課題名 |
自給飼料をベースとした安全安心畜産物生産システムの確立 |
研究機関名 |
岩手県農業研究センター
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研究分担 |
飼料生産
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研究期間 |
新H15~17 |
年度 |
2003 |
摘要 |
目的:(1) 背景(i) 県は、大家畜生産の基本計画として「岩手県酪農・肉用牛生産近代化計画(平成13年3月)」を策定し、資源循環利用による良質な自給粗飼料生産の拡大を基本に(飼料自給率現状26%、H22目標46%)、土地基盤に立脚した経営体を育成することとしているが、担い手の高齢化等から飼料自給率は低下傾向にあり、また堆肥の土地還元も滞りがちで環境汚染の原因ともなっている。(ii) とうもろこし、ソルガム等の長大型飼料作物は、多収で牧草に比べ濃厚飼料代替性の高い飼料であり、家畜糞尿も毎年施用することから、飼料自給率向上や資源循環型畜産経営の構築に重要な作物であるが、組み作業が多いことなど労働負担が大きく、またサイロ等の貯蔵施設が必要など流通困難で、有機質の連用条件下に対応した地力評価に基づく適正な糞尿施用基準もないことから品質への不安もあり、近年栽培面積は減少傾向にある。 (iii) 一方、家畜飼養の現場では消費者の食の安全に対する意識の高まりから、国産飼料の利用拡大や有機飼料作物栽培が大きな課題となっている。長大型飼料作物は栄養的に優れていることから、安全・安心な国産飼料として需要は高まってきているが、大家畜経営の大規模化の進展の中で自家生産には限界があり、外部からの供給も望まれている。 (iv) 長大型飼料作物の一般的給与技術は、乳肉とも確立されているが、本県の特産である日本短角種は、「自然、安全、安心」をコンセプトとして産直取引されており、品種の特性を活かしたイメージアップ戦略を図るため、地域内飼料資源を最大限に活用した生産技術の確立が望まれている。 (2) 目的 地力に応じた堆肥施用法の解明と技術活用による有機飼料作物の栽培技術の確立(農薬を使わない雑草防除技術は継続課題で取り組む。)、長大型飼料作物の収穫調製作業の効率化技術や長大型飼料作物ラップサイレージの生産供給システムモデルの作成、全期粗飼料多給肥育技術の確立などを行い、自給飼料を基幹とした大家畜の生産システムを構築することを目的とする。到達目標:(1)有機飼料作物生産をめざした地力評価に基づく施肥法の確立 (2)長大型飼料作物ラップサイレージの調製・品質保持技術の確立 (3)長大型飼料作物ラップサイレージの生産・供給システムの構築 (4)日本短角種の全期粗飼料多給型肥育技術の確立 (5)消費者に向けた安全安心な牛肉生産・流通評価基準の確立予定成果(初年目):【有機飼料作物生産をめざした地力評価に基づく施肥法の確立】 ・飼料畑の可給態窒素と飼料作物の収量との関係の解明・牛糞生堆肥、化学肥料の窒素成分吸収率の把握と無機化窒素発現率の把握 【長大型飼料作物ラップサイレージの調製・品質保持技術の確立】 ・細断型ロールベーラのワンマン作業体系の確立 ・牧草用ハンドラーの改良によるハンドリング手法の確立 【長大型飼料作物ラップサイレージの生産・供給システムの構築】 【日本短角種の全期粗飼料多給型肥育技術の確立】粗全期飼料多給肥育試験開始 【消費者に向けた安全安心な牛肉生産・流通評価基準の確立】 ・生産・流通体系に関するアンケート項目の作成 ・牛肉の生産・流通に関する消費者意識の把握(1回目)期待効果:(1)適正な堆肥と肥料の施用による粗飼料の品質向上が図られるとともに有機飼料作物栽培をめざした施肥法が確立される。 (2)長大型飼料作物ラップ化により高品質で安定したサイレーイジの調製及び長期品質保持が可能 となり、従来困難であったとうもろこしサイレージ等の供給技術が確立される。この技術の広がりにより、遊休地等の利用による栽培面積の拡大、自給率の向上、家畜ふん尿の資源循環利用が期待される。 (3)生産・供給システムモデルの確立により、現地における合理的な生産体系や調製ロールの供給条件等が明らかにされる。 (4) とうもろこしサイレージ等の国産粗飼料を多給する肉牛生産が可能となる。 (5)消費者に軸足をおいた日本短角牛の新しい生産・流通評価基準や、近赤外分析等を利用した簡易な肉質評価法が確立され消費者に分かり易く牛肉の価値を表示・認証するこことが可能になる。成果:(1)1年を経過したベールでは、頂部に比較した底部の膨らみが、周囲長で4%程度の増加として認められた。概ね含水率74%を越えるベールでは廃汁の発生が認められた。(平成12年生物系特定産業技術研究推進機構) (2)長大型作物を細断してロールベール状に整形・梱包する長大型飼料作物ラップサイレージはベール径90cmに対し120cmと幅の広いネットで形状を保持される。材料は高密度で梱包され、径90cm×90cmのベールで現物平均重量は400kg前後に達する。なお、発酵品質は調製後1年以上安定して保持される。(平成13年 生物系特定産業技術研究推進機構) (3)輪作体系化の高冷地ソルガムを対象とし、作土及び下層土の可給態窒素の測定に基づいて窒素施用量を決定するシステムを開発した。(平成11年 長野県畜産試験場 生産環境部)(4)網走地方畑輪作における有機物窒素や土壌中の可給態窒素の評価法を検討し、テンサイに対する窒素施肥を指針を策定した。(平成13年 北海道農業試験場) (5)水稲施肥窒素量診断プログラムを改良することにより、家畜ふん堆肥及び土壌由来の窒素供給量を勘案した施肥診断が可能となった。(平成11年 愛知県農業試験場) (6)牧乾草及び牧草サイレージ飽食の条件では濃厚飼料多給区(濃厚飼料体重比1.2~1.6%)が濃厚飼料少給区(濃厚飼料体重比0.6~1.2%)より増体が優れていた。(青森畜試報告, 1972)(7)濃厚飼料1.4%制限の条件ではデントコーンサイレージ給与がヘイキューブ・乾草給与より増体量が優れていた。(岩手畜試研究報告,1979) (8)濃厚飼料を制限した区の複胃の生体重に対する割合は、濃厚飼料を飽食した区より高かった。(青森畜試報告,1981) (9)肥育前期から中期にデントコーンサイレージを多給した区は濃厚飼料多給肥育区と1日当たり増体量の差は認められなかった。(岩手畜研試験成績書,2001) (10)2種類の方法で肥育した日本短角種の食味試験を行い、その消費志向について分析した結果、粗飼料多給肥育した短角牛の赤肉は、消費志向が高いことがわかった。(東北農業試験場,1997) (11)黒毛和種・日本短角種・輸入牛肉を用いて食味試験を行い、来歴や品質との関連について調査したところ、来歴・品質は食味評価に強く影響を及ぼした。(東北農業試験場,1999)(12)近赤外分析法により、生体時に脂肪交雑を推定できることが明らかとなった。 (高知県畜産試験場,2000)
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研究対象 |
肉用牛・乳用牛
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戦略 |
畜産
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専門 |
飼養管理
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部門 |
牛
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カテゴリ |
有機農産物
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