① 植物病原微生物の感染機構の解明と利用技術の開発

課題名 ① 植物病原微生物の感染機構の解明と利用技術の開発
課題番号 2014025640
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 石川 雅之
光原 一朗
落合 弘和
瀬尾 茂美
西村 麻里江
吉川 学
竹内 香純
石橋 和大
協力分担関係 筑波大学
農業・食品産業技術総合研究機構
大阪大学
岩手医科大学
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要 1. タバコが生産するジテルペノイドの一種スクラレオールは、難防除土壌病害である青枯病に対する抵抗性を、植物種を問わず誘導する。病害スペクトラムの調査の結果、スクラレオールはネコブセンチュウに対する抵抗性も誘導することが判明した。その抵抗性誘導機構を理解するためにシロイヌナズナ防御関連因子変異体を用いた解析を行い、スクラレオールが根においてエチレンシグナル伝達系を介してリグニン蓄積を高めること、蓄積したリグニンが物理的障壁となってセンチュウの侵入が抑制されることを明らかにした。
2. Pseudomonas protegens (P. fluorescensより独立) はバイオコントロール細菌として研究されてきたが、同種はアジアで分離されていなかった。P. protegensの国内での利用を目指して、さまざまな植物の根圏から分離した国内産の蛍光性Pseudomonas属細菌2,800株からP. protegens Cab57株を得た。全ゲノム解読の結果、同種に特有の抗菌性物質の生産に関わる遺伝子群をもつことが判明した。抗菌性の発現を負に制御するRetSを欠損させると、植物病原性卵菌であるPythium ultimumに対する抗菌性が亢進した。さらに、P. protegens の近縁種で植物保護能力が顕著なPseudomonas sp. Os17株を得、全ゲノム解読を行い、Os17株特有の遺伝子クラスターとしてリゾキシン類縁体合成酵素遺伝子群(rzxクラスター)を同定した。このうちrzxB遺伝子の欠損変異株では、P. ultimum及び植物病原性糸状菌に対する抗菌性とともに植物保護能力が低下し、リゾキシン類縁体が本菌株の植物保護能力に寄与することが示唆された。
3. タバコモザイクウイルス (TMV) の複製タンパク質は、感染細胞内で TMV ゲノムRNA から翻訳され、ゲノム RNA を特異的に複製する。この特異的複製の鍵となる複製タンパク質による鋳型選択機構を理解するために、試験管内TMV RNA翻訳・複製系を用いて解析を行った。これにより、複製タンパク質は、合成される途上でTMV RNAの特定の領域に結合し、当該RNAを複製に導くことを明らかにした。また、複製タンパク質が複製鋳型RNAに結合することが、そのRNAのさらなる翻訳を阻害し、翻訳から複製へのスイッチとして働くことも明らかにした。
4. ウイルスの宿主細胞への感染は、ウイルスゲノムの細胞への侵入、ウイルス遺伝子産物の合成、ウイルスゲノムの複製と分解等多くの要因により支配される。各素過程の分子レベルでの理解は進んできたが、それらを個々の細胞におけるウイルスの増殖に結びつける理論は欠如していた。そこで、トマトモザイクウイルスの感染過程を数理モデル化し、シミュレーションしたところ、細胞によって感染を成立させるウイルスゲノムの数がばらつくとともに、感染を成立させた個々のゲノム由来の子孫の蓄積量も大きくばらつくこと、複製の素過程の効率の小さな違いが細胞感染では大きく増幅されることが予想された。これらの予想は実際に実験で裏付けられた。さらなるシミュレーションにより、これらの特性が、ウイルス集団における適応的な(子孫を残す効率の高い)ゲノムの選択と欠損ゲノムの排除に貢献していることが示唆された。この知見は、ウイルス病の防除方法あるいはウイルスの有効利用方法の開発に示唆を与えるものである。
カテゴリ 青枯れ病 たばこ 抵抗性 トマト ばら 防除

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