| 課題名 | (4)漁船漁業の安全性確保と持続的な発展のための研究開発 |
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| 課題番号 | 2019030637 |
| 研究機関名 |
水産総合研究センター |
| 協力分担関係 |
青森県産業技術センター 岩手県水産技術センター 富山県 京都府農林水産技術センター 岩手大学 東京海洋大学 大阪大学 神戸大学 (一社)海洋水産システム協会 日東製網株式会社 |
| 研究期間 | 2016-2020 |
| 年度 | 2019 |
| 摘要 | ・漁業調査船たか丸を用いて、設置したサテライトコンパスから航行時の動揺を計測すると共に、波浪ブイ及び波浪レーダーから得られた周辺波浪データとの関係を調べた。その結果、サテライトコンパスの動揺から推定した周辺波浪は、波浪ブイ及び目視と比較的良い一致が見られた。一方、波浪レーダーによって得られたデータは、周期は良く一致するが、波高はあまり一致しなかった。従って、船体動揺から得られた波浪データの方が、精度が高いことがわかった。これらの情報を基に、高船齢と最新鋭のまき網漁船の比較を行った。この波浪データと船齢によって異なる復原性(傾いた船が元に戻ろうとする力)を元に転覆警報装置のアルゴリズムを再構築し、転覆警報装置の高度化を図った。 ・島根県沖合底びき網漁船に対して既存船と新提案船を用いた経営比較シミュレーションを実施した結果、40年間使用したとき、省エネ及び省人化した新提案漁船を使用することで約25%の利益増になることを示した。 ・養殖作業船に関して、既存船と提案した水素燃料電池船の推進性能、運動性能の比較を計算及び水槽実験にて実施し、水素燃料電池船における性能向上を確認した。 ・アジ、サバ、イワシまき網漁船を対象にして、高速航行時においても船速が大きく低下しないプロペラ保護装置を開発した。 ・安全性、作業性、居住性を向上させた新しい2そうびき沖合底びき網漁船を県に提案(一次案)した。新設計船は既存船から大型化(75トンから118トン)したが、推進馬力は同等の750kW未満となり、また船体動揺特性は既存船と大きく変化しないことをそれぞれ計算により確認した。これにより推進性能及び運動性能について新設計船に問題がないことを確認した。 ・船びき網について作業実態を調査し、揚網の際に船を移乗(船と船の間を移動)することで海中転落のリスクがあることや、陸揚げの際にコンベア等の高さが作業高さに合わず作業姿勢としては望ましくない状況があることを明らかにした。作業安全の確保や軽労化のための方策として、移乗時の監視の徹底等や、設備を作業高さに合わせること等が考えられた。 ・かき養殖における収穫期の海上作業による身体負担について分析した結果、筏上及び作業船上で前傾した姿勢で重量物を持ち上げる作業により、身体負担が大きいことを把握した。 ・省人・省力化対策としてのカツオ自動釣機については、さらなる釣獲能力の向上を目指した改良機を開発、実操業で使用することで張力検知感度を調整するとともに耐久性の問題点を把握して対処方針を示すなど、実用化に向けて進展した。 ・まぐろはえ縄では、枝糸を従来よりも短くした漁具仕様でも従来仕様と遜色ない漁獲が得られる傾向が認められ、今後の投揚縄機械化につながる成果となった。 ・熱帯インド洋漁場におけるカツオ、キハダ、メバチを対象にしたまき網漁業では、FADs(筏などを用い人工的に魚を集める装置)操業での混獲対策の一環として、まき網の目合を大きくすることにより小型魚を選択的に逃避させる効果について、平成30度に引き続き民間船と連携した比較試験を実施しデータを蓄積した。民間船(300 mm以上の大目合)と調査船(150 mmの小目合)の比較操業試験を実施し、大目網を使用することで、メバチ小型魚の混獲の割合を減少させる可能性が示唆された。 ・また、音響による魚種判別手法の開発、シミュレーションとバイオロギング(生物に小型の記録計を装着して行動を追跡する手法)を併用した漁獲過程の可視化試験を実施し、メバチ小型個体の漁獲を軽減する操業方法に関する知見を蓄積した。 ・さらに、海洋プラスチック問題やサメ類・海亀類の混獲に対応するため、生分解性素材で構成された網目を用いないFADsを試作した。 ・新潟県上越沖の小型底びき網(かけまわし)について、潮流と操業実態、漁獲状況の検討を進めた。事故網(特に破網)は、深場では沖から岸に潮が流れる入り潮時、浅場では逆向きの出潮時に発生しやすい傾向が認められ、漁獲物であるニギスは入り潮の方が入網しやすい傾向があった。カレイ網の目合拡大の改良の結果、有用魚は通常の網と同程度漁獲でき、体長200 mm未満の小型個体で60%排出されていることが示唆された。 ・小型の無人ヘリコプターによる魚群探索の実証に向けて、漁船上での無人ヘリコプターの離発着試験・通信試験・電波干渉試験を実施した。風速10m/秒でも離発着可能であり、また、振動防止装置を施すこと及び映像データの圧縮方法を工夫した装置を導入し、画像のブレの軽減と画質の改善を確認するなど、漁場での実証に向けて知見を蓄積し、課題を抽出した。 ・近海かつお釣りでは、小型化した船舶を用いた短期操業を可能とするため、ポップアップアーカイバルタグ(一定時間が経過すると装着された生物から切り離されて海面に浮上し、記録したデータや浮上位置を人工衛星に送信する機能を持つタグ:PAT)を装着したカツオの放流など新たな漁場探索技術開発に取組んだ。その結果、PATの浮上位置と漁場が一致したケースがあり、漁場探索の効率化(探索時間の短縮)が図られる可能性が示唆された。また、暖水の張り出しに沿ってカツオが回遊をしていることが示唆されたことから、新たな漁場探索方法の可能性が考えられた。 ・遠洋かつお釣り漁で餌として用いる活イワシを船上で維持するための閉鎖循環飼育設備について、最大規模(活餌10魚倉分:283kL)の実証試験を実施し、最大で0.43kL/日(低温活餌飼育システムで使用する燃料の23.6%相当)の燃料を削減した。閉鎖循環飼育設備のろ過装置により、活魚飼育に悪影響がないレベルに抑えることができるアンモニア除去効果を確認した。さらに、閉鎖循環飼育の際に問題となっていた飼育水の白濁化対策について、死亡したカタクチイワシの除去が有効であると推察された。 ・操業時以外の閉鎖循環飼育システム管理として、ろ過パイプを港湾上で長期保管してもろ材の硝化能力(毒性が強いアンモニアから毒性が弱い硝酸塩や亜硝酸塩を生じる微生物の作用)が消失していないことを確認し、システム保守に活用できる知見を得た。 ・平成30年度から令和元年度にかけて、定置網漁業を対象に生産から販売までの調査を行った。その結果、漁業者側に市場取引に係る情報が不足することによる販売単価の低迷と、漁獲する魚種と漁場環境に係る情報が不足し計画的な生産が行えず操業コストが上昇するという2つの課題が明らかになった。改善策として、生産-流通間の双方向の情報交流による販売支援情報、魚探による魚種判別情報や潮流情報による漁獲・操業支援情報を装備したICT-IoTシステム(インターネットに接続された機器を利用した双方向の情報伝達技術)を構築した。その運用を通じて販売単価の向上と操業コストの低減効果を検証することとし、販売利益と操業コストの最適化を図ることができ、かつ長期的に経営持続性を得られる沿岸漁業のビジネスモデルの仕組みを提示した。 ・省エネルギー漁具を用い、底びき網漁業(板びき網)において、船速が漁獲に与える影響を評価した。低速(2.5 ノット:1ノット =時速1.85km)、標準(3.0 ノット)、高速(3.2 ノット~3.3 ノット)までの3段階の船速で小型底びき網を曳網し、漁獲物を比較した。主要魚種のうち比較的多く漁獲されたホウボウ、ネズッポ、メイタガレイ、チダイは、いずれも単位曳網時間あたり漁獲量に船速間の有意差が認められなかった。このことから、船速の抑制により省エネルギーの実現と漁獲量の維持を両立できる可能性があることを示した。 ・底びき網(かけまわし)の入口部分の構造を改良した漁具を導入することにより、クモヒトデ等の不要物の入網量の低減及び漁獲対象種であるトヤマエビの入網が認められた。不要物が減少したことで漁獲物が傷つきにくくなり、活魚出荷が可能になった。また、選別作業の省力化が図られた。これにより、不要物の入網抑制と一定以上の漁獲量の確保を両立する漁具改良方針の基本を確立した。新たに取り組んだ陸上の短期蓄養水槽を活用したトヤマエビ活魚の出荷調整等の結果、単価向上がみられた。 ・いか釣り漁船における船体周辺の光環境の最適化を図るため、LED船上灯の設置角度の変更及び光源下への遮光板の設置を行った。それぞれの状況下での放射照度測定を行い、遠方ではいずれの条件でもほぼ同様の傾向であるのに対して、船体周辺の照度は条件によっては減少していることを確認した。船下及び周辺の陰影部を確保できることは、船体周辺にイカを誘引・確保することに有利であることが推定された。アカイカについては、条件設定等を検討する必要があるものの、実際の漁船による操業結果に近い漁獲が得られることが確認できた。 ・イカ釣り漁業などでのLED漁灯導入には温室効果ガスの削減効果が見込まれる一方、導入コストなどの普及を阻害する要因も存在する。このような、温室効果ガス削減に係る要素技術を取り巻く社会環境などを分析し、要素技術の社会実装に向けた課題(漁獲量への影響に対する漁業者の懸念など)を抽出した。これを元に、漁業者等の温室効果ガス削減の取組み実施の判断を支援するため、イカ釣り漁業を例に、LED漁灯を導入することで漁家経営へどのような影響があるかを検討するための基本モデルを作成した。 ・海洋情報に基づいてアカイカ漁獲調査を実施した。通常の主漁期・漁場(5~7月の日付変更線付近、1~2月の三陸沖)以外の8月の西経域に好漁場を発見した。 ・日韓暫定水域外の残置漁具(底刺網・カゴ網等)回収データを入手・解析し、単位漁具当たり罹網個体数(網に罹った個体数)底刺網で0.32個体/m及びカゴ網で0.21個体/カゴを得た。これとサイドスキャンソナーを用いた残置漁具調査で発見した漁具の密度から、漁具の回収ができない暫定水域境界上の調査範囲内(48 k㎡)で罹網したオスのズワイガニは452個体数であると推定された。 ・業界関係者等に対して、増大したマイワシの漁獲や加工施設等に関する情報収集とニーズ把握のための意見交換を実施した。国内利用のうちミール加工以外の利用形態ではサイズ選別が必須であること、いずれのケースでも設備投資の必要性があり、その際には費用対効果と中長期の資源量の動向が重要であることが示された。国内の利活用拡大には、他魚種との関係を含む需給バランス等を考慮の上、関係機関間の綿密な調整が必要であり、新たな漁業形態、洋上での加工・輸出、養殖魚の輸出拡大に必要な生餌の供給の観点から、引き続きの検討が必要との結論に達した。 〔アウトカム〕 ・波高、波向、波周期を推定する「海象推定装置及び海象推定方法」(特許第6558760号)を活用した装置に関して、東京都の新造調査船へ試験的に搭載するとともに、既存の3隻への搭載も検討が進められている。 ・模型船試験により、船舶復原性の国際基準である「第2世代復原性基準」の日本案策定のための基礎データを取得し、国際海事機関(IMO)第7回船舶設計・建造小委員会(令和2年2月)への日本提出文書に反映された。 ・開発したプロペラ保護装置の特許申請を行うとともに、令和2年3月に就航したまき網船団の灯船に実装された。 ・平成30年度までに取り組んだウェザールーティング(気象・海象情報などに基づく最適航路の設定)技術は漁船漁業構造改革計画に採用され、既に宮城県の遠洋まぐろはえ縄漁船1隻に導入されたほか、静岡県の遠洋かつお1本釣り漁業を対象とした「もうかる漁業プロジェクト」では8隻に導入される計画である。 ・水産庁補助事業「漁業安全対策推進事業」において実施されている漁業カイゼン講習会や、都道府県等が実施している労働安全や軽労化支援スーツに関する研修会等の講師を引き受け、成果の普及に努めた。 ・熱帯インド洋漁場について蓄積された知見は漁船漁業構造改革プロジェクトの計画立案の参考資料として用いられ、新造された海外まき網漁船が熱帯インド洋に出漁する成果につながった。 ・かつお釣り漁業において実施したポップアップアーカイバルタグによる魚群の移動情報は、その都度民間船に共有され、漁場探索に活用されている。 ・底びき網において確立した基本的な漁具改良方針について、秋田県の漁業者や研究者、行政担当者に情報提供し、これを受け秋田県では当該漁具の導入に係る補助を検討している。 ・漁具改良と高付加価値化による収益構造の改善は、他地域・他漁業種へ拡大できる可能性があり、漁業経営の継続、発展に寄与することが期待される。 ・アカイカの新規漁期・漁場において、実際に漁船が操業を行った結果、通常漁期・漁場(約3,900トン)とほぼ同等(約3,200トン)の漁獲量が得られた。 |
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