課題名 | (1)農業生物遺伝資源の充実と活用の強化 |
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課題番号 | 2015027890 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
協力分担関係 |
(一社)沖縄綜合科学研究所 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2015 |
摘要 | 1.植物遺伝資源、微生物遺伝資源、動物遺伝資源及びDNAバンクの各分野で、遺伝資源の探索、収集、分類、同定、特性評価、保存、増殖及び遺伝資源とその情報の提供を実施し、我が国の農業研究や育種に必要なアグリバイオ研究基盤の整備を進めた。 2.ジーンバンク保存のイネ遺伝資源を高度化するために、約5,000系統のアジア在来栽培イネに関して付与したゲノム全体に分布す る768座のSNP情報を公開し、その情報をもとに選抜した900系統を、1粒由来の研究用遺伝資源とするため、圃場で600系統、温室で400系統の1粒増殖第2世代の栽培を行った。野生イネのコアコレクション作成に関しては、候補として選定した系統の中に難増殖系統が含まれているため、配布用種子在庫量が得られたAゲノム野生イネ7系統、Aゲノム以外の野生イネ14系統について、個別系統としての配 布を開始した。 3.ジーンバンク保存のダイズ遺伝資源を高度化するために、1粒由来ダイズ約1,600系統の増殖を進め、配布用種子在庫量が得られた581系統を公開した。また、新たにダイズ12品種の全塩基配列データから抽出したTagSNPを用いた高密度SNP解析システムを開発し、ダイズコアコレクションに約20万個のSNP情報を付与した。 4.イネ以外のコアコレクション作成として、農水委託研究プロジェクト「海外植物遺伝資源の収集・提供強化」の委託課題としてキュウリ、メロン、カボチャのコアコレクション作成を進めた。ソルガムのバイオマス研究用遺伝資源セットに関しては、993系統を用 いた5か年の特性評価結果に基づいて26系統を選定した。その内配布用種子の準備ができた22系統についてバイオマス研究用ソルガム2016年版遺伝資源セットとして配布を開始した。 5.キウイフルーツに激しい被害を起こすかいよう病菌が本邦新産のbiovar 3であり、長野県で見出された同病菌が新規系統であることを解明し、これらの診断・同定法を開発中である。スペイン産マンゴー奇形病原因Fusarium属菌を解析したところ、132株中F. tupienseが70%、F.mangiferaeが29%、新種Fusarium属菌が1株含まれ、F. tupienseの記載を種の第二報告として行った。オーストラリ ア産アガパンサスの斑点性病害原因のFusarium属菌を見出し、新種記載した。植物病原性Rhizobium属細菌に対する菌種同定用PCR実験系を改良し、ジーンバンク保存菌で有効性を確認した。植物ウイルス289株を外被タンパク質の遺伝子配列をもとに再分類し、Tobamovirus、Necrovirus、Fabavirusに属する一部の株の学名を変更した。クライオ電子顕微鏡とトモグラフィー技術でイネ萎縮ウイルスの 媒介昆虫培養細胞内での動態の視覚化に成功した。ジーンバンク保存の納豆菌ファージの凍結耐性には種間差で-20℃凍結に耐えられ ない株もあり、凍結・凍結乾燥法の保存に改良が必要であることを明らかにした。 6.分類検証した微生物の推奨菌株セット等の充実として、分類同定に係わるバーコードDNA塩基配列情報の網羅的整備を行い、糸状 菌のrDNA ITS, Histone H3領域、細菌の16S rDNA等、計1,437点について解析し、決定配列をデータベースに格納中である。ジーンバ ンク登録の植物ウイルス150株について外被タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を解析し、公開中のウイルス株329株の内、未解析は40株となった。整備した塩基配列情報を基にジーンバンク登録株を分類検証した。 7.マメ類における有用特性の評価と育種利用に向けた実験リソースの整備として、福島県相馬市のダイズが生育できない津波塩害水田において、ダイズに近縁なササゲ属で、耐塩性に優れた近縁野生種2種が良好な生育を示すことを明らかにした。14種のササゲ属野 生種に関して全ゲノム解読を完了した。また、ササゲ属栽培種9種野生種29種を含む属レベルの多様性コレクション71系統を選定し、 耐塩性と耐乾性を対象として多様な材料を効率的に評価する手法を開発した。 8.突然変異による各種変異体として、水稲「ひとめぼれ」「コシヒカリ」「日本晴」にガンマ線及びイオンビームを照射した突然変異体約750系統の農業形質を調査し、‘イネ放射線突然変異体データベース’を構築・公開した。変異体492系統を形質ごとに分類し、各系統の原品種名、変異原、世代などを付加した。画像ギャラリーでは出穂期の写真を公開した、ガンマ線を急照射したカンキツ「せとか」では、昨年見出したトゲが短縮した1系統でトゲの大きさに関する変異の再現性を調査し、選抜した。新たに2系統をトゲが短縮した系統として選抜した。 9.栄養体の超低温保存研究ではクライオプレートを用いてサトイモの再生率を高めることに成功した。試料を薄く摘出することで、生長点まで十分乾燥できる形態とし、また乾燥条件を4℃に下げたことが再生率向上に寄与したと思われた。その結果、生存率で最大83.3%、再生率で最大55.6%の値を得ることができた。サトウキビのクライオプレート乾燥法の最適条件を明らかにした。12系統につい てこの条件の品種適応性を調査したところ、20.0~100%で平均52.1%の再生率を得た。 10.ニワトリmtDNAのSNP解析の結果について、白色レグホーンの卵殻質強系:ANJP No.70 、卵殻質弱系:ANJP No.904 のSNP情報及びD ループ領域の塩基配列をデータベースに登録し、動物遺伝資源Web検索システムの詳細画面からダウンロードできる機能を作成して公 開した。 11.日本ダイズの系統樹をWebページ化し、視覚的な類縁関係をもとに遺伝資源を効率的に検索できるシステムを開発した。画像部分 はSVG形式で作成しており、ブラウザの画面サイズに合わせたサイズで描画し、図中から個別のJP番号へのリンクをたどることができ る。また、植物遺伝資源Web検索システムの詳細画面中にインラインのGoogle Mapsを表示するように改修し、収集地点のGISデータを 持つ5,700点に適用した。さらに、利用者の認証機能を利用して、公開していなかった配布制限付の植物遺伝資源を国内向けに公開す るためのシステムを開発した。 12.ITPGR加盟への対応として、日本が多国間システム(MLS)に登録する植物遺伝資源として、26年度17,498点に続いて、今年度12,705点(合計30,653点)をMLS対象遺伝資源に追加しWeb上で公開した。これによりMLSへの日本の貢献は、世界第6位となった。また、ITPGRの定型の材料移転契約(SMTA)報告用システム(Easy-SMTA)に対応した契約実績リストの生成及びデータ送信を行うシステムを開発し、契約実績の送信を開始した。 13.国際共同現地調査としては、カンボジアでトウガラシ類とウリ類を中心として野菜類231点、穀類28点、ベトナムでは、カボチャ 、キュウリ、アマランサスを中心に97点、ラオスでは、ナスを中心に137点、ミャンマーではアブラナ科を中心に122点、イネを中心に150点を収集した。材料は現地ジーンバンクに保存するとともに、カンボジアとミャンマーについてはSMTAで生物研ジーンバンクへ導 入し、ラオス、ベトナムについては導入へむけた交渉を実施している。 14.国際共同研究としては、ベトナム、ラオス、カンボジアに加えて新たにミャンマー、ネパールを追加して共同研究を進め、管理者招聘によるワークプランの策定、現地特性評価、若手研究者の能力開発を実施した。この他、国際研究機関CIAT(国際熱帯農業センター)と極低温保存に関する意見交換を行うとともに、タイ・カセサート大学との共同研究を継続実施した。 |
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