タイトル | 加水量の異なる米飯の咀嚼量 |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 2002~2005 |
研究担当者 |
神山かおる |
発行年度 | 2005 |
要約 | 加水量1.5~4.0倍の米飯では、加水量の多い軟らかい飯ほど、重量、容量、固形量当たりの咀嚼量が少なく、食べやすいと考えられた。しかしさらに加水量の多い全粥や五分粥は著しく増量し、摂取エネルギー当たりの咀嚼量は減らなかった。 |
キーワード | 米飯、咀嚼、テクスチャー、筋電図 |
背景・ねらい | 米飯は日本人の主食であり、嗜好性が高いだけでなく、パンよりも咀嚼しやすいため、高齢者に向く食品である。 普通のかたさの飯よりも高齢者に嗜好される軟飯や、介護食として多用される粥について、加水量と咀嚼量との関 係を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 無洗米に対し、加水量を重量比で 1.5、2.0、3.0、4.0 倍と変えて飯を調製し、各試料飯の水分量及びテクス チャーを等速直線運動の2バイト測定により調べた。表1のように、加水量が増す程、飯の水分量は多く、 かたさやガム性は減少し、付着性と凝集性は高くなった。 2. 重量(5g)、容量(8cm3)、固形量(2g)すなわちエネルギー量で合わせた試料飯を、スプーンで健常若年女性 10 名に与え、自由に咀嚼・嚥下させた。この際、閉口筋である左右の側頭筋(LT、RT)と咬筋(LM、RM)、 及び開口筋である顎二腹筋(LD、RD)から表面電極を用いて、筋電図を得た(図1)。 3. 加水量の少ない飯ほど、筋電図から見積もった咀嚼回数、咀嚼時間、また機器測定のかたさに対応する閉口 筋活動が大きく、機器測定におけるバランス度に相当する直前の閉口筋活動量に対する開口筋活動の比が低 かった(表2)。一方、咀嚼周期や筋活動時間、開口筋の活動量に有意な試料差は認められなかった。これら筋電位パラメータにおける試料差は、重量>容量>固形量当たりの順に小さくなったものの、いずれも同 じ傾向が観察された。 4. しかしながら、さらに加水量を多くして調製される全粥や五分粥は、著しく増量するため、普通飯一口大と 同一エネルギー量の試料(2g 固形量)を一口で摂取することは困難であった。粥の一口量を2倍に増加させ ても、嚥下までの咀嚼量や咀嚼時間は 1.4 倍程度の増加に留まり、少量ずつ口に入れて咀嚼した方が、全体咀嚼量は増加することが示唆された。1/4 食分のメニューを自由に試食させ、主食のエネルギー量当たりの 咀嚼量を見積もると、普通飯と全粥は有意には変わらなかった。 5. 水分量の多い軟らかい飯は、密度が高いので一口重量を普通飯の 2 倍程度まで多くすることは難しくはなく、 あるエネルギー量当たりの咀嚼時間や閉口筋活動量も減少させた。したがって、普通飯から軟飯の範囲では、 加水量を多くするほど飯は食べやすくなることが示唆された。栄養摂取と咀嚼量の関係から、咀嚼能力の低 い者に米飯を摂らせるには軟飯が向くが、粥はエネルギー充足を難しくするため、必ずしも好ましくないこ とが示唆された。 |
成果の活用面・留意点 | とくになし |
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