(2)内水面漁業の振興とさけます資源の維持・管理のための研究開発

課題名 (2)内水面漁業の振興とさけます資源の維持・管理のための研究開発
課題番号 2019030635
研究機関名 水産総合研究センター
協力分担関係 (地独)北海道立総合研究機構
山形県
山口県
高知県
鹿児島県
北海道大学
中央大学
全国内水面漁業協同組合連合会
日本養鰻漁業協同組合連合会
(一社)全国さけ・ます増殖振興会
研究期間 2016-2020
年度 2019
摘要 ・ニホンウナギ稚魚のシラスウナギ採捕データについて、より詳細な県別月別データを新たに組み込んで、シラスウナギ来遊動向分析及び絶滅リスク評価を行ったところ、従来の推定通り、絶滅寸前や絶滅危惧には該当しないことが示された。沿岸河口域のニホンウナギについて耳石分析を行い、新たに得られた個体の環境履歴データ(生息場所の沿岸/汽水/内水面)をモデル水系ごとに比較したところ、閉鎖的な内湾域や高緯度域で沿岸定着型が多いことが示された。
・シラスウナギに関連する各種海洋環境の指標を1993年まで遡って整備し、シラスウナギ加入指標としての全国採捕量と各種海洋環境指標との関係を検討した。シラスウナギの加入動態をもっともよく説明することができた統計モデルでは、黒潮流速が早いほどシラスウナギ来遊量が多いという関係が示唆された。
・親魚がすぐに隠れてしまうために従来の方法では発見できなかった構造物等の陰に作られたコクチバスの産卵床をドローンを使って確認し、その場所に網をしかけることで駆除に成功した。さらに、冬季に大型のコクチバスが蝟集する場所が水深3 m以深の緩流域(淵)であることを明らかにし、水中銃や底刺し網で駆除を行った。
・カワウによるアユ等の食害を軽減するため、ドローンを使って、樹上のカワウの巣内にドライアイスを投入し、繁殖を抑制する技術を開発した。2019年3~4月に、3Dプリンターで作製した投入装置を用い、40巣にドライアイスを投入したところ、37巣で繁殖を完全に抑制できた。掛かった経費53万円に対し、アユ食害軽減効果は128万円と推定され、費用対効果は2倍以上であった。普及マニュアルを関係者に配付し、すでに4県で普及している。
・内水面における環境変化の影響とその緩和策として、イワナが水位低下時に受けるストレスは、低位であっても水を流し続けることと早期の水位回復によって軽減しうることを明らかにした。
・ヤマメを異なる濁度で飼育した結果、生残率に有意差は認められなかったが、成長率と肥満度は高濁度区で有意に高い結果が得られた。すなわち高濁度によってヤマメの視野が制限され、縄張り行動が抑制されるため、成長が良くかつ肥満度が高くなると推察された。
・天然アユ資源の主体である早期産卵群を対象に、アユ遡上尾数が少なかった2018年5月から8月にかけて、朱太川(北海道)における潜水目視調査と河川水中の環境DNA分析を行った結果、遡上開始からわずか3週間足らずで、早期群が河川上流域まで到達していたことが明らかとなった。加えて、遡上尾数が比較的多かった2019年も同様の傾向が見られた。なお、本調査により、天然アユ資源の主体である早期遡上群の保護策の検討に資するモニタリング技術の一つとして環境DNAの有効性を検討、河川でアユの環境DNAの検出に成功し、目視の結果ともよく一致したことから、遡上の時期や量をモニターするツールとして利用できる可能性が示唆された。
・内水面の遊漁振興策について、60の方策を記した「内水面における遊漁の振興について」という提案書を作成し、(一財)東京水産振興会のホームページにアップした。
・サケの初期減耗に関与する生物環境要因の抑制技術として、ふ化場施設内から採集した微生物群集(バイオフィルム)をサケ卵に事前接種することによりミズカビ菌糸の成長を抑制する方法を開発した。
・サケの回帰資源が低迷する釧路川において、2013年級までの河川回帰数と放流履歴(実際の放流月日、放流時の種苗のサイズ、放流数)を分析した結果、5月6日以降の放流、放流サイズ約1.4 g以上で河川回帰が向上すると示唆された。さらに、2012年級群の調査では、比較的大型で降海した個体がその後の成長が良いことから、より大型の個体を放流することで高成長が期待できる可能性が考えられた。
・本州太平洋系サケの仔稚魚の発育特性については、従来積算温度960℃・日を目処に給餌を開始するとされているが、この妥当性を確認するために現地実証試験を行った結果、給餌開始の指標となる仔魚の体重がピークに達するまでの積算温度は900~1000℃・日の間でふ化場や産卵時期によって異なることがわかった。
・サケ放流事業における負担軽減を目的として、発眼卵放流の導入に取り組み、引き続き発眼卵放流を実施した。2016、2017年級群は新潟県の三面川で各10万粒だったのに対し、2018年級は庄川において20万粒を放流した。試験的に調査した稚魚までの生残率は、結果が得られている3年間を通して74.7~97.8%であり、ふ化放流と同等の値であった。
・三面川において、発眼卵放流及び稚魚放流を共に実施した2016年級群の回帰率を調査するため、2019年に3歳魚として回帰・遡上したサケ成魚500個体を採捕し、年齢や放流履歴等を解析した。その結果、稚魚放流群については2月放流群で0.15%、3月放流群で0.03%含まれていたが、発眼卵放流した群は確認できなかった。その理由として、稚魚放流群と比べて発眼卵放流群の降海時期が遅く生残条件が悪かった可能性に加え、1回あたりのふ化放流数が約200万粒に対し、発眼卵放流の数が10万粒であり、現時点で回帰率を比較するには充分な数でなかった可能性があるため、試験継続を行う。
・発眼卵放流の回帰率を推定するとともに、コスト削減効果も考慮した上で導入に向けて検討する必要がある。
・河川回帰数に及ぼす影響について、北海道区水産研究所千歳さけます事業所から放流された2000~2018年級群の実際の放流履歴(実際の放流月日、放流時の種苗のサイズ)からシミュレーションしたところ、毎年の放流数が一定でも、いつ、どの位のサイズの種苗を、何尾放流するかにより、河川回帰数の期待値と安定性は大きく変動する可能性が示唆された。
・本州太平洋系サケにおける資源変動要因として過去に行われていた北海道からの卵の移入履歴を文献調査により取得し、北海道産の早期遡上群の卵の移入の有無が各河川の遡上資源の構成に影響し、資源変動要因の一つとなっている可能性が示唆された。
・本州太平洋系サケについて水温条件と給餌率を変えてサケ稚魚を飼育した結果、給餌率が低い場合に高水温条件下で低成長となりやすい特性が認められたことから、稚魚期の水温と餌密度が資源変動要因となりうることが示唆された。
・野生魚の生態特性として自然産卵由来の河川内の稚魚密度を調査した結果、稚魚が降海する時期の遅速は前年秋の産卵床の形成時期の遅速により説明可能であったが、産卵床数の多寡と稚魚密度数の関係は認められなかった。
・さけ・ます類の野生魚と放流魚の生態的特徴の比較を目的として、河川におけるサケ稚魚を調査した結果、放流魚に比べて野生魚の方がより多様な餌生物を積極的に摂餌していることが分かった。また、北海道サケの野生集団では放流集団よりも地域内集団間(河川間)に占める変異割合や遺伝的分化の程度が高いことが示唆された。石狩湾の定置網で漁獲されたサケについて遺伝的系群識別を行ったところ、放流魚だけでなく野生魚も漁業資源に貢献していると考えられた。北海道南部の18河川で自然産卵するサケ親魚の密度と繁殖盛期について河川区分(稚魚放流と親魚捕獲の有無)間で比較したところ、親魚捕獲が無く自然産卵が行われ、かつ稚魚放流がある河川ではそれ以外の河川と比べ回帰した産卵親魚密度が高いものの、放流数と回帰した産卵親魚密度の間に明確な関係性は認められず、再生産全体に占める自然産卵の寄与は少なくないことが示唆された。また、稚魚放流が無い自然産卵のみの河川では稚魚放流がある河川に比べ繁殖盛期にばらつきが見られ、放流により繁殖期が均質化している可能性が示された。
・水産資源保護法に基づくさけ・ます類の個体群維持を目的として、種苗生産を進め、ふ化放流を行った。また、民間ふ化場へのふ化放流技術の普及を行うと共に、増殖実態、幼稚魚生息環境、回帰親魚の資源量や個体群特性などのモニタリングを継続実施した。
・これまでに河川毎に収集した在来魚のDNA情報をもとに、イワナの在来・非在来を判別する遺伝的手法を用いて、都道府県水産試験研究機関からの判別依頼に対応した。
〔アウトカム〕
・ニホンウナギに関する国際的な要請(国際自然保護連合(IUCN)レッドリストの査読、四カ国地域非公式会合・科学者会合、東南アジア漁業開発センター内水面水産資源開発管理部局(SEAFDEC/IFRDMD)に対応した。
・長野県水産試験場及び栃木県黒川漁業協同組合に対し、外来魚対策に関する講演を2件行った。
・ドローンに生分解性ビニルひもを搭載してひもを張り、カワウを移動させる技術の実証試験(秋田県、山形県、栃木県、長野県、静岡県、滋賀県)を実施し、効果を確認した。都道府県、市町村、漁連、漁協、遊漁者団体等に対し、カワウ対策に関する講演を12回行った。カワウ対策マニュアルを作成した。
・都道府県や市町村、漁連、漁協、遊漁者団体等に対し、渓流魚・アユの資源管理に関する講演を10件行った。
・都道府県や市町村、漁連、漁協、遊漁者団体から依頼された講習会において遊漁振興に関する講演を8件行い、内水面関係の広報誌に内水面漁協の経営に関する普及啓発文が3件掲載された。
・富山県においてサクラマス発眼卵放流に関する技術指導を行った。
・本州日本海のサケ回帰状況について、関係県の協力の下、日本海区水産研究所ホームページ上で公表した。
・本州太平洋サケの回帰状況について、関係県の協力の下、東北区水産研究所ホームページ上で公表した。
・北太平洋溯河性魚類委員会(NPAFC)及び日ロ交渉に必要となる日本系さけ・ます類の漁獲情報等を提供し、国の施策(水産行政、条約実行、対外交渉)に貢献した。
・さけ・ます類の各種モニタリング調査や道県の協力を得て取得したデータを元に来遊状況を毎月1回の頻度で北海道区水産研究所ホームページに公表するとともに、1997年以降の関係道県によるモニタリングから得られた11道県のふ化放流及び資源データを取りまとめサーモンデータベースとして公表した。
・農林水産大臣が定めた放流計画に則り、サケ1億2千900万尾、カラフトマス720万尾、サクラマス270万尾、ベニザケ15万尾の放流を行った。
・関係道県に対し、さけます類放流についての技術普及と講習会を実施した。
カテゴリ 経営管理 コスト データベース ドローン 繁殖性改善 モニタリング

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