2-(4)漁船漁業の安全性確保と持続的な発展のための研究開発

課題名 2-(4)漁船漁業の安全性確保と持続的な発展のための研究開発
研究機関名 国立研究開発法人水産研究・教育機構 開発調査センター
漁業第一グループ
漁業第二グループ
漁業第三グループ
実証化企画室
養殖システムグループ
開発業務課
国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所
水産資源研究センター社会・生態系システム部 漁業管理グループ
水産資源研究センター底魚資源部
水産資源研究センター底魚資源部 底魚第3グループ
水産資源研究センター浮魚資源部 浮魚第3グループ
水産資源研究センター海洋環境部 暖流第3グループ
水産資源研究センター生命情報解析部 ゲノム情報解析グループ
国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所
環境・応用部門水産工学部 漁業生産工学グループ
環境・応用部門水産物応用開発部 付加価値向上グループ
養殖部門生産技術部 技術開発第1グループ
養殖部門生産技術部 技術開発第2グループ
養殖部門病理部 病原体グループ
環境・応用部門沿岸生態システム部 温帯浅海域第1グループ
国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校
海洋生産管理学科
水産流通経営学科
協力分担関係 東京海洋大学
神奈川県水産技術センター
富山県
京都府農林水産技術センター
ホクモウ(株)
(株)ホリエイ
伊根浦漁業(株)
鷲北漁業部
日東製網(株)
(一社)海洋水産システム協会
研究期間 2016-2020
年度 2020
摘要 ・漁船の安全性について、転覆警報装置の根幹をなす波浪計測手法の改良を行い、その精度検証を行った。具体的には、漁業調査船たか丸に搭載した改良型波浪計測装置と、較正済みの投入型波浪計測ブイの計測結果を比較することで、波浪計測装置によって停船及び低速航行時にも周辺波浪を高精度に計測できることを確認した。さらに、まき網船団のまき網本船及び灯船に改良型波浪計測装置を取り付け、同海域を航行中に波浪を計測して、違う船種・船型でも高精度に計測ができることを確認し、転覆警報装置の高度化を終了した。また、沖合底びき網漁船の次世代型船型を検討し、波浪中を含めた船の安全性能を向上させた。この新型船型と転覆警報装置の組合せを、具体的な次世代型漁船像として提案した。
・洋上作業船、潜水支援海洋調査船、カーフェリーについて、主に追波中の転覆現象について模型実験を大阪大学と共に実施し、波乗り現象から復元性喪失現象、さらに転覆現象にいたる波高と波向き等に関するデータを計測した。
・令和元年度に開発した高速度域においても船速低下がほとんどない新型のプロペラガードについて特許申請するとともに、実際の漁船に装備して性能や構造等に問題が無いことを確認した。
・船びき網漁業についてはコロナ禍により調査が実施できなかったが、過去の調査結果を含め生産現場における作業の事例を整理し特徴と問題点を取りまとめ、漁港での陸上げ時における作業負荷低減のための運搬用台車の導入等の改善方策を提示した。カキ養殖業については令和2年度までに取りまとめた特徴と問題点に基づいて考えられる改善方策として、養殖筏の改造による足場の安定性向上や作業姿勢の改善等を提示した。
・労災発生率の高い沿岸底びき網漁業において、安全性向上のため、災害事例や改善事例の実態調査を行い、その結果にもとづいて安全点検マニュアルを作成し、全国漁業就業者確保育成センターウェブサイトで公開予定。
・自動かつお釣機について、漁船を用いた調査において、改良を加えた機器を使用した実証試験を実施した。動作設定の最適化に向けて複数パターンによる釣獲試験を行い、それぞれにおいて釣獲能力を評価した。また、張力検知機能の追加により針掛かり未検知の減少等の効果を確認した。
・新たに設計、製作したかけまわし用の底びき網漁具を用いた操業実験を行い、実使用における問題点とその解決方策を検討した。新規漁具の製作にあたってコンピュータシミュレーションを活用した漁具設計手法を採用し、省エネ化に向けた漁具抵抗の検討を行った。効率的な操業を行うための改良漁具及び新規漁具を用いて操業試験を行い、泥やヒトデ類等の不要物の入網を大幅に減らすことで、作業効率の向上を図り、改良漁具は調査地域の当業他船への普及に至った。また、トヤマエビの活出荷により単価が向上することを再確認するとともに、ウロコメガレイを産地において一次加工することで、付加価値の向上と新たな販路の開拓を行った。
・定置網の漁獲情報と流通側の需要情報を双方で交流させるICTシステムについて、プロトタイプを使用した運用を行い、使用者の評価に基づいて改善点を抽出し改修して完成させた。新たな調査地(佐賀県玄海地区に所在する定置網)において、収益性の向上を図るための手法の検証を開始した。生産者と流通業者双方の利益を最大化するツールとして、上記ICTの活用のほか、流向流速等の海洋環境条件等をリアルタイムに取得するシステムを導入した。検証の方法として、実際の操業において同システムを運用し、無駄な出漁や運搬コストの削減効果を検証すること、また上記ICTを介して得られた需要情報に基づいて出漁の可否の判断を行うなど、漁業者の合理的な操業判断支援による収益性効果を総合的に検証しコスト削減による収益性の向上を確認した。
・沖合底びき網漁船を対象に現状を発展させた新設計案に対して、抵抗推進性能及び波浪中船体動揺模型実験を実施し、性能上、問題ないことを確認した。作業分析に基づく更なる改善設計案を提案した。船体の幅広化による船体安全性を確保しながら、船型改良、空力デザイン採用により省エネを達成した(数値計算上10%以上)。養殖作業船については、実在する19トン型養殖作業船と新型船型船について模型船試験により性能を比較し、5%以上の省エネ化を確認した。
・LED(発光ダイオード)漁灯を利用してアカイカ及びスルメイカを対象とした操業において燃油消費量の削減による省エネ効果を再評価するための操業試験を行った。アカイカを対象とした場合では、従来から使われているメタルハライド(MH)灯を使用する他船の漁獲を上回り、スルメイカを対象とした場合では、その資源状況によって変動するものの最大9割程度の漁獲が得られることを確認した。また、燃油消費量については、約3割削減可能であることを確認した。
・より多くの漁業者に当該成果の周知を行うことを目的に、この結果も含めて、これまでの成果をLED漁灯利用ガイドにまとめ、本技術の普及及び活用を図った。
・小型底びき網用漁具(オッタートロール及び桁網)を、船速を変えて曳網し、漁獲性能との関係を調べた。漁獲性能と船速との関係を評価するための解析を行い、着底性の魚種を主な漁獲対象とすれば、網高さ及び船速を現状よりある程度小さくしても漁獲性能に大差が無く、省エネルギー効果により収益性は向上することがわかった。これまでの成果を整理し、漁獲性能を考慮した省エネルギー漁法・漁具設計例を提示した。
・漁業練習船天鷹丸調査にて、サイドスキャンソナー及び計量魚群探知機を用い、日本海西部海域において放置・逸失漁具の種類、位置、数量等を把握した。本調査で得られた漁具に関する情報は、海底清掃に参加する民間企業(天鷹丸とは別にサイドスキャンソナー調査を実施し、漁具情報を収集している)に報告することで既存の情報網に追加された。漁具を効率的にピンポイントで回収できるように、位置に加え設置方向も合わせて報告した。
・中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)にて採択された、FADs(集魚装置)への絡みによるサメ類、海亀類の混獲や海洋プラスチック問題に関連する保存管理措置に対応して、エコFADs(生物が絡まないFADs、生分解性素材を用いたFADs)の実用化に向けた試験を行った。これまで主にプラスチック素材が使用されてきたFADsに変えて、麻などの自然素材や生分解性プラスチックで構成したエコFADsを放流して、マグロ類の蝟集状況や耐久性を調査した。麻などの自然素材では強度不足による破損や脱落が認められ、蝟集機能も消失してしまうことから、材質や構造を改善して引き続き調査を行うこととした。
・定置網の小型マグロ混獲回避技術の開発と実証試験を、それぞれの地域の特性にあわせて実施した。のれん網目合の最適化(京都府海域)、マグロ放流用スロープや緊急放流口付落網の検討(富山県海域)、吊下げ網の効果分析(神奈川県海域)を行った。
・新潟県上越地区において小型底びき網(かけまわし)漁業のカレイ漁を営む漁業者に操業日誌の記載を依頼し、ムシガレイ、ソウハチ、ヤナギムシガレイ等のカレイ漁場におけるそれぞれの種の出現状況を調査した。漁場水温や調査船データ等との関係を確認し、カレイ類数種を保護しながら利用する最適な操業形態を検討し、従来網と小型魚を排出する改良網との時期的な使い分けによる操業形態を提案した。
・経営改善のための技術導入等の取組みに関する課題と対応策を体系化することを目的とし、沖合底びき網及び定置網漁業のもうかる漁業事業認定改革計画書の計39件について分析した。労働環境の改善、資源管理と相乗効果の期待される手段としてそれぞれ漁獲物の高付加価値化、人件費及び燃油費削減を特定した。
〔アウトカム〕
・「海象推定装置及び海象推定方法」(特許第6558760号)を用いた転覆警報装置に関して、東京都の新造調査船へ搭載中。また、まき網の網船2隻、灯船1隻に搭載された。
・船の転覆に対する復元力の目安となる「横メタセンタ高さ推定装置及び横メタセンタ高さ推定方法」(特許6610898号)について、内航コンテナ船の会社が搭載を検討している。
・底びき網調査では、不要物の入網抑制と一定以上の漁獲量の確保を両立する漁具への基本的な改良方針の確立を達成し、この結果を用いた漁具を秋田県の漁業者が導入し始めた。
・トヤマエビ活魚出荷、ウロコメガレイの産地一次加工による高付加価値化で収益構造の改善が図られ、漁業経営の継続・発展に寄与した。
・島根県水産技術センターとの共同研究課題において、浜田港の高度衛生管理型漁港における漁獲物の取り扱いを考慮した島根県沖底漁業の持続的発展に資する新しい漁船像の創出に、現状を発展させた新設計案が活用された。
・本研究課題で得られた成果は、残置漁具回収作業の効率化、操業の効率化、安全性向上、不合理漁獲の低減に寄与し、日韓漁業交渉の基礎資料としても利用され、漁業の持続、資源・生態系の保全に貢献している。
・転覆現象について得られたデータは、国際海事機関の第2世代復原性基準策定に関する専門家会議への日本提案の基礎データとして使われた。
・共同で特許を出願した漁業者が、新型プロペラガードを取り付けたまき網灯船を使用中である。
カテゴリ ICT 加工 経営管理 高付加価値 コスト 出荷調整 省エネ・低コスト化

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