(1)農業生態系を構成する生物群集の動態と生物多様性の解明

課題名 (1)農業生態系を構成する生物群集の動態と生物多様性の解明
課題番号 200709652
研究機関名 農業環境技術研究所
研究分担 農業環境技術研究所,生物多様性研究領域
協力分担関係 名古屋大
研究期間 2006-2010
年度 2007
摘要 生物相の動態については、以下の具体的成果が得られた。その結果、中期計画で目標としている農地とその周辺域の生物多様性の動態の調査や、農地における耕起や転作・休耕等の管理方法の変化等が生物多様性に及ぼす影響の解明について重要な知見が得られた。また、普及に移しうる成果として「細菌・糸状菌・線虫に関するDGGE土壌解析マニュアル」が作成・公表され、今後の土壌生物研究への貢献が見込まれる。1) 利根川流域のモニタリング地区における第2回植生調査と土地被覆データの更新を行い、景観構造の変動が種構成に及ぼす影響の解析が可能となった。その結果から、復田の進行が放棄水田の植物群落の遷移程度によって異なることを解明した。2) 調査・情報システムについて、複数データの統合的運用に向けた全データ共通の仕様を設定した。複数年次にわたる広域の景観構造、生物分布に関する統合的データセットを「調査・情報システム」に構築したことにより、農法や景観構造の変動が生物多様性に及ぼす影響の解明に向けて大きく前進した。本「調査・情報システム」は、国際的な情報発信に努めた結果、OECDによるレビューが継続的に行われ、韓国では自国における応用について検討が、スイスでは欧州諸国の手法との比較検討が行われている。3) 前年度にマニュアル化されたPCR-DGGE標準法について、細菌、糸状菌に関するプライマーセットの特徴と、その標準法による検出限界を明らかにし、同様に線虫においても本標準法の検出限界を示した。さらに圃場サンプルを適用して、本標準法により様々な土壌の微生物群集を効率よくバンドパターンとして指標化できることを確認した。4) これらの成果に基づき「細菌・糸状菌・線虫に関するDGGE土壌解析マニュアル」を作成し公表した。これにより、国内で統一的な土壌生物相の評価が可能となり、土壌生物相の診断技術開発への多大な貢献が期待されている。5) 灰色低地土からより多くの長鎖DNAを抽出する条件を明らかにするとともに、RNA添加が長鎖DNA抽出の難しい土壌からの抽出に有効なことを示した。農地の管理方法や景観構造の変化が生物相に及ぼす影響については、以下の具体的成果が得られ、中期計画で目標とする農業活動の変化に伴う指標昆虫等の生物個体群の動態予測モデル構築における、化学資材の使用の長期的影響についてのモデルが構築された。1) 農業活動が鳥類に及ぼす影響を明らかにするために、霞ヶ浦南岸の水田割合とチュウサギ個体の空間分布との関係を解析した結果、4月後半のハス田、5月から6月上旬までは未整備水田等が多く利用されていることを解明した。これにより、水田環境の多様性が、夏季の水田を採餌場所とする鳥類の生息に正の影響を及ぼすことがわかった。2) 化学資材の使用が植生に及ぼす長期的影響を解明するため、絶滅危惧種であり水田除草剤感受性が高いタコノアシについて、生活史段階毎の除草剤毒性に基づき、内的自然増加率(与えられた環境条件の中で対象種が示す最大の個体数増加率)と除草剤濃度の関係を示す非線形モデルを構築した。3) ため池と周辺の地理情報を用いてトンボ指標種の生息種数を予測するモデルを作成した。本モデルから、ため池周辺の土地利用変化の影響を予測し、周辺樹林地割合とコンクリート護岸率の影響が大きいことを解明した。平成18年度の鳥類の生息ポテンシャル評価モデルに続き、タコノアシの個体群存続性の予測モデル、トンボ指標種の生息種数予測モデルを構築したことは、個体群の安定化要因の解明に貢献する。
カテゴリ 病害虫 除草剤 診断技術 水田 モニタリング

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