タイトル | 各種ゴマリグナンの生理活性と生体内代謝 |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 2000~2005 |
研究担当者 |
井手隆 |
発行年度 | 2005 |
要約 | エピセサミンとセサモリンは肝臓の脂肪酸酸化を増加させたが、セサミンの作用は弱かった。生理作用の強さは各リグナンの体内濃度に依存し、その体内濃度の違いは、腸管吸収及び体内代謝の違いに基づいていた。 |
キーワード | ゴマリグナン、脂肪酸酸化、遺伝子発現、代謝動態 |
背景・ねらい | ゴマに含まれる主要なリグナンはセサミン、セサモリンおよびセサミノールである(図 1)。また、 ゴマ油精製の過程で、セサミンの約半分はエピセサミンに転換し、セサモリンは分解される。いわゆ る“セサミン”の吊前で健康食品として市場に出ているものはセサミンとエピセサミンの混合物であ り、強い生理活性を持つ。しかし、個々のリグナンの生理活性の違いに関する知見はほとんどない。 本研究では種々のリグナンの生理活性と体内代謝動態の違いを比較した。 |
成果の内容・特徴 | 1.ラットにリグナン無添加食および 0.2%のセサミン、エピセサミンあるいはセサモリンを含む飼料 をラットに10日間与えた。エピセサミンとセサモリンは肝臓の脂肪酸酸化系酵素の活性と遺伝子 発現を大きく上昇させたが、セサミンの作用は弱かった(図2)。また、リグナンはビタミン E 節 約作用があるが、肝臓中α-トコフェロール量はセサモリン群で最も高く、ついでエピセサミン群、 セサミン群、リグナン無添加群の順となった。 2.セサミン摂食ラットの血清中セサミン濃度は 11.2 μg/dl、エピセサミン群でのエピセサミン濃度は 49.3 μg/dl、セサモリン群でのセサモリン濃度 132 μg/dl であった。肝臓ではセサミン、エピセサ ミン、セサモリン摂食群でそれぞれのリグナン量は 17.9、43.3 および 79.2 μg/100 g 体重であり、 体内への貯留量はリグナン種により大きく異なっていた。 3.各リグナンを 80 mg/kg 体重の量で単回投与し、経時的な血清濃度変化を追跡し、体内動態を解析 した。各リグナンの血清濃度は投与後7~10 時間をピークとして上昇し、以後低下した(図 3)。 各時間の濃度はセサモリン、エピセサミン、セサミンの順となった。 4.この血清リグナン濃度変化を one-compartment model により、数学的に解析し、種々代謝パラメ ーターを算出した(表 1)。AUC(曲線下面積)はセサモリン、エピセサミン、セサミンの順とな り、体内アベイラビリティの違いは明らかであった。異化パラメーターである MRT(平均滞留時 間)と半減期はセサモリン、エピセサミン、セサミンの順となり、セサミンが最も体内での異化 速度が大きいことが分かった。さらに、吸収率パラメーターである F/Vd値から、吸収率はセサ モリンで最も高く、ついでエピセサミン、セサミンの順であることが示された。セサミン、エピ セサミンおよびセサモリンの実際の吸収率は最大でそれぞれ、10%、20%および 30%と見積もら れた。 5.以上のことから、リグナンの種類により、脂肪酸やビタミン E代謝に与える影響が大きく異な り、これには吸収率と異化速度の違いによるリグナンの体内アベイラビリティの差異が関与して いると考えられた。 |
成果の活用面・留意点 | 本研究により、リグナンの種類によって生理機能や代謝動態が異なることが明らかになった。ゴ マおよびゴマから作られた製品のリグナンの組成がその機能性に大きく影響することが推察され、ゴ マを用いた機能性食品の開発に一つの指針を与えるものである。 |
カテゴリ | 機能性 ごま 機能性食品 |