3-(1)漁業・養殖業の経営安定に資する生産システムの現場実装

課題名 3-(1)漁業・養殖業の経営安定に資する生産システムの現場実装
研究機関名 国立研究開発法人水産研究・教育機構
研究分担 開発調査センター
協力分担関係 島根大学
東海大学
研究期間 2021-2025
年度 2021
摘要 ・新規漁具の改良試験を行い、底びき網での不要物の入網が低減し、有用魚種の漁獲能力が維持されることを実証した。
・無人航空機は、海外まき網漁業の南方漁場での実操業で運用試験を実施し、魚群映像伝送距離と画質を評価した。これまで魚群の有無が判別できる高画質な映像を伝送できなかったが、通信機能を改良することにより 10 マイル程度まで伝送可能になるなど改善された。
・かつお一本釣り漁業に係る自動釣り機では、実操業においてカツオに対する釣獲能力の改善とビンナガに対する釣獲能力の確認を行った。動作設定を魚群ごとの個体サイズに合わせて調整することで、釣獲能力が改善された。釣り機とその横で釣る乗組員の釣獲尾数を比較した結果は、対人比カツオ 93.3%(令和2年度 48.8%)、ビンナガ116.1%であった。また、自動釣り機の複数台導入に向けた実証も開始した。
・定置網漁業において、漁業者と産地仲買人等との間で、漁海況と市場の情報をリアルタイム共有する ICT システムを整備し、試験運用を開始した。水揚前に漁獲情報を産地仲買人に提供した場合と、脂肪含量に関する情報を連絡した場合とを、それぞれ通常通り連絡しない場合と比較し、その価格差を検証した。その結果、両実験でそれぞれ価格が上昇する事例が確認された。事前情報の提供により、産地仲買人から出荷先への情報提供や信頼確保に繋がるものと考えられた。
・遠洋かつお釣り漁業において、衛星標識(ポップアップアーカイバルタグ)を活用した魚群探索の確立に向けて現場試験を行った。課題である標識の早期脱落の防止と長期間追跡の実現に向けて、複数のフック状金具で標識を魚体に固定する方法が現時点では最も効果的である傾向が見られた。令和2年度は最長で5日間であったが最長16日間の追跡に成功した。漁場の形成位置は標識魚の浮上位置を追うように変化し魚群の追跡に使用可能な情報であることを確認した。
・複数魚種を柔軟に利用可能とする操業形態の漁業現場への導入に向けて以下のように課題を整理した。
①我が国の新たな資源管理方策に基づいた科学的な資源評価結果に基づいた魚種選択。
②複数魚種の漁獲対応には主として3つの形態(1)同一船で複数漁法、(2)同一漁法での複数漁具による対応、(3)同一漁具漁法による対応が考えられ、対象魚種に応じた選択が必要。
③温暖化対策や担い手不足に対応するため、省人・省力化技術の導入。
④流通加工ニーズや漁場の遠隔化等に対応するため、製品生産方法及び水揚げ地にも選択肢が必要と考えられ、生鮮製品の鮮度保持期間の延長や船上冷凍など漁獲物の鮮度管理技術を検討。
・秋田県沖の底びき網では、出荷が限られていたクモダコ・貝類等の未利用魚種の利用を促進するため、継続的に水揚げを行い市場流通させて、認知度を高め、加工あるいは小売り向けの利用が促進されることで、取組み当初よりも単価の向上が認められた。
・定置網漁業の ICT システムにおいて、脂肪含量情報を扱えるよう改善を図った。併せて、近赤外分光法による高機能の脂肪含量測定装置を用いて、マアジの脂肪含量を生産現場で測定できるよう、検量線の作成を進めている。
・ブリの育種に関しては、3 世代後に従来の 1.33 倍の高成長系統を作出することを目標に、異なる形質を持つ親をかけ合わせ、その第 1 世代の子(F1=育種第1世代)の第1群(F1(1)群)の最終選抜、F1(2)群の一次、二次選抜を行った。また、F1(3)群の種苗生産及び親魚養成を開始し、それぞれ順調に進捗している。
・ブリ養殖に関して、受精卵及び人工種苗に関するニーズ調査並びに利用希望業者への供給を通じて、春先の天然種苗より3~6か月早い時期に人工種苗を確保して早期出荷を目指した“8~12 月の受精卵・人工種苗のニーズ”の高いことが確認された。
・10 月にブリ養殖を開始するための種苗の生産では、計画通り6か月早く4月に体重4kg に達したが、この時点で成熟により身が痩せたため、出荷を遅らせる事例が発生した。これに対応するため、成熟する前に出荷する等の対策をとる必要性が認められた。
・技術移転に関しては、9者30件の研修を実施し、公益社団法人大分県漁業公社及び公益財団法人かごしま豊かな海づくり協会では採卵に成功し、一般財団法人宮崎県水産振興協会及びフィードワン株式会社では初めて種苗生産に成功した。
・令和3年度のブリ(モジャコ)天然種苗の深刻な不漁を受けて、水産庁・全海水が開催した「ブリ人工種苗増産にかかる検討会」において情報提供等を行った。また、水産庁、業界団体と相談の上で「ブリ人工種苗の飼育と品質に関する情報収集」を実施し、長崎県、熊本県、鹿児島県、大分県、愛媛県の養殖団体に、飼育データなどの情報提供を条件として余剰の人工種苗計 7 万尾を提供して養殖生産に活用してもらった。
・小型水槽及び大型水槽の双方で、スジアラ当歳魚を用いて高密度飼育試験を実施した。
・両水槽試験において成長及び生産経費のデータ蓄積を進め、大型水槽においては、飼育作業を精査(作業内容と時間)し、従来よりも飼育水位を下げる方法等によって、約 30%作業が効率化し、これに伴うコスト削減の可能性も示された。
・新型コロナウイルス感染拡大の影響により、沖縄県において販路拡大には至らなかったが、首都圏においては新規商談3件のうち1 件で550kg の鮮魚を販売(3千円/kg)した。
・新たにサンプル提供した販売先・商談先においても、養殖スジアラの味の評価は高く、商材としての価値が再確認された。
・シンガポールのレストランへの鮮魚サンプル提供及び、台湾への輸出打診等を実施したが、いずれも販売価格が折り合わず商談不成立となった。このように輸出について情報収集し、鮮魚輸出の可能性が確認できたが、現状では、価格面からいずれも採算がとれず、輸出は厳しいことを確認した。
〔アウトカム〕
・改良した新規漁具の漁獲能力と作業軽減効果等が認知され、秋田県の漁業者支援事業に活用されて、地元漁船5隻に導入された。
・漁業者と産地仲買人との共同による ICT システムの試験運用結果と、現場での日々の情報交換から、当該システムを活用した情報交流が付加価値向上につながる効果のあることが示唆され、漁協とのシステム連携に繫がるとともに、民間業者 13 者がシステム試験運用に協力し、社会実装に向けて進捗している。
・定置網漁業における漁具の挙動把握や ICT システムの実証調査を参考に、佐賀県が小型定置網漁業の漁具改良やスマート化を目指す事業を開始した。
・試験船だけでなく、実際に操業に従事する当業船全船と衛星標識の浮上位置情報をリアルタイムで共有することで、漁場探索の効率化に寄与した。
・遠洋かつお釣り漁業において、標識魚の浮上位置情報を実際に操業に従事する当業船とリアルタイムで共有することで、調査中の標識浮上期間(5 月 15~25 日)の漁場探索の効率化に寄与し、20 隻で1,426 トンの漁獲(約 50 千万円@350 円/kg)につながった。
・単価向上が認められたクモダコ等の未利用魚種は、当業船でも水揚げされるようになり、価格も取組当初より向上した。
・民間業者との連携で F1 群の最終選抜まで完了し、育種が順調に進んでいることから、業界の認知や技術向上に寄与している。
・天然種苗に依存しない周年出荷可能なブリ養殖業の確立及び普及に向け、人工種苗を取り扱える養殖業者の増加と、養殖現場で必要とされる知見の蓄積が進んでいる。
・養殖現場ニーズに合わせ、様々な時期・方法で技術移転を実施し、フォローアップも併せて取り組んだことにより、養殖業者の技術のレベルアップも図られ、ブリ人工種苗の利用普及に向けた基盤環境作りが進んだ。
・全国展開する宅配寿司店に養殖スジアラ 550kg、3千円/kg での販売が成立したことは、一般消費者に対し養殖スジアラという食材を知ってもらう良い認知機会となった。
カテゴリ ICT 育種 温暖化対策 加工 管理技術 経営管理 コスト 出荷調整 省力化 ニーズ分析 輸出

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