課題名 |
重イオンビーム照射による有用変異体の探索 |
研究機関名 |
宮城県古川農業試験場
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研究分担 |
作物育種部
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研究期間 |
新H27~30 |
年度 |
2015 |
摘要 |
<目的>、 新たな形質をもつ,あるいは飛躍的に特性を向上させた品種を育成するには,交配母本の遺伝子の変異を拡大する必要がある。その一手法として,突然変異育種法は有効であり,これまでガンマ線やEMS等の化学薬剤処理による突然変異体の作出が行われてきたが,重イオンビーム照射により水稲品種の育成事例は少ない。本課題では水稲品種「コシヒカリ」由来の重イオンビームを照射した変異集団から有用変異体を探索し,早期に品種育成に利用する。、<成果>、コシヒカリの乾燥及び吸水種子に炭素またはアルゴンビームを照射したM2植物を1系統あたり10個体栽培し,計7,000個体の観察と選抜をおこなった。育苗期には,アルビノ,キサンタ等の葉緑素変異体が10%未満の割合で観察され,移植後から成熟期までには,稈長,葉色,出穂期,不稔等の変異が観察された。乾燥種子の炭素イオン照射した変異系統では,照射線量やLETの増加に伴い,変異率が上昇したが,アルゴン照射系統は,炭素イオン照射と変異体発生率において大きな差異は認められなかった。成熟期後に,7,000個体を各1穂ずつ収穫して脱穀し,玄米の大きさ,形状,胚芽長,玄米色,玄米の白濁程度等を観察した。その結果,玄米の粒形,粒大,粒色,品質,発芽性に違いがある変異体が観察された。粒大の変異については,不稔籾が生じたことにより残った玄米の粒大が大きくなったもの,あるいは,矮化したために粒大が小さくなったものなど,他の形質の変異と連動した変異もあった。最終的に,有用変異体として,出穂期(早生7/28,中生8/6,晩生8/15,対照コシヒカリ8/9),葉色と籾色(黄色と黄籾),少分げつ(1本),粒色(黄色),糖質米(推定)に関する変異体を選抜した。、有用変異体として選抜した個体の一部は,理研・仁科センターにおいてアウトクロスチェックを実施し,「コシヒカリ」由来の変異体であることを確認した。さらに一部の個体についてはホールゲノムシークエンスを行い,葉色と籾色(黄色と黄籾)の変異については,既知の低リグニン系遺伝子GH1の遺伝子の変異であること,出穂期(晩生)は原因遺伝子候補であるFKF1ではないこと,出穂期(早生)の変異体は候補遺伝子が8個あること,無分げつ(1本)変異体については,MOC1ではないホモの候補遺伝子が6個あること等が確認された。今後,選抜した有用変異体(少分げつを除く)については,翌年も同じ形質が安定して発現するか,その形質は遺伝するか等のチェックを行い,その遺伝子の有用性について検討する。
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カテゴリ |
育種
育苗
乾燥
品種
薬剤
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