摘要 |
目的:黒毛和種の肥育では、濃厚飼料を多給した飼養方式が一般的であるが、適正量の飼料給与が行われない場合には、栄養成分のロスによる飼料費の拡大だけでなく、過剰発生したアンモニア等の処理のために内臓に多大な負荷がかかり、牛の健康状態が損なわれる危険がある。実際、尿石症や内臓廃棄、筋肉水腫による枝肉廃棄が散発し、大きな経済的損失に直結している。そこで、飼料成分をルーメン消化性および非消化性(バイパス性)に分類し、ルーメンでの適正な消化量を考慮した飼料給与設計を行う。これにより、適正なルーメン発酵を促して効率的な飼料給与が行えるだけでなく、内臓への負担を減らした健康的な肥育技術を行うことで、内臓や枝肉廃棄等の経済損失の減少が期待できる。到達目標:ア バイパス性飼料給与が、増体性、血液成分等に与える影響を把握する。 イ 肥育におけるバイパス性飼料の特徴をつかみ、効率的な飼料設計を策定する。 ウ バイパス性飼料が肥育牛の健康、肉質へ与える影響を把握する。予定成果(初年目):飼料のバイパス性を調査し、飼料設計を行う。試験牛導入1回目肥育試験の開始期待効果:ア 効率的な飼料給与により、飼料費の削減につながる。 イ 健康な肥育法を用いることにより、内臓や枝肉廃棄が減少し、経済的損失が減る。成果:(1)肥育牛での日増体量および飼料効率が良いのは、飼料中の粗蛋白質含量が12.5%のときであり、粗蛋白質のうち、60%はルーメンバイパス蛋白質であることが必要である。科学飼料;38,60,1993(2)黒毛和種の双子を用いた、肥育前期におけるバイパス蛋白質給与肥育試験では、増体、飼料費についてバイパス蛋白質給与区で優れていた。徳島肉畜試研究報告;22,10-14,1994(3)トウモロコシの加工法によってルーメンにおけるデンプン消化率が異なる。これに起因して肥育後期肉牛の分解性蛋白質要求量が変化する。科学飼料;47,98~99,2002 (4)和牛成雌牛を用いて、大麦中窒素成分の出納試験を行った結果、加工法の違いによってルーメンでの消失時間や消化速度が異なることがわかった。橋爪徳三他、畜産試験場報告16;75-89(1968)(5)飼料中の祖蛋白質について、実験室分析により非蛋白質体窒素成分、ルーメン分解蛋白質成分、ルーメン非分解蛋白質成分への分画を行っている。NRC乳牛飼養標準;7,43-101(2001)
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