高脂肪食で発現量が変化する新たな脂質代謝関連遺伝子と肥満病態の関係

タイトル 高脂肪食で発現量が変化する新たな脂質代謝関連遺伝子と肥満病態の関係
担当機関 (独)食品総合研究所
研究期間 2002~2004
研究担当者 井手隆
久城真代
高橋陽子
発行年度 2003
要約 ラット脂肪組織でのジーンチップ解析により、高脂肪食で発現制御を受ける遺伝子のうち 栄養条件による制御の報告のない遺伝子を見出した。正常および肥満モデル動物を用い、 遺伝子発現の組織分布と肥満病態特異的な発現変化を解析することにより、これら遺伝子エネルギー代謝に果たす役割を明らかにできる。
キーワード 脂肪組織、高脂肪食、脂質、代謝、ラット、ジーンチップ
背景・ねらい 食生活の欧米化に伴う脂質の取りすぎが、肥満、糖尿病などの代謝疾患性生活習慣病の発症の大きな要 因と考えられている。本研究では、ジーンチップを用い、生体の脂質代謝制御に重要な役割を持つ脂肪組 織で脂肪過剰摂取により発現量が変動する新たな脂質代謝関連因子を網羅的に探索する。さらに見出した 遺伝子に関し、正常と肥満病態モデル動物での組織別発現量と肥満病態での発現量変化を解析し、生体の 代謝制御に果たす役割解明を目指す。
成果の内容・特徴 1.ラット腎臓周辺白色脂肪組織でのジーンチップ解析により、種々の脂質代謝関連遺伝子の発現が高脂 肪食により変動することを示した。これまで栄養条件による制御の報告のない因子としては、皮膚型 脂肪酸結合タンパク質遺伝子(CFABP)とレチノール結合タンパク質遺伝子(RBP)を見出した。また、 これまで報告されていないステアロイル-CoA 不飽和化酵素遺伝子(SCD)のアイソザイム特異的な変 動を観察した。これら遺伝子の発現は高脂肪食で抑制されるが、睾丸周辺白色脂肪組織と褐色脂肪組 織においても発現抑制を受けることをノーザンブロットにより確認した(図 1)。
2.Zucker ラット(正常 (lean) 及び肥満モデル (fa/fa))を用い CFABP、RBP、SCD1 および SCD2 発現の 組織局在性をノーザンブロットで解析し、いずれの遺伝子も脂肪組織において比較的高いレベルで発 現していることを見出した。
3.統計解析に充分な個体数を用い、CFABP、RBP、SCD1 および SCD2 高発現組織での肥満病態による発現 量変化を定量リアルタイム PCR 法により解析した(図2)。肥満ラットでの CFABP 発現は白色脂肪組 織で増加したことから、CFABP は肥満発現に重要な役割を持つことが示唆された。また、脂肪組織 SCD1肥満病態での発現は大きく増加し、SCD2 でみられる変化と比較してはるかに大きかった。よって SCD1 が SCD2 と比較し、脂肪組織での脂肪沈着に伴う脂質代謝変化により大きな役割を持つことが示 唆された。白色脂肪組織での RBP 発現は肥満ラットで増加あるいは増加傾向を示した。一方、高発現 組織である肝臓での発現量に変化はみられなかった。血清レチノール濃度が肥満ラットで増加する観 察と併せ、白色脂肪組織での RBP 発現変化がレチノール代謝に重要な役割を持つ可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点 ジーンチップ解析により見出された高脂肪食で発現が抑制される遺伝子、CFABP、RBP、SCD1 および SCD2発現の組織局在性を明確とし、またその発現が肥満病態により変化することを示した。得られた知見は、 これら遺伝子が生体のエネルギー代謝やレチノール代謝の制御に重要な役割を果たすことを示す基礎情報 であり、肥満の予測や診断分野にも利用できる可能性がある。
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