タイトル | マイコトキシン分析法の変遷と精度の向上:Proficiency Testingの結果からの解析 |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 2002~2004 |
研究担当者 |
後藤哲久 長嶋等 |
発行年度 | 2003 |
要約 | アフラトキシン、オクラトキシンAの分析法とその真度に関して、WHOとFAPASの4半 世紀のデータを解析した。その結果、分析法の中心が薄層クロマトグラフィーから、 液体クロマトグラフィーに移ると共に、zスコアーで評価した分析の真度も大幅に向 上していることが明らかとなった。また、この間、定量分析法としての酵素抗体法(E LISA)の利用は進んでいなかった。 |
キーワード | アフラトキシン、オクラトキシン A、分析精度、分析法、Proficiency Testing |
背景・ねらい | 穀類等をカビが加害することで生じるマイコトキシンには種々のものが知られており、近年その規 制に対する動きも急速なものがある。この規制を考えた時、実際の分析を行う分析機関の精度管理は、 その規制の信憑性、食飼料の安全性を確保する上で重要なことである。そのため近年は、技能試験等 によりその真度を評価、管理する方向が強まっている。しかしながら実際に用いられる分析法は多様 であり、また変化も著しいものがあり、漠然と真度も向上しているのではと考えられてはいるものの、 精密に検証されたことはなかった。そのため今回は、マイコトキシンの中でも特に高感度な分析が要 求されているアフラトキシン(AF)およびオクラトキシンAについて、その分析法の変化とそれに 伴っての真度の変化を検討し、実際に用いられている分析法がどのように変遷し、その真度はどうな って来たのかを明らかにした。 |
成果の内容・特徴 | 世界保健機構(WHO)、および英国中央科学研究所(CSL)によるProficiency Testing(FAPAS)のデ ータを元に、AFB1、AFM1及びオクラトキシンAの分析法の変化、及びその間の真度の変化を検証した。 とうもろこし中のAFB1については、1978年、1989年のWHO及び2002年のFAPASのデータを、小麦中のオ クラトキシンAについては1988年のWHO、2003年のFAPASのデータを解析に用いた。分析法に関しては 可能な範囲で記載されている参照文献に当たり、検出法を確認した。また分析結果の評価は、データ を比較するために統一し、現在FAPASで用いられている方法で基本となる統計量を求め、その値を元 にzスコアーで評価する方法を用いた。 トウモロコシおよびピーナツ中のAFB1の分析では、1978年には90%程度の機関が薄層クロマトグ ラフィー(TLC)を用いていたが、1989年では約50%、2002年には10%以下となった。この間に液 体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた結果は、5%程度から80%を超えるようになっていた。EL ISAによる分析は1989年、2001年とも10%以下であった。この間に分析が良好に行われていること目安として考えられる|z|≦2のデータの割合はトウモロコシでは50%から80%程度に増加し ていた。 粉乳中のAFM1では、分析の要求感度の問題もあり、HPLCの使用割合がより高く、また真度の向上も より急速(1989年、43%、2002年、74%)であった。また小麦中のオクラトキシンAに関しても、 AFM1とほぼ同様の傾向が見られた。 |
成果の活用面・留意点 | 今回の解析では、各々のデータセットを出した時の参加分析機関についての解析をしていない。こため、データを提出した分析所の性格、変化によるデータへの影響は解析されていない。またあく までも全体として真度が向上していることを示すものであり、個々の分析機関の真度に関しては、個 々の分析機関の管理にゆだねられる。また、分析法に関しても、TLCによる分析の真度が、HPLCによ る分析の真度に対して劣るといったことを示すものでもない。 |
カテゴリ | 小麦 とうもろこし |