレードオフが見いだされた。またQTLの多くは遺伝背景によって異なる場所に検出されることから、収量性のQTL間にはエピスタシス(上位性)が存在することが明らかとなった。多収及び良食味の代表品種間で見いだされた収量性に関するQTL情報は、食味と収量を兼ね備えた日本の水稲の育種において重要な知見となる。
4. 次世代シーケンサーにより解読したダイズ16品種の塩基配列データと米国品種「Williams 82」の参照配列との比較から品種あたり平均120万か所のSNPを検出した。日本品種13品種のなかでは「金川早生」が最もSNPが多く、「トヨハルカ」が最も少なかった。塩基配列データとSNPデータは国産ダイズ品種に特化したデータベース「DAIZUbase」へ格納し、ゲノムブラウザGbrowseによる視覚化を行った。検出したSNP情報は重要形質である開花関連遺伝子などの遺伝子型の判別に有効であった。
5. 病害虫抵抗性などを持つ有用な遺伝資源である「Peking」の染色体断片を、国産品種の「エンレイ」へ戻し交配によって導入した103系統からなるCSSLsを整備した。これらCSSLsの開花期を評価したところ、既知の開花関連遺伝子(E1、E2、E3)や新規のQTL(FT-H、FT-B1)が座乗する染色体断片の有無に応じて開花期が変化することを確認した。また、遺伝効果の小さいQTL(FT-J)についても表現型で差を検出することが可能であった。配布に備えて、マーカー選抜を進めたBC5F1の自殖後代を育成し、種子を採集した。
6. 国内8か所で評価されたダイズミニコアコレクション192系統の開花期や成熟期に関するデータについて、6,144か所のSNPの遺伝子型情報を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS:Genome Wide Association Study)を行った。既知の開花関連遺伝子(E1、E2、E3)やQTL(FT-H、FT-B1)以外に、開花期については新たに3つの遺伝因子、成熟期については4つの遺伝因子を検出し、これら遺伝因子の選抜モデルに利用可能なSNPマーカーを検出した。これらの情報を用いてゲノミックセレクション用のトレーニング集団の開花期及び成熟期の予測モデルを作成した。
7. ダイズの収量性の向上と安定を目指して、納豆用品種と普通品種や多粒莢品種と米国品種などから作出した組換え自殖系統(RILs:Recombinant Inbred Lines)を複数の環境で栽培し、個体あたり莢数、一莢内粒数、百粒重などの収量構成要素を調査した。それらの形質に対して安定した効果を示す複数のQTLを検出した。その結果、納豆用品種は一莢内粒数や莢数に関わるQTLの集積により、100粒重を低下させていると考えられた。一方、多粒莢品種からは一莢内粒数に関わる3つのQTLを検出し、さらに米国品種が持っている一莢内粒数のQTLを集積することで、ダイズではほとんど観察されない5粒莢が高頻度に出現することを明らかにした。また、病虫害抵抗性、開花・成熟期、草型、品質などの重要形質について原因遺伝子の座乗領域の絞り込みを進めた。さらに、他の独立行政法人、道府県の農業試験場、大学等との共同研究によって、重要形質の遺伝解析と原因遺伝子の同定、DNAマーカー選抜育種を推進した。なかでも、(独)農業・食品産業技術総合研究機構などと共同でコンバイン収穫適性に関わる難裂莢性の原因遺伝子pdh1を同定した。
カテゴリ 病害虫 育種 遺伝資源 いもち病 害虫 ゲノム育種 データベース DNAマーカー 抵抗性 品種 良食味

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