課題名 | ③ 家畜の発生分化機構の解明 |
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課題番号 | 2014025638 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
徳永 智之 金子 浩之 野口 純子 菊地 和弘 松原 悠子 伊藤 嘉保 細江 実佐 古澤 軌 大越 勝広 宮下 範和 |
協力分担関係 |
農業・食品産業技術総合研究機構 麻布大学 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2014 |
摘要 | 1. ウシにおいてES細胞等の多能性幹細胞を畜産利用するための基盤技術の開発を進めている。これまでに樹立したウシES様細胞はコロニー形態や幹細胞マーカーの発現パターンはES細胞と類似しているが、三胚葉への分化能を明確に示すことが困難であった。本年度、ES様細胞に幹細胞因子OCT3/4の発現量を調節するTet-onシステムを導入して高品質化を試みた。得られたTet-on OCT3/4導入細胞は、ドキシサイクリン(Dox)存在下でOCT3/4発現が増強され、他の幹細胞マーカー発現の改善、増殖性の著しい向上が見られた。キメラ形成能を調べるため、Tet-on OCT3/4導入細胞を注入したマウスまたはウシ胚をDox存在/非存在下で培養し、胚盤胞期胚における局在を調べた。その結果、Dox存在下で培養すると細胞がICMに局在する胚の割合が有意に向上した。また、細胞死回避と分化誘導のためTet-on OCT3/4導入細胞とマウスES細胞を混合(20:1)してマトリゲルに包埋し、Doxを徐放的に放出する浸透圧ポンプとともにヌードマウスに移植した。3週間後に得られたキメラテラトーマの免疫組織学的解析を行った結果、表皮、神経叢(外胚葉)、血管内皮(中胚葉)及び腺上皮組織(内胚葉)への分化が確認できた。これにより、OCT3/4発現の補強によりウシES様細胞の品質が向上することが示唆された。 2. これまでに、超低温保存した幼若期のブタ精巣組織をヌードマウスに移植し精祖細胞から精子を発生させ、さらに顕微授精による産子生産技術を開発した。本年度は、精祖細胞の利用性をさらに高め、次世代作出の機会を広げる目的で、胎子精巣からの個体再生の可能性を検討した。人工授精後30、55及び90日のブタ胎子から精巣を採取した。胎齢30日は精巣と卵巣の形態的な区別が明瞭になる時期、胎齢55日は精巣下降(胎齢60日)が始まる直前、胎齢90日は精巣が陰嚢に到達する時期にあたる。細切した精巣実質組織をガラス化法により超低温保存した後、去勢したヌードマウスの皮下に移植した。これまでのところ、胎齢55日及び90日精巣について、移植後180日以降に精子が回収され、胎子精巣組織からも精子が得られることが判明した。得られた精子は、別途準備した成熟卵の細胞質に注入して顕微授精卵を作製し、発情を同期化した成雌ブタの卵管内に移植している。本技術は、次世代を得ることが困難なブタの系統維持に有用と考えられ、子ブタの死亡リスクの高い血友病モデルブタへの適用も開始している。 3. シカによる食害を軽減するための個体数調整を目的として、雄に対して精子等を抗原とした免疫処置を施すことで生涯避妊効果が持続しうる免疫手法の開発を目指す。そのためには、精子免疫により精子形成が阻害されつつ、交尾行動自体は存続することが求められる。これまで、ラットを用いて免疫手法を検討し、幼若雄ラットに免疫賦活剤と共に精子抗原を2回接種することにより、60%の個体で成熟後の精巣に自己免疫性精巣炎が発症し、精子形成障害が発生した。また、これらの雄の末梢血中ステロイドレベルは維持され、交尾行動は阻害されていないことが判明した。 |
カテゴリ | くり シカ 豚 |