タイトル | NMR及び分子モデリングによるジベレリン模倣ペプチド-抗体間相互作用の解析 |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 2003~2005 |
研究担当者 |
逸見光 山口五十麿(東 京大学大学院農学生命科学研究科 清水謙多郎(東京大学大学院農学生命科学研究科 生物情報工学研究室) 生物制御化学研究室) 村田貴志 中村周吾(東京大学大学院農学生命科学研究科 鈴 木義人(東京大学大学院農学生命科学研究科 |
発行年度 | 2005 |
要約 | NMR及び分子モデリングによると、ジベレリン模倣ペプチド-抗体間の相互作用が、 ジベレリン-抗体間の相互作用と非常に類似している。これは、他の植物ホルモン等の疎水性化合物に対しても模倣ペプチドの作製が可能であることを示している。 |
キーワード | saturation transfer difference (STD)、NMR、分子間相互作用、ジベレリン模倣ペプチド、抗体、分子モデリング |
背景・ねらい | これまで主にワクチンの開発のため、非ペプチド性リガントとして糖質を認識する抗体に対する模 倣ペプチドについての報告がなされている。それ以外にはDNA,ビオチンそしてカビ毒のデオキシ ニバレノールの数種に対する模倣ペプチドが報告されている。しかしながら、疎水性化合物に対して は、これまで我々が知りうる限りその報告例はない。もし、疎水性リガントに対する模倣ペプチドが易に得られるのであれば、それらは植物ホルモン等の各種有機化合物に対して高い結合能を有する 抗体を作製するための有効な抗原として利用出来る可能性がある。最近、共同研究者らにより疎水性 化合物である植物ホルモンのジベレリンを認識する抗体に対して、ジベレリンのミミックとして結合 するペプチドの取得に成功した。しかし、オオムギ湖粉層プロトプラストを用いたα-アミラーゼ誘 導などのアッセイ系においてジベレリンと類似の活性や抑制的効果は認めれらなかった。そこで、N MR及び分子モデリングにより、ジベレリン模倣ペプチドがジベレリンと同様に抗体と結合しているかを検討した。 |
成果の内容・特徴 | 1.2次元NMR法により、溶液中でのジベレリン模倣ペプチドの立体構造を解析した。その結果、Leu3 - Ser6 (L3 - S6)領域でβ-ターン様構造をとることが分かった(図1)。さらに、ジベレリ ン模倣ペプチドに抗ジベレリン抗体を加えたサンプルを用いて、STD-NMR 法によりジベレリン 模倣ペプチドの抗体との相互作用部位の検出を行った。その結果、β-ターン様構造を形成する Leu3 - Trp5 (L3 - W5)領域において強いシグナル強度を示し、Ser6 - Cys10 (S6 - C10)領域においては弱いシグナル強度を示した(図1)。このことから、ジベレリン模倣ペプチド は主に Leu3-Trp5領域で抗体と相互作用することが判明した。 2.今回、2次元 NMR 法により得られたジベレリン模倣ペプチドの立体構造とすでに報告されてい る抗ジベレリン抗体の結晶構造を用いて、分子モデリング法によりジベレリン模倣ペプチド-抗 ジベレリン抗体の複合体モデルを作製した。この複合体モデルにおけるジベレリン模倣ペプチド抗体との相互作用部位は、STD-NMR 法による相互作用部位と一致した。この結果から、ジベ レリン模倣ペプチドは、抗体と主に疎水的な相互作用により結合し、2本の分子間水素結合を形することが推測された(図2赤点線)。 3.今回の結果より、ジベレリン模倣ペプチドと抗体との結合様式が、すでに結晶構造解析により報 告されているジベレリンと抗体との結合様式と非常に類似していることが判明した。このことよ り、他の植物ホルモン等の疎水性リガントに対して高い結合能を持つ抗体を作製するのための有 効な抗原としての模倣ペプチドを作製することが可能である。 |
成果の活用面・留意点 | 今回の結果により、他の植物ホルモン等の疎水性化合物に対しても模倣ペプチドの作製が可能であ ることが判明したが、実際には疎水性の度合いが疎水性化合物に比べ模倣ペプチドでは十分でない場 合が考えられるので検討が必要である。 |
カテゴリ | 大麦 |