タイトル | 肝障害に伴って変動する血中タンパク質 |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 2003~2004 |
研究担当者 |
岩下恵子 長嶋等 |
発行年度 | 2005 |
要約 | マウスでは肝毒性を示す物質の投与によって TIMP-1分泌量が顕著に増加した。TIMP-1 は他のハザードによる肝障害でも分泌量が増加することから、肝障害の有用なバイオマーカーであると考えられる。 |
キーワード | バイオマーカー、TIMP-1、肝障害 |
背景・ねらい | 肝臓は、毒性物質の主な標的臓器である。これまでの多くの研究成果から、肝障害の重篤さや発症 メカニズムによって、血中に分泌されるタンパク質の種類や量が異なることがわかってきている。本 研究では、ハザードの影響を評価することを目的として、血中の多種のタンパク質の量を測定し、肝 障害を反映するタンパク質(バイオマーカー)を探索した。 まず、肝障害に伴って変動する血中の分泌タンパク質を探索するため、ヒト肝癌細胞を用いた実験 や文献・データベースによって、9種の肝毒性物質処理によって量が変動する分泌タンパク質を検索 した。次に候補タンパク質を絞り込むため、強い肝毒性を示す毒性物質と肝毒性をほとんど示さない 毒性物質を動物(マウス)に投与し、種々の分泌タンパク質の量を測定した。多くの種類の肝毒性物 質によって分泌量が変化するものを中心に、12種の分泌タンパク質の量を測定した。 |
成果の内容・特徴 | 1.肝障害に伴って変動する血中の分泌タンパク質を探索した結果、9種の毒性物質(ルブラトキシ ンB、エチルアルコール、アセトアミノフェン、四塩化炭素、リポ多糖、コンカナバリンA、ア フラトキシンB1、サイクロピアゾン酸、シトリニン)によって分泌量が変化する28種の分泌 タンパク質を候補物質としてリストアップした(表1)。ほとんどすべての毒性物質によって分 泌量が変化する TNF-α から、1種の毒性物質での分泌量変化しか知られていない TGF や M-CSF まで、分泌制御機構は多岐にわたると考えられた。 2.分泌タンパク質の量を測定した結果、IL-5, IL-6, IL-10, GM-CSF, MCP-1, TIMP-1の6種の分泌が 確認できた。そのうち、強い肝毒性を示すルブラトキシンBやアセトアミノフェンで分泌量が顕 著に増加し、肝毒性をほとんど示さないソラニンやニバレノールではほとんど増加しないタンパ ク質は、金属プロテアーゼの阻害因子として知られている TIMP-1 (tissue inhibitor of metalloproteinases-1) であった(表2)。TIMP-1はB型及びC型肝炎ウィルス、四塩化炭素、エチ ルアルコールによる肝障害でも分泌量が増加することから、肝障害を反映するバイオマーカーと して有用であると考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | 肝障害で分泌量が変動する分泌タンパク質の多くは、肝障害以外の疾病でも変動することが多い。 現状では、ある試験物質が肝毒性を持つことを示すには、TIMP-1 だけでなくトランスアミナーゼな どの肝機能検査も併用する必要がある。今後肝障害の重篤さや発症メカニズムを反映するシステムを 構築するために、肝障害のバイオマーカーとなる分泌タンパク質の種類を増やすことが必要である。 |
カテゴリ | シカ データベース |