摘要 |
本研究は水田害虫の総合的管理を実現するために卵寄生蜂を生物的防除に活用する上で必要な情報を得ることを目的とした。まず野外でツマグロヨコバイの卵寄生蜂を調査し、2科6種を同定した。優占種は、Paracentrobia andoiとGonatocerus spp.であった。さらに蛹期間の湿度、飼育手順を検討して6種蜂の増殖法を確立した。次いでP.andoi、Oligosita shibuyae、Oligosita sp.の3種について蛹期間は乾燥にやや強いこと、低温の影響が少ないことを見いだし、冷蔵庫での保存法を確立した。これらにより遺伝資源としての保存および実験のための安定供給が可能になり、室内でそれぞれの発育零点、温度別の産卵数、成虫寿命等を確認できた。次に、P.andoiの利用について検討を行った。ツマグロヨコバイの個体数が増える8月に水田に放蜂してその効果を調査したところ、株当たり1~8頭の間では蜂数が多いほど被寄生卵数は多くなったが、自然発生の蜂による被寄生卵数のほうがはるかに多かった。人為的な増殖では自然発生の蜂数に匹敵する数を準備するのは困難と考えられたので、ツマグロヨコバイの卵寄生蜂の天敵としての利用には、蜂の放蜂よりも自然発生の蜂の保全や増殖しやすい環境づくりを行うほうが実用的、効果的という結論を得た。
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